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11/18/2022, 8:10:43 AM

冬になったら

冬になったら、何をしよう?

重ね着が楽しめるから、おしゃれをたくさんしよう。

温かい飲み物や食べ物がきっと美味しいだろうな。
鍋パーティーなんか楽しそう!

雪が降ったら、積もった雪の上を意味もなく歩きたい。

イルミネーションを見に行って、澄んだ空気の冬の夜空を眺める。

クリスマスにはケーキを食べて、ちょっと贅沢な料理をみんなで食べるの。

たくさんある楽しみを大好きなアナタと一緒に過ごせたら…
きっと、冬の寒さも忘れちゃうくらい温かくてハッピーな季節になるに違いない!!

よぉし!今年は勇気を出して、デートに誘っちゃおうー!!

11/16/2022, 9:44:14 AM

子猫

もちまる。

キミが我が家に来てから、もう2年近く経つね。

始めて会ったときは、手のひらに収まるくらい小さな身体で
一生懸命に生きている姿がとても可愛らしくて。

ひと目でキミの虜になってしまったよ。

ぐんぐん大きくなって、今ではおもちみたいにもふもふ。

いつまでも可愛いんだねぇ。

子猫のときからずっと思っているんだ。

ねぇ、キミはしあわせかい?

キミが家で過ごす時間、生きている今が、

しあわせだったらいいなぁ。

11/15/2022, 10:39:59 AM

秋風

地下歩道を抜けると、地上に生えてる木々が視界に入った。
地下の下がった場所から見上げる地上の景色。
私はこの瞬間が好きだった。

通ってきたトンネルの向こう振り返ると、アスファルトの斜面に秋の日差しが降り注いでいた。

同じ町なのに、この数メートルの距離で、景色はがらりと変わる。不思議だ。まるで別世界にきたかのように。

階段には黄色や茶色の秋の色をした落ち葉が、コンクリートを覆う絨毯のように一段一段に敷き詰められていた。
この上にある桜の木の葉だろう。無機質で冷たいコンクリートに温かみを感じる。
春は散った花びらで桃源郷に続く階段になっていた。
歩くたびにカサカサと鳴る葉の音を感じながら、私は一歩一歩登ってゆく。

地上に出ると街の一角にある桜の並木通りに出る。
春。
満開な花を咲かせていた桜は、季節が移り変わってゆくごとにその表情も変えた。
毎日通るこの道は、私に季節を感じさせてくれる。

脇の木を見上げると、すっかり秋の色に染まっていた。
不意に風が吹いて葉を揺らす。
そうしているうちに第二陣の風が吹く。

『…っ』

目の前が一瞬にして黄金色に輝いた。
時間が止まってしまったかのような刹那的な景色。
世界はその瞬間、金色の光に包まれたのだ。
あれは全てを救ってくれる神々しい光だ。目頭が熱くなる。
空中に舞った木の葉の大群に思わず息をするのも忘れてしまった。
こんな平凡な日常に、目を奪われる瞬間があるんだということに心が揺さぶられる。

『プップーッ』

どこからか聞こえたクラクションにハッとして意識をとり戻す。
目の前に広がるのは、いつも通りの日常。
私が見た景色が幻だったのかと思うほどに、この目に馴染んでいた。

