Rei

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6/26/2024, 9:58:59 AM

[ガラスの華]

手を出したら壊れてしまいそうなガラスの華。
彼女にぴったりの華だろう。薔薇が似合うのはもちろんだがそれよりも鈴蘭とか小さくて可憐な花が似合う。
「るーちゃん!こっちこっち」
手招きして案内されたのは彼女の豪邸の庭。小さいときから知ってる私たちは良くこの庭でお喋りをする。
「るーちゃん、私ねもうすぐ猫になるの」
唐突に彼女が言った。
「どういうこと?遥、犬派じゃなかった?」
話している間も彼女の手は花冠を編んでいる。
「んー、そうなんだけどね 。でも、もうすぐだからるーちゃんにこれをあげる」編む手を止めてポケットから小さな液体が入った瓶をだした。
「なぁに?これ」
「これはね香水だよ、こうやってふるの」彼女は瓶の蓋を押す。ふわっと広がる香りは彼女そのものの匂いだ。「この匂い、好きだなぁ。遥の匂いがする」彼女は少し儚く笑うと私に編み終えた花冠を乗せた。「これで、私を思い出してね」

数日後、彼女が亡くなり猫になるの意味を知った。

6/18/2024, 10:24:35 PM

[透明な空に墜ちれたら]

「もう、何もかも終わらせてしまいたいなっ…笑」
誰も聞いていない屋上で1人呟く。僕の人生は散々だ。いったい前世どんな悪事を働いたか問いただしたいほどに。親も家庭環境も周りも恵まれなかった。この人生で何が楽しかったか考えても親友のあいつのことしか出てこない。
ひとつ訂正だ。親友だけには恵まれた。でも、ごめんな。携帯の電話画面を開く。
「もしもし、雪?」
「うん、あのな伝えたいことがある」
「どうしたの…そんなに真剣に。今どこ?めっちゃ風の音聞こえるけど、外?」
「うん、外。僕は、僕は渡瀬に会えた事だけが幸せだった。約束守れんくてごめん。」柵に足をかける。
「雪??絶対、俺を置いていくなっていっただろ!後、5分だけ待ってろ」プツッと電話が切れた。あの渡瀬が語気を荒げるなんて珍しい。
5分くらいなら待とうかな。なんて考える僕も甘いんだろう。ぴったり5分。渡瀬が来た。
「雪っ、俺を置いていくなよ。…ごめんな。家庭環境も何も変えれなくて」頭を撫でられる。
「渡瀬のせいじゃないよ。でも、もう疲れたんだ」
沈黙が続く。
「雪…。…俺も一緒に連れていけよ」

6/16/2024, 8:39:41 AM

[幸福は夢の後で]

私は読んでいた本を閉じた。
もう一冊読みたい本がある。
残りは、おやつを食べた後にでも読もう。
私は今読んでるこの本の最後の台詞が好きで何回も読み直している。
もちろん、内容も好きだ。
私の人生の意味を指し示してくれる気がするから。
もう一冊は、幸せとはなにか。充実した数日を過ごすかくだらない人生を長く過ごすか。
充実した数日を過ごす中で幸せとは何かと気づく。

今回の締めは「薔薇の下で」

6/14/2024, 10:26:23 AM

[曖昧なI]

それは永遠に続くかと思ってしまうくらいに目が合う一瞬が長かった。行き交う人は目を奪われる。
美しい華は、柵で囲い過ぎても枯れてしまう。
誰もが手を伸ばしてしまうほどの儚さを持つのは傾国の美女。
曖昧な色の空。
美しい湖。
彼女は、美しく水に浮かんでいた 、花と共に。
アリウムと黄色のチューリップ、キンセンカの花が浮かんでいる。
花言葉はどれも悲観したようなものばかり。
それは、まるで有名な絵画を思わす光景だった。
亡くなる前に、言っていたことは
「彼も月と虹は見たのかしら」どこか諦めたような微笑。
彼女の美しさは罪だったのか?

彼女に優しくなかったのは世界か、容姿か?

6/12/2024, 8:24:20 AM

[変わらぬ景色で代わった世界]
数年振りに帰省した。街並みは昔と変わらない。
小学校の頃、友達と話して帰った道。
中学生のとき、見つけた綺麗な星が見える丘。
高校生のとき、よく友達と勉強して帰ったカフェ。
変わったのは、僕のとなりにもう君はいないこと。
君がいない春がまた来る。
色のない桜が目にうつる。
君と見た桜はどんな色だったのかな。
もう、思い出せないなぁ。

でも、記憶の中の君と話す。
それだけで、少し楽しい日々になる気がする。

___記憶の中の君は精神安定剤。

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