織川ゑトウ

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『矛盾色(むじゅんしょく)』

あの子は水色。
あの子は赤。
あの子は黄色かな。

僕には人にぼやっとした色が浮いて見える。
皆色んな“個性”を持っていていいね。

君は無色?
珍しいね。無色だなんて。
色には必ず意味があってね、時と場合によって変わったりもするんだ。

赤色のあの子が視ているのは葛藤かな。怒号が聞こえる。
水色のあの子が視ているのは澄んだ世界。少し涙の味。
黄色のあの子が視ているのは向日葵畑?でも、向日葵は枯れかかっている。

無色の君が視ているのは、何もない世界?
足元には薄く水が張っていて……薄暗い。
あ、反対側を見てみて!
逆にカラフルだね。
これは無色の人にしか視えない世界。きっと感情がごちゃ混ぜになっちゃってるんだ。
なんでもあってなんでもないんだね。

色は個性。でも、無色だからって無個性ってわけではないよ。
無色ってのは最強の色なんだ。
何てったって無色はどんな色にでも染まるけどどんな色にも染まらないもの。
矛盾してる?そう。矛盾している色それが無色。
最強だけど、最弱の色。

よく無個性だって自分のことを卑しめる人がいるよね。
無個性だって立派な個性。
何なら個性の頂点なんじゃない?
だって無個性って一番個性として価値が高いじゃない。

あれ、そう言っている内に君に色がついてきた。
僕が言ったからかな?
発っせられる言葉は色。色って思った以上にそこら辺に転がっている。
そう言っている内にまた一色。どんどんと染まっていく。
 
泣きじゃくる君の瞼に、今日も僕は色をのせる。


お題『無色の世界』

4/18/2023, 1:10:38 PM