Namimamo

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3/4/2025, 10:32:54 AM

こんな雪の舞い散る夜には、あの日あなたと交わした約束を思い出す。

あなたは私の目を真っ直ぐに見ながらこう言ったの。


──約束しよう。僕は誓って誓約するという契約を結ぶことを協約すると確約する。これらの全てを取り決めて契りを交わそう──


いまだに私は彼と一体何を約束したのか、わからないの。

3/3/2025, 12:45:18 PM

はらりと散る花が
ひらりと舞って
ふわりと浮かんだ
へたりと座り込む僕
ほろりと泣いた君


また会えるよね?
みんなで来れるよね?
むりやり作った笑顔の
めに涙が浮かんでいた
もう、さよならなんだね


やさしさをありがとう
ゆめでまた会えるから
よるの入り口で待ってて

3/2/2025, 10:41:57 AM

『その日、アパートの小さな部屋で私は本を読んでいた。時計は23時を少し回ったところ。静かな夜だった。
突然、ドアをノックする音がした。トントン、と軽く二回。私は本を閉じ、眉をひそめた。こんな時間に連絡もなしに訪ねてくる人なんて誰もいないはずだ。「誰かしら?」と小さく呟きながらドアの覗き穴を覗くが、そこには誰もいない。不安を感じながら私は』

──ここまで打って、私はキーボードを叩く手を止めた。
今時「誰かしら?」と呟く女性がいるだろうか?いや、いない。絶対いない。
常々思っていたのだ。日本の創作文化における喋り言葉の不自然さについて。
「〜だわ」「〜かしら?」「〜わよ!」等の語尾はあまりに読み慣れて聞き慣れてしまっているけれども、もしも現実世界で使ったら明らかに不自然だ。
取るに足らない私の創作と言えど、時代に合わせてアップデートしていくべきだろう。

「誰かしら?」の部分をDeleteして打ち直す。

「誰だろう?」

……言うか?独り言で、誰だろう?って、言うか?微妙過ぎる。
再びDeleteして打ち直す。

「誰かな?」

いやいや言わんだろ!

こうして私は言葉の迷宮に迷い込んだ。

「誰じゃ?」
「誰かいな?」
「誰だ?」
「誰なのだ?」
「フーアーユー?」

わからない、もう私はわからないよ日本語が。

こうして私はこの1行を消しては書き直しを繰り返し、ついに迎えた深夜2時。
「もう、これでいいや……」

とどうにか完成させてパソコンを閉じた。


翌朝。
記憶が曖昧なままに書き上げた文章を確認する。

そこには

「誰でござろう?」

と書かれていた。

誰でござるか?よりによってこの語尾を選択したのは。
私でござる。

……設定を江戸時代に変えなきゃなあ。

私はため息をつきながら「アパート」を「長屋」に、「本」を「巻物」に打ち直した。

3/2/2025, 1:58:37 AM

芽吹きのとき


むずむず、そわそわ、うずうず。最近どうにも落ち着かない。

ずっと冷たかった頭の上の方が、なんだかじんわりとあたたかいんだ。

周りの生き物たちも、ガサゴソとせわしなく何かの準備を始めている。

その時、遠くから誰かの話し声が聞こえた。

もうすぐだね
いよいよだね
たのしみだね

そして僕