願い事なんて、1つに決まっている。
実際は短冊なんかに書かないけれど、これ以外思いつかない。
それくらい、ぼくは本気だ。
ねぇ、気づいてよ
わからない?ぼくがきみをこんなにも……
知ってるよ。
待つだけじゃダメだってことくらい。
自分から、動かなきゃ
そう思っても、勇気が出ないんだ。タイミングも合わないから、全然思うようにいかない。
いや、ちがう。
そんなの言い訳だ。
全部全部、傷つかないための逃げ道だ。
願い事は1つだと思ってたけど、もう1つ、思い浮かんだよ
"自分に自信が持てますように"
『散歩』
僕の部屋の窓からは月が見えない。
家の前の街灯さんが眩しくて、ぜんぶかき消されてしまう。
だから僕が夜空を拝めるのは、面倒な塾や部活動が終わったあとだ。
だからといって、特別美しいものでもない。
だって、毎日通る道端に咲いてるありきたりな花を見て、感動できる?
だからべつに、部屋から空が見えなくたって、なんも不満はない。
ただ。
この日は…。
少しちがった。
いつものごとく、何気なく窓から闇をのぞいていたらふと、彼女のことが頭によぎった。
それからだ。無性に星が見たくなって、家を飛び出したのは。
パジャマのまま、マスクもつけずに。
人の影なんてなく、住宅街なものだから街灯もない。
頭上の星明かりと月明かりは、ほとんど地上まで届いていない。
いつもだったら怖いと思っていた夜の家々も、不思議と怖くない。
満天の星空の下、僕は夜の散歩を始めた。
明日は雨らしい、それも豪雨
もしかしたら登校時間が遅くなるかもって
いつもより少しだけゆっくり眠れるけど、いつもより少しだけきみに会いづらくなる。
それならぼくはいつも通りがいいな
いや、わからない
いつも通りでも、きみに会える確証なんてない。
明日は部活もなくなるかもだからなおさらだ。
でも…。
それでも。
こたえは神様だけが知っている。のかもしれない。
そう思ったら、少し体が軽くなった気がした。
明日は雨らしい、だけどそんなに強くは降らないらしいよ
『四季折々』
春はやわらかいからこそねむくなる。
夏はまぶしい上突き抜けるように熱い。
秋はちょうどいいけどなんだか寂しそう。
冬はあったかいけどぶっきらぼう。
結局、全部いいけど全部やだ。
『花』
何も見えない。
どれだけ目を凝らしても、
どれだけ顔を近づけても、
決して見えなかった。
あの日、僕らは諦めたんだ。
今までずっと、それが正しいと思ってた。
それしか道はなかったんだとうなずいてきた。
ようやく、気づいたんだ。
僕らは大変なあやまちを犯してしまったんだと…。
あじさいが揺れているのを見てたら、自然と笑顔になってくる。
今、窓越しに見えるのは、前みたいな闇じゃない。
すべてに確信を持てるわけじゃないけれど。
一歩一歩進んでいこう。
そしたらきっと、そこにあるであろう花も見えるはずだから。
今はまだ、何も見えないだけだ。