『春日起想(しゅんじつきそう)』
今日は大切な人の命日。
あれからもう十年もたったのか。早いもんだ、十年なんて。
今日も君の前に立つ。
君は、お饅頭が好きだったよね。
すごいよね。人の死って。たった一つ「死んだ」という事実だけでどんなことでも、変えられてしまう。
「あの人の代わりに頑張る」
「あの人の為に死ぬ」
「あの人の為に生きる」
感情の原動力になる。
君の為に植えた桜も今年は満開だ。
君は僕を守って死んだ。交通事故、僕はショックで君のことをほとんど忘れてしまった
君がフランス人のハーフだったことは覚えている。君の名前は覚えていない。
フランスに留学して緊張ばっかしていた僕を君は笑って絆してくれた。
春になって、一緒に花見に行ったよね。鼻に桜がついていたのは可愛らしかった。
しばらくして付き合うことになって、大きな桜の木の下で告白した……と思う。
その後、一緒に散歩して……そこからはほぼ覚えていない。
僕が君の名前を呼んでいたはずなんだけど、どんな名前だったかな。
んー日系の名前だったと思うんだけどなぁ。
僕は君に手向ける花を持っていない。なんでだろう。僕も分からない。
あ、お墓の上にてんとう虫がいる。落っこちそうだ。助けてあげよう。
「……!」
そう君のお墓に触れた瞬間僕は全てを思い出した。
君の名前は桜。僕が手向ける花を持っていないのは君がそうしてと言っていたからだ。
フランスでの桜の花言葉は「私を忘れないで」
……皮肉なものだね。桜という名前なのに忘れてしまっていたなんて。
「あっ」
助けたてんとう虫が空を飛び、それを合図に桜がざわめく。陽の光が少し眩しい。
貴方には、大切な人はいますか?その人のこと、今でも思い出せますか?
お題『春爛漫』
※春爛漫=花が咲き乱れてあふれ、美しく輝く春
※フランスの花言葉(桜)=私を忘れないで
※手向ける=旅立つ人に餞別(せんべつ)を送ること
余談なんですが、一回途中で全部消してしまいました。皆さんは途中で消してしまわないように注意しましょう。所々おかしい文になっているかもしれませんが、お許しくださいませ。
4/10/2023, 1:29:39 PM