おへやぐらし

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3/24/2024, 1:56:58 PM

少年は雨宿りしていた。
ここは田舎のバス停だから
1時間に1本しかバスが来ない。

曇天の空を眺めていると、
いつの間にか隣に少女が座っていた。
艶やかな黒髪と白いセーラー服を着た
きれいな少女だった。

「雨、やみそうにないですね」
「そうですね」
「あの日も」
「はい?」
「あの日もこんな風に雨が降っていました。
ここでバスを待っていると、知らない
おじさんが近付いてきて…あの時はほんとうに
怖かったなあ、痛かったなあ」

いつの間にか少女は水に浸かったようにびしょ濡れ
の姿になり、彼女の足元には水溜まりができていた

彼女と話していると、バスが到着していた。
乗客も運転手もみんな青白い顔で俯いている。

「それじゃあ私、いきますね」
「はい…気をつけて」

彼女が乗ったのを見送ってからすぐに
次のバスがやってきた。

少年は先程まで少女が座っていた場所を見つめた。
そこはシミができたみたいにぐっしょり濡れていた。

お題「ところにより雨」

3/24/2024, 4:46:34 AM

3/21/2024, 2:30:31 PM

とある密室にて
白骨化した二つの遺体と一枚のメモが残されていた

だいすきだよ
れんあいじゃなくてもいい
かならずしもね
ただそばにいてほしいだけ
すきなあいてとなら
けっしてはなれない
てつなごうよ

お題「二人ぼっち」

3/18/2024, 3:56:27 AM

「おはよう」
隣の席のSが笑顔で話しかけてくる
咄嗟に返そうと思ったけど声が出なくて
そのまま俯いてしまった

物心ついた頃から自分はおかしなやつだと気付いた
自分では普通だと思っていたけど、周りの人たちは
「あの子はおかしい」「病気」だと話していた
母はそんな自分を心配して病院に連れて行って
くれたりしたが何も変わらなかった

ある時から持ち物がなくなっていたり
丸めた紙をぶつけられたりと
小さな嫌がらせをされるようになった
多分こんな自分に周囲の人達が腹を立てたのだろう

仲間に囲まれながらこちらを見て笑うS
自分もあんな風に笑えたらな

「さあ、今日も始めるか!」
放課後にN先生と二人で挨拶の練習をする
クラスでの自己紹介の時に、何も話せなかった自分を見た先生は、こうしてよく話かけてくるようになった
「まずは挨拶からだな。挨拶は人間関係の基本だ!」
普通の人間のように接してくれるN先生との時間は
とても心地よかった

Mができるようになるまで練習に付き合う、そう言ってくれた先生はある日を境に学校へ来なくなった

下駄箱から消えた靴を探しているとSに出会った
初めて挨拶してくれた時と変わらぬ笑顔でこちらへ近付いてくるSを見て、何故だか逃げ出したくなった

┈┈┈┈┈┈┈┈
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「泣けよ」
馬乗りになったSに見下ろされる
「どうして泣かないの?」
こんな事されてるのに

泣かないんじゃくて泣けないんだ
そんなことを考えながらぼんやりと天井を眺めていた

お題「泣かないよ」

3/16/2024, 1:29:13 PM

それは些細な違和感だった。
帰り道誰かに後をつけられている気配がしたり、
部屋の雑貨の位置が少しずれていたり、
知らない相手からの郵便物が届いたりした。
もしかしてストーカー?

私は友人のユウちゃんに相談した。
「やっぱり警察に相談した方がいいかな」
「んー、警察って何かあってからじゃないと動いてくれない事が多いから、あんまりあてにならないかも」

ユウちゃんはそう話してたけど、
念の為に警察へ行ってみることにした。
だけど言われた通り、警察は頼りにならなかった。
この一帯のパトロールを強化するという報告と
戸締りや防犯ブザーを持ち歩くなど自衛を
しっかり行うよう注意される。それだけだった。

深夜
レポートを作っていると突然インターフォンが鳴った
こんな時間に?誰?
固まって動けずにいると、
何度も何度もインターフォンを押された。
次第にそれはエスカレートしていき、
扉をドンドンと叩いたりドアノブを
ガチャガチャと壊れるほど回された。

怖くなった私はユウちゃんに電話した。
『どうしたの?』
『外に誰かいるの。ユウちゃん助けて』
『わかった。すぐ行く』

夜更けにも関わらずユウちゃんはすぐに来てくれた。
その姿を見た私はユウちゃんに抱きついた。
震えが収まるまでユウちゃんは私の背中を
ずっとさすり続けてくれた。
「ありがとう。ユウちゃんがいてくれてよかった」
「かわいい」
「え」
「友達が困ってたら助けるなんて当たり前だよ。
いつでも頼っていいからね」
そう言って私の頭を撫でながら優しく微笑む
ユウちゃんを見てまた泣きそうになった。
そうだね、ユウちゃんがいてくれたらきっと大丈夫
私はそのままユウちゃんに身を委ねた。

お題「怖がり」

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