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8/19/2022, 3:42:24 AM

『コノ世カラ去リ』



 花びらが揺れ落ちるのが見えた。

 少し、変だ。
 言葉では表せないけれど、見れば一目でわかる。

 やがて花びらは着地する。
 すると地面が波打つようにうごめいた。

 まるで生き物のように。

 なぜか地面から太陽が見えた。
 その不思議な光源はゆらゆらと朧気に揺れている。


 地面じゃなかった。
 土だと思っていたものは、地面ではなかった。
 むしろ対極と言ってもいい。

 水面だった。


 あれ?じゃあ今私が立っている場所は……?
 下を見ると、私が見えた。

 まるで水鏡のように、私がゆれていた。

7/21/2022, 6:07:27 AM

『重み』



 君の制服の袖をつかむ
 君が振り向くと同時に、君の名前を呼ぶ
 そうすれば君は、驚いて名前を呼んでくれるだろう

 でも…。

 私には、そんな勇気ない
 君の背中を追いかけるだけで精一杯で、喉はカラッカラに乾いている

 ほんのちょっと
 あとほんのちょっとの勇気があれば、この想いは届いたのかな


 まだ諦めたくない。
 残された時間は少ないけれど、いつか上手くいく

 君が私の名前を呼んでくれるまで、私は何度でも手をのばすよ。

7/20/2022, 8:06:32 AM

 セミの音が、ぼくの意識を現実に戻した。

 首筋にはじんわりと汗をかいていて、それでいままでなにをしていたか思い出した。

 恋い焦がれていた。
 ずっと前から、きみを欲していた。

 これを青春って言うのかなぁ。


 視線の先には、きみの自転車がある。
 きみの、面影がある。

 ぼくは思わず手をのばしてしまった。
 しかし、触れる勇気はなくて、手は宙をかいただけだった。

 それを感じたぼくの意識はまた、暗い思考へと落ちていった。
それと同時に、セミの声も聞こえなくなっていった。

7/11/2022, 10:54:19 AM

 あいさつなんてしたことない。
 LINEはいつもぼくから始める。
 目が合うことは結構あるけど、知ってる顔がいたらそりゃそっちを見るだろう。

 それがぼくらの"普通"のはずだった。


 話したこともほとんどない。
 きみの返信はあっさりとしていて。
 声をかけようと思ったことは何度もあったけど…
 結局、かけなかった。
 …結局、今日も逃げた。

 もっと見てほしいと思ったのはいつからだろう。


 こんなこと、思っちゃダメだとこらえても、心はどこまでも正直らしい。

 ぼくは今日も、きみからの一件のLINEを待っている。

7/8/2022, 10:40:40 PM

『夜景』



 夜景って、綺麗だよね。
 知ってる?
 夜景ってのは、残業をしている人たちがいるから見えるんだよ。


 美人なひと、かっこいいひと、モテるひと。そんなのはいっぱいいる。
 何故だと思う?

 努力をしてるからだよ。
 人よりもいろんなところで苦しんで、
 人よりもたくさんのことで悩んで…。

 つらいことだってたくさんあったんだ。

 でもそれを乗り越えたから、いま、"憧れるひと"になれたんだよ。


 街の明かりは、そんな努力はいらない。
 会社とは違うんだもん。
 ズルいよね、ぜんぶ家の明かりだよ。


 これで共感できちゃったら、"憧れるひと"にはまだまだ遠いかもね。

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