セミの音が、ぼくの意識を現実に戻した。
首筋にはじんわりと汗をかいていて、それでいままでなにをしていたか思い出した。
恋い焦がれていた。
ずっと前から、きみを欲していた。
これを青春って言うのかなぁ。
視線の先には、きみの自転車がある。
きみの、面影がある。
ぼくは思わず手をのばしてしまった。
しかし、触れる勇気はなくて、手は宙をかいただけだった。
それを感じたぼくの意識はまた、暗い思考へと落ちていった。
それと同時に、セミの声も聞こえなくなっていった。
7/20/2022, 8:06:32 AM