二人ぼっち
大きな戦争で文明が滅んだ、終末世界。
生き残った人類は、わずかな食料と水を求めて、瓦礫と化した地上を歩き回った。
「誰もいないね」 『二人ぼっちだ』
コンクリートの瓦礫の下から這い出した、子供が二人。
男の子と少し小さい女の子。
周りはコンクリートや鉄筋が飛び出す瓦礫の山。
「世界に僕らしかいないみたい」 『面白いね』
アスファルトが割れた地面を歩き、
瓦礫の山を飛び越えて、二人は進み始めた。
「どこに行こうか?」 『二人で生きていける所』
途中でガラクタを拾い、キレイめのペットボトルを探し
名も知らない花を摘んで、歌を歌う。
行く先には未だ、二人以外の人間が見えない。
二人ぼっちの世界に、笑い声がこだました。
夢が醒める前に
とあるカフェのテーブル席で、友に会った。
自殺してしまった友が目の前にいる。
だからこれは、夢なのだと思った。
カフェの店内は見覚えがある。
学校帰りに寄り道して、いつも入ったお決まりの席。
あの日も一緒に行くはずだった。
用事があると、先に帰ってしまって、友は学校でー
何かに悩んでいる風に見えなかった。
言葉の端から気づいてやれば良かった。
あの日も用事なんか放り出して、一緒にいれば・・・
「あのさ、もうそんなに苦しまなくていいよ」
今まで何も言わなかった友が口を開く。
「こっちは自分の勝手で自殺をしたんだ。君のせいじゃないし、君が責任を負わなくていい。それでもこんな風に悩んでくれてるのが嬉しくて、特別に夢に出てきたんだ。・・・ありがとう、ごめんね」
「・・・ううん。こっちこそ、夢に出てきてくれてありがとう」
ー夢が醒めたら帰らなくちゃいけないんだ。
ーそうなの?じゃ、夢が醒める前にたくさん話をしよう。まだまだ夜は長いから・・・
不条理
いじめられた側が、学校に来なくなって
いじめた側が、そのまま学校に通う。
嫌な思いをした子は、学校に行けなくなる。
これは不条理なことではないのか?
アメリカでは、いじめた側が精神的に問題があるとして病院に行かせ、学校に行かせないようにするという。
いじめられた子が悪い訳じゃない。
精神が弱い訳じゃない。
日本でも、この不条理がいつか変わりますようにー
安らかな瞳
ぬるり、と生温かい赤い液体が手をつたう。
短剣を持つ手が、すべりそうになる。
白い服の胸元を朱に染めて、彼女は薄らと微笑んだ。
短剣が刺さったままの姿で、身体が冷たくなっていく。
開ききった瞳孔の瞳は、俗に言う安らかな瞳でー・・
僕は血で汚れた手を軽く拭って、その瞼を閉じさせた。
ずっと隣で
大きな木の隣に家がありました。
そこには小さな男の子と、その両親が住んでいました。
その木は男の子の成長をずっと隣で見守ってきました。
やんちゃな男の子は、その木に登って落ちるなど、
とにかく落ち着きがなく、木は心配もしていました。
何回も季節が巡り、男の子は立派な青年になりました。
かわいいお嫁さんをもらって、一緒に暮らすようになりました。
あのやんちゃな男の子が、こんなに立派な青年になったので、木もほっとしました。
それから、二人の間に子供が生まれました。
父親に似たのか、落ち着きがなく木も見守ることにしました。
今もその家の隣で木は子供を見守っています。
きっと、ずっと隣にあることでしょう。