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10/19/2025, 12:35:26 PM

君が紡ぐ歌



 なんでもないけどカラオケに来た。
 嘘、本当はもう卒業だからって言う理由でみんなとカラオケに行くことにした。
 そんななか僕は熱心に歌う彼女をじっと見つめていた。皆が画面を見つめるように、歌ってる彼女は当然画面に見入っていた。彼女の黒目が文字を追っては僕から見て右の方へ戻って来る。美しい高音と握り込まれた手から伝わる感情。熱心な目に感動する。

 もうじきなくなる縁が手の甲をくすぐって、筆を取りたくなった。君が紡ぐその先は

10/18/2025, 10:08:45 AM

光と霧の狭間で




 水は無色透明。だから、水の色は光の色だってあなたは言った。確かに海の色は太陽の光によく染まる。そう思って私は頷いた。そうだねって。
 霧も、水なんだってあなたは言った。じゃあ霧は白いから光の色も白いんだねって言ったら、あなたは霧は透明だって言ったの。じゃあ白いのは何?って私は聞いて、あなたは光の色だって答える。何が言いたいのかそのときにはどっちもわかっていなかったんじゃないだろうか。とにかく私は頷いて、あなたは儚く笑っていた。
 光と霧の狭間で蠢く白色は、いったい何と言うのだろうか。
 

10/17/2025, 10:19:26 AM

砂時計の音


 ハンバーガー屋さんのおまけで砂時計をもらったことがある。キャラクターの凸凹がデザインされた砂時計で、測れるのは二分何十秒とかいうすごい中途半端な時間だって分かったのは、弟がキッチンタイマーで時間を測ってみてからだった。その頃は100円ショップにも砂時計やそれに似た何かがたくさんあったから砂時計が流行っていたのかもしれない。
 砂時計はよくよく耳を澄ますとスーという音がなっていた。砂がサラサラと落ちる音だと思う。ソレを聞いているとなんだかスッキリするような気がした。
 今、最近になって姪っ子が例の砂時計を使っていた。その時間内に筆算を終わらせるんだって言っていた。その時すっと近くで耳を澄ませてみたけど、砂時計の音はしなくて、もしかしたらあのスーという音は勝手に作り出した記憶なのではと思った。それか、大きくなってしまった今にはもう聞こえないのかもしれない。
 なんて、ファンタジーなことを考えてみるけど、ただの老化かもしれない。うん。すごく変な気持ちだ。きっと姉や姪っ子に聞いてみれば何か分かるんだろうけども、砂時計の音を耳の中に残しておきたくて、僕は何も言わなかった。
 姪っ子が鉛筆を滑らす音に紛れて、砂時計の音が聞こえた気がした。

10/16/2025, 1:34:41 PM

消えた星図




 なくなってしまうことは字面の上ではかなりロマンチックなような気がする。しかし、現実ではただの状態に過ぎないのだ。そんな話をしよう。
 星図……いや、そんな少し気取った言い方はやめよう。星座早見盤のことを覚えているだろうか。小学校のときに理科で使ったあれである。日付や時間が書いてあって、その時の空の星の配置が分かるのだ。1等星、2等星、3等星と明るさも書いてあった。意味もなく1等星の星に丸をつけたのを、今でも覚えている。しかし、その当時の理科において一番の話題は夏の大三角のことであろう。ベガ、デネブアルタイルの3つの星のことである。その夏の大三角とやらが、秋頃に空のてっぺんに来るのだと先生が言っていたことを思い出して、ベランダに出て空を見上げた。町中と言えども、十分にいくつかの星が見えた。そこまでは良かったのだ。しかし、どれが大三角なのか全く分からない。それらしいものを見つけても、三角形なんて簡単に描けるものなので確証がない。そこで、まだ星座早見盤が残ってやしないかと思って勉強机を漁ってみたがなく、本棚や作品バッグの中や、おもちゃ箱の中にも勿論なかった。 
 そうなればその際、スマホで調べてしまえばよかったのだ。早見盤よりも便利なアプリなどいくらでもあるだろう。しかし、私はそれをしなかった。結局、目をつけた3つの星が夏のものだったのかは分からずじまいだった。もはやそれがどの星だったかも、分からない。あの日の空をもう一度見たとて、私は同じ星を選ぶだろうか。
 息子の星座早見盤を手に取り、空を見上げる。夏の大三角は未だ真上にいない。

 関係ないことだが、私の星座早見盤は最近になって見つかった。物置にまでいっていたらしい。

10/15/2025, 11:31:29 AM

愛−恋=?




 理系が考えたにしては巫山戯た等式でしょう?

 と、君は笑った。差し出されたルーズリーフに書かれた言葉のままの文字式。頬杖をついた仕草がやけにあざとかった。

『愛−恋=?』

 そう、愛の中に恋があるともわからないのにね。解けないから一生このまんまの形だね。もしもこの恋が終わったらさ、何が残るのかな?

 ずっと君は笑っていた。可笑しいのか、寂しいのか分からないような笑顔だった。

『やっぱり、お前、文系だよ』

 彼女がわざわざ理系に行ったのは、

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