ほうれん草が安かった。
今日は暑いから、さっぱりとおひたしにしよう。
たっぷりのお湯で茹でて、流水で冷やしながらキュッとしめる。
水気を絞って食べやすい大きさに切れば出来上がり。かつおぶしを乗せて、醤油を垂らして。
決してメインディッシュにはならない、副菜の一つ。とても地味だけれど、あると嬉しい小さな幸せ。
(ただしこの小さな副菜一品に使われた水の量に気付くと超ウルトラハイパー贅沢料理にしか見えなくなります)
春爛漫。
通勤路をゆったりと歩く。
ほころんだ桜のつぼみは
あっと言う間に咲き誇って、
辺りをピンク色に染めるのだろう。
肌をあたたかな風が撫で……あたたかくない!むしろ暑い!上着脱ぎたい!
やわらかな日差しに目を細め……やわらかくない!むしろ強い!目が痛い!
遠くの山を霞ませる春霞……ちがう、これ黄砂!くしゃみ止まらない!
現実は厳しく、J-POPの歌詞めいた私の陳腐な浪漫をかき消していく。
それでもめげずに、毎年春を待ち望んでしまうのだ。
春爛漫。
七色という言葉はなんだか特別だ。
それは様々な色を持つ美しいものの代表格である虹の色数が7つだから──?いや、虹の色数は国によって違うというよな。日本の人々がたまたま7つの色を認識したから、七色も特別になったのか?
でも、もし色数を8つと認識していたとしても私たちはやはり七色と呼んだのではないかと思う。
だって「ハチイロ」より「ナナイロ」の方が圧倒的に語呂と雰囲気が良いんだもの。
むしろ七色と呼びたくて色を7つに決めた可能性すらある。
卵が先か、鶏が先かみたいな話だけれど、言葉が先行した事象、あると思います。
春になるとなんだかわくわくするのは、きっと春の日に踏み出した新しい一歩にわくわくした記憶があるから
春になるとどうしようもなく切なくなるのは、きっと春の日の別れに切なく涙した記憶があるから
春になるとそわそわと落ち着かないのは、きっと春の日にとてつもない激務に身をすり減らした記憶があるから
春になるとくしゃみ鼻水が止まらないのは、確実に春の日に舞う花粉の情報を身体が記憶しているから
もう二度とヒートテックもう片付けていいよね、なんて言わないよ絶対(朝晩さむい)
何十年も生きてるのにいまだに春先の気候に合わせた服装選びが難しい。