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砂時計の音


 ハンバーガー屋さんのおまけで砂時計をもらったことがある。キャラクターの凸凹がデザインされた砂時計で、測れるのは二分何十秒とかいうすごい中途半端な時間だって分かったのは、弟がキッチンタイマーで時間を測ってみてからだった。その頃は100円ショップにも砂時計やそれに似た何かがたくさんあったから砂時計が流行っていたのかもしれない。
 砂時計はよくよく耳を澄ますとスーという音がなっていた。砂がサラサラと落ちる音だと思う。ソレを聞いているとなんだかスッキリするような気がした。
 今、最近になって姪っ子が例の砂時計を使っていた。その時間内に筆算を終わらせるんだって言っていた。その時すっと近くで耳を澄ませてみたけど、砂時計の音はしなくて、もしかしたらあのスーという音は勝手に作り出した記憶なのではと思った。それか、大きくなってしまった今にはもう聞こえないのかもしれない。
 なんて、ファンタジーなことを考えてみるけど、ただの老化かもしれない。うん。すごく変な気持ちだ。きっと姉や姪っ子に聞いてみれば何か分かるんだろうけども、砂時計の音を耳の中に残しておきたくて、僕は何も言わなかった。
 姪っ子が鉛筆を滑らす音に紛れて、砂時計の音が聞こえた気がした。

10/17/2025, 10:19:26 AM