心のざわめき
心がざわめく。
嫌な予感が、胸騒ぎが、する。
誰かの悲鳴。何かのサイレン。
何のサイレンかなんてわかりきっている。
でも、受け入れることなどできなかった。
振り向く。
血が。血塗れの、君が。
君の赤が灰色のアスファルトに解ける。
なんで。なんで私を庇った?
私は君さえいればよかったのに?
ふざけんな。
私は君を許さない。
私を1人にした君を。
最期の時、笑っていた君を。
そんな顔されたら、怒れない。
そんな顔されたら、消えれない。
こんな世界なら…
何度思っただろう。
でも私は君のいない今日を生きる。
いつか君に笑顔で迎えてもらうために。
君を探して
ねぇ、君は今どこにいるの?
いるはずもない、いつも通りの白いホーム。
人混みの中に君の影を探す。
真白いホームが、なぜだか灰色に見えた。
君はここにはいない。
けれど僕は惰性的に毎日を過ごす。
君がいなくても、時は僕を置いていってくれない。
当たり前にご飯食べて、当たり前に仕事する。
それだけのことが、君がいないだけでこんなにも。
帰り道。
ふと空を見上げると星の光が降り注いでいた。
新月で、星がよく見える夜だった。
君も、この空を見上げているのかな。
同じ空の下、僕らは…。
透明
いつも明るくて、
赤やオレンジを纏っていた君。
君の横に並ぶことのできない僕は、
くすんだ、深緑という色といったところ。
それも、何色なのかはっきりしないような。
いつも明るくて、
赤やオレンジを纏っていた君。
いつも僕の憧れの的だった。
熱いくらいの憧憬の中、生きていた。
その君は、もう目を覚ますことはない。
そう告げられた時、僕は何を思っただろう。
白い衝撃のあまり、何も覚えていないや。
ピクリとも動かない白く染まった君は、
透明に見えた。
僕の心まで、透けていきそうなほどに。
終わり、また始まる
おめでとう
お世話になった、大好きな大好きな3年生。
でも、彼らがいつもの笑顔で
登校してくることは、もう、ない。
ありがとう。
これからは、私たちが。
おめでとう
緊張した面持ちの、これから関わる新1年生。
でも、去年は私たちが硬い表情で
ここに初めて足を踏み入れたのだと、
感慨深く感じる。
私たちの次は、彼らが。
繰り返し、次は私たちが。
その次は彼らが。
そのまた次も…。
終わり、また始まる。
星
星に手を伸ばしてみる。
見上げればそこにふたつの小さな手。
透き通るほど深い藍の中に瞬く無数の星。
涙の跡が残る僕に君は言った。
「あのね、もう会えなくなっちゃった人たちはね。」
"お星様になって見守ってるんだ"
だから星はきれいなんだよ。
だれかを大切に想う気持ちが星になってるから。
君はもう片方の手を
僕の背に置こうとして、やめた。
透き通るほど深い藍に、
ただひとりの君が透けていく。
"だから、ずっと見守ってるから、平気だよ"
君の声が、聞こえた気がした。
もう触れることも、
話すことも、
笑い合うこともできない、
君の、声が。
僕の透明な青い涙と共に解ける。
もう、もどらない。