手を繋いで
手を繋いで歩いた夏の日。
熱くて手汗をかいていたの、
気づかれなかっただろうか。
そんなことを考えながら、2人街を歩いた。
ねぇ、いつの間にこの手が離れたんだろ。
君はどこかに消えてしまった。
幻だったのではと思うほど、
痕跡を残さずに。
でも、私は待ってる。
また、この手を繋ぐ日を。
どこ?
ねぇ、今どこ?
電波越しに聞こえた、君の声。
電話しながらお互いの顔を見つけて笑い合ったっけ。
ただそれだけでやけに楽しくて。
真上に輝く太陽も笑っているようだったね。
ねぇ、どこ?
今、どこにいるの?
繋がらない電波。
歩けど歩けど見つからない君の姿。君がいない。
ただそれだけのことが
やけに苦しくて、
痛くて、切なくて。
沈みかけた太陽がばかにしてるようだ。
これが、幸せの代償。
でも私は今日も問う。
『君は、どこ?』
大好き
大好き。
僕が心の底からそう言えるのは、きっと君だけ。
深海を漂っているような僕を、
君だけが繋ぎ止めていてくれた。
君を見つけた時、
初めてこの藍のなかに愛が生まれた気がした。
ああ、でも。
もう、終わりだ。
僕が死んだら、
君は悲しむかな?
悲しまないのも嫌だけど、
君が悲しむのはもっと嫌だな。
君は笑顔が似合うから。
だから、さいごに
この手紙だけ残していくよ。
中身は、君以外の誰にも見せないでね。
だって、気恥ずかしいじゃないか。
『君へ。』
薄れゆく意識の中、最後に思い出すのは。
叶わぬ夢
叶わないと分かりきっている夢なら、
初めから持たない方が良かった?
それでも、夢見続けることをやめることはできない。
いつもの白い駅のホーム。
空いた教室の隣の席。
ふと視線を感じて振り向く背後。
そのどこにも、君はいない。
でも。
夢を、諦められない。
諦められないから、夢なのだ。
だから、君の背中を探すことをやめない。
君の影を追うことをやめない。
涙が頬を伝う僕の足元には深く影が落ちていた。
花の香りと共に
初めて出会った君。
桜の木の下、
幼さの残る顔ではにかんでいた。
桜の香りに包まれた君を見た瞬間、
時が止まったように感じたことを
つい最近のように覚えている。
君とお別れの時。
安らかな顔で微笑んでいた。
胡蝶蘭に包まれた君を観た瞬間、
君の死という偶像が唐突に形を帯びた。
それからのことはあまり覚えていない。
あの日の君は、
あの日のまま、
桜の花の香りと共にいつまでも。