少年は雨宿りしていた。
ここは田舎のバス停だから
1時間に1本しかバスが来ない。
曇天の空を眺めていると、
いつの間にか隣に少女が座っていた。
艶やかな黒髪と白いセーラー服を着た
きれいな少女だった。
「雨、やみそうにないですね」
「そうですね」
「あの日も」
「はい?」
「あの日もこんな風に雨が降っていました。
ここでバスを待っていると、知らない
おじさんが近付いてきて…あの時はほんとうに
怖かったなあ、痛かったなあ」
いつの間にか少女は水に浸かったようにびしょ濡れ
の姿になり、彼女の足元には水溜まりができていた
彼女と話していると、バスが到着していた。
乗客も運転手もみんな青白い顔で俯いている。
「それじゃあ私、いきますね」
「はい…気をつけて」
彼女が乗ったのを見送ってからすぐに
次のバスがやってきた。
少年は先程まで少女が座っていた場所を見つめた。
そこはシミができたみたいにぐっしょり濡れていた。
お題「ところにより雨」
3/24/2024, 1:56:58 PM