『あれ?』

頬に冷たさを感じる。
もう。これから予定があるのに、メイクが崩れてちゃうや。

ひとりでこんなとこ突っ立ってたら変な人だな、なんて。
そんなのもどうでもいいくらい、私は溢れるままに涙を流した。

秋風が頬を撫でる。
涙はすっかり乾いた。
さっぱりとした気持ちだ。


ーーー後日。
しばらく家での療養を課された私が、あの並木道を通ったときには、木の葉はすっかり落ちてしまっていた。

紅葉のシーズンも終わりか。
そういえば、最近、気温も低くなってきた。
今年は新しいコートを買ったから、着るのが楽しみだ。

どこからか風が吹く。

『あっ』

残っていた最後の一枚の葉を攫って宙に舞った。

秋風が冬へ誘ってゆく。

11/14/2022, 10:58:31 AM

また会いましょう


『よっす』

古びれたとある街の神社。
本殿前の階段で座っていた少年は、片手をあげてやってきた少女に目を向けた。

「…こんにちは」

少年と少女。
互いに名前も知らない。
午後の日が落ちるまでの数刻、この神社で言葉を交わすだけの 不思議な関係はもう随分と続いていた。


『なによ、そんなに嫌そうな顔して。相っ変わらず可愛げないわねー』

つかつかと近寄って少年の顔を覗き込む。

「べつに。お姉さんっていつも暇なんだなーって思っただけです」

『暇なのはあんたも一緒でしょーが。つか、また勉強?』

ランドセルを抱えた少年の手元にはノートとテキストが広げられていた。

「宿題」

『どれどれ、あたしが見てあげよっか?』

ノートを覗き込んでいた少女の表情が次第に曇ってゆく。

『…最近の小学生って難しいことしてんのね』

「英語はもう必須科目ですからね。授業ではこんなにやってないけど」

僕、英語好きだから。と言いながらすらすらと英文を綴っていく。

『へぇー、あたしも前は英語好きでやってたな』

懐かしい、と呟く少女の声音が寂しげに空気へ溶けた。

「懐かしいって…お姉さんは現役でしょう?」

『まあそうだけど!あたしはもう現役から離れちゃったからさぁ』

少年の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
目の前で伸びをする少女は、少年も知る高校の制服を着ている。
制服姿がコスプレではないのなら、少女は勉学真っ只中の学生だろうに。

「…どういうことですかそれ?」

『大人はいろいろあんのよー。お子ちゃまには分かんないだろうけど』

その会話を最後に、少女は数段下で大人しく小説を読み始めたので少年は疑問を飲み込んだまま英文に戻った。


『さってっと。帰ろうかね』

少女は立ち上がって伸びをしながら言った。
ぴょんと階段から降りて少年を振り返る。

『君はまだいるの?暗くなる前に帰んなよー』

ケラケラと笑う少女に少年は相変わらず冷ややかな視線を向けた。

「…さようなら」

『あ、そうだ』

少女はもう一度少年を振り返る。

『あたし、引っ越すことになったんだよね。だから、今日で君ともバイバイだ』

「はぁ、そうなんですね」

『そうなんですねって、それだけ?もうちょっと惜しんでくれてもいいんじゃないの?』

少年に右手を出しながらケラケラ笑う。

『じゃあ餞別』

「小学生に金銭を要求するなんてろくな大人じゃないですね」

『あたしまだ大人じゃないし。じゃあお金じゃなくていいよ。少年の名前教えて』

「やっぱりお金取ろうとしてたんですね。…名前ですか?」

『そ。あーでも個人情報だから嫌じゃなかったら』

「お金取ろうとしてたくせに変なところ遠慮するんですね。…僕の名前はーーー。」

少年の名前を少女は繰り返した。

『ふふ、いい名前だね。あたしはーーー。』

少年は少女の名を口にした。

『そう。いい名前でしょ?…気に入ってるんだ』

そう言って少女は微笑む。

『じゃあまたね、少年』

今度こそ去っていく少女の後ろ姿に、少しは惜しんだらどうだと言っていた台詞をなぞった。
そして自分はさっさと帰っていく少女の姿を静かに見送った。

時間が経てば、少年も少女も互いのことなんて忘れてしまうだろう。
刹那的なものだったけれど、そういう時間が、いつの日かあんな時もあったと心くすぐる思い出になったり。
またねと手を振る少年少女が巡り巡って再会する日も、もしかしたら遠くないかもしれない。

11/12/2022, 10:28:29 AM

飛べない翼

あるところに、翼を持った少女がおりました。

汚れのない純白で美しい翼は見るものを魅了しました。

誰もが少女の翼を羨みます。

あんな翼があったら、どんなに気持ちよく飛べるだろうか、と。

しかし、誰も少女が飛ぶ姿を見たことがありませんでした。

いつも丘の上で佇んでいるだけ。

彼らは知りませんでした。

少女のその翼が飛ぶための力を持っていないことを。

そうです。

少女は飛ぶことができませんでした。

翼はただの飾りに過ぎませんでした。



あるところにも、翼を持った少女がおりました。

黒く汚れた傷だらけの翼。

しかし、ボロボロの翼を少女は決して恥には思いません。

それは何度も何度も空へ飛び立ったからです。

そうです。

少女は自分の翼で飛ぶ力を持っていました。

翼は少女をまだ見ぬ世界へと連れていってくれましたーーー。




少女は飛べませんでした。

勇気がなかったから。

本当はいつだって飛べるのです。

しかし、はじめの一歩を踏み出す勇気を少女は持てませんでした。

不安、緊張、恐怖。

それらを打ち砕く勇気が。

だから、ある意味ではいつまでも美しい翼を保っていられます。



少女は飛べました。

彼女には勇気があったから。

広い世界へ飛んでゆく勇気を少女は持っていました。

失敗、挫折、苦痛。

上手くいかない飛行を、何度も何度も繰り返して、空へ飛びました。

ボロボロの翼は、勇気の証ですーーー。




あるところに、翼を持った少女たちがおりました。

少女の視線の先には、もう一人の少女が手を伸ばしていました。

丘の上に佇むだけの少女はもういません。

飛べない翼に勇気を。

私の心に勇気を。

少女たちは広い空へ翔けてゆきましたとさ。   


                      おしまい。



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