少年は雨宿りしていた。
ここは田舎のバス停だから
1時間に1本しかバスが来ない。
曇天の空を眺めていると、
いつの間にか隣に少女が座っていた。
艶やかな黒髪と白いセーラー服を着た
きれいな少女だった。
「雨、やみそうにないですね」
「そうですね」
「あの日も」
「はい?」
「あの日もこんな風に雨が降っていました。
ここでバスを待っていると、知らない
おじさんが近付いてきて…あの時はほんとうに
怖かったなあ、痛かったなあ」
いつの間にか少女は水に浸かったようにびしょ濡れ
の姿になり、彼女の足元には水溜まりができていた
彼女と話していると、バスが到着していた。
乗客も運転手もみんな青白い顔で俯いている。
「それじゃあ私、いきますね」
「はい…気をつけて」
彼女が乗ったのを見送ってからすぐに
次のバスがやってきた。
少年は先程まで少女が座っていた場所を見つめた。
そこはシミができたみたいにぐっしょり濡れていた。
お題「ところにより雨」
とある密室にて
白骨化した二つの遺体と一枚のメモが残されていた
だいすきだよ
れんあいじゃなくてもいい
かならずしもね
ただそばにいてほしいだけ
すきなあいてとなら
けっしてはなれない
てつなごうよ
お題「二人ぼっち」
「おはよう」
隣の席のSが笑顔で話しかけてくる
咄嗟に返そうと思ったけど声が出なくて
そのまま俯いてしまった
物心ついた頃から自分はおかしなやつだと気付いた
自分では普通だと思っていたけど、周りの人たちは
「あの子はおかしい」「病気」だと話していた
母はそんな自分を心配して病院に連れて行って
くれたりしたが何も変わらなかった
ある時から持ち物がなくなっていたり
丸めた紙をぶつけられたりと
小さな嫌がらせをされるようになった
多分こんな自分に周囲の人達が腹を立てたのだろう
仲間に囲まれながらこちらを見て笑うS
自分もあんな風に笑えたらな
「さあ、今日も始めるか!」
放課後にN先生と二人で挨拶の練習をする
クラスでの自己紹介の時に、何も話せなかった自分を見た先生は、こうしてよく話かけてくるようになった
「まずは挨拶からだな。挨拶は人間関係の基本だ!」
普通の人間のように接してくれるN先生との時間は
とても心地よかった
Mができるようになるまで練習に付き合う、そう言ってくれた先生はある日を境に学校へ来なくなった
下駄箱から消えた靴を探しているとSに出会った
初めて挨拶してくれた時と変わらぬ笑顔でこちらへ近付いてくるSを見て、何故だか逃げ出したくなった
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「泣けよ」
馬乗りになったSに見下ろされる
「どうして泣かないの?」
こんな事されてるのに
泣かないんじゃくて泣けないんだ
そんなことを考えながらぼんやりと天井を眺めていた
お題「泣かないよ」
それは些細な違和感だった。
帰り道誰かに後をつけられている気配がしたり、
部屋の雑貨の位置が少しずれていたり、
知らない相手からの郵便物が届いたりした。
もしかしてストーカー?
私は友人のユウちゃんに相談した。
「やっぱり警察に相談した方がいいかな」
「んー、警察って何かあってからじゃないと動いてくれない事が多いから、あんまりあてにならないかも」
ユウちゃんはそう話してたけど、
念の為に警察へ行ってみることにした。
だけど言われた通り、警察は頼りにならなかった。
この一帯のパトロールを強化するという報告と
戸締りや防犯ブザーを持ち歩くなど自衛を
しっかり行うよう注意される。それだけだった。
深夜
レポートを作っていると突然インターフォンが鳴った
こんな時間に?誰?
固まって動けずにいると、
何度も何度もインターフォンを押された。
次第にそれはエスカレートしていき、
扉をドンドンと叩いたりドアノブを
ガチャガチャと壊れるほど回された。
怖くなった私はユウちゃんに電話した。
『どうしたの?』
『外に誰かいるの。ユウちゃん助けて』
『わかった。すぐ行く』
夜更けにも関わらずユウちゃんはすぐに来てくれた。
その姿を見た私はユウちゃんに抱きついた。
震えが収まるまでユウちゃんは私の背中を
ずっとさすり続けてくれた。
「ありがとう。ユウちゃんがいてくれてよかった」
「かわいい」
「え」
「友達が困ってたら助けるなんて当たり前だよ。
いつでも頼っていいからね」
そう言って私の頭を撫でながら優しく微笑む
ユウちゃんを見てまた泣きそうになった。
そうだね、ユウちゃんがいてくれたらきっと大丈夫
私はそのままユウちゃんに身を委ねた。
お題「怖がり」