秋風
自転車を漕ぎながらツンとくる風に鼻から頭痛が走る。感想を感じて急に夏が恋しくなった。最近までは涼しくなったと喜んでいたのに、ここまで来ると寒い。マスクつけようかなと、思って、昔はこんなにマスクって身近じゃなかったのになって少し懐かしくなる。あのパンデミックは終わった。でも、確かに通り過ぎただけなのだと分からされる。
あーにしても冷たい。これ、本当に秋風?
予感
きっとそれは予感なんてものではないのです。
トンボが低く飛んだら雨が降るみたいななんとなくの決まりで、ちゃんと理由があるものだった。
ねぇ、今予感なんて言ったって君は信じないかもしれない。けど、何言ったってそうでしょ? いや、君なら意外と予感って言われたら納得してしまいそうです。心外だなぁ。
とにかく、今、何してるんですか? ねぇ、もう少し待ってくださいよ。今からそっちに行きます。
え? なんで居場所が分かるのか?
やだなぁ、僕は意外と君のことを知っているんですよ?
結局は予感ですけど、たどり着けたら君は……
friends
友だちって言葉は別にいいんだけどフレンドっていうものにあんまりいい思い出はない。あるスマホゲームの話なのだがクラスメイトが突然フレンド申請を送ってきた。話したこともあまりないやつだったから、そわそわとしつつも申請を受け入れた。急にどうしたんだろうと思って後日学校で尋ねてみると、石が欲しくてフレンド申請を送っていたらしい。少しだけがっかりとして、まぁ、あるあるだとは思うんだけど、それ以来フレンドの文字を見るとちょっと気後れしてしまう。
だから面と向かってお前に言われた時にね、少し面白かったんだわ。ごめんな、ちょっと笑いすぎちゃって。
君が紡ぐ歌
なんでもないけどカラオケに来た。
嘘、本当はもう卒業だからって言う理由でみんなとカラオケに行くことにした。
そんななか僕は熱心に歌う彼女をじっと見つめていた。皆が画面を見つめるように、歌ってる彼女は当然画面に見入っていた。彼女の黒目が文字を追っては僕から見て右の方へ戻って来る。美しい高音と握り込まれた手から伝わる感情。熱心な目に感動する。
もうじきなくなる縁が手の甲をくすぐって、筆を取りたくなった。君が紡ぐその先は
光と霧の狭間で
水は無色透明。だから、水の色は光の色だってあなたは言った。確かに海の色は太陽の光によく染まる。そう思って私は頷いた。そうだねって。
霧も、水なんだってあなたは言った。じゃあ霧は白いから光の色も白いんだねって言ったら、あなたは霧は透明だって言ったの。じゃあ白いのは何?って私は聞いて、あなたは光の色だって答える。何が言いたいのかそのときにはどっちもわかっていなかったんじゃないだろうか。とにかく私は頷いて、あなたは儚く笑っていた。
光と霧の狭間で蠢く白色は、いったい何と言うのだろうか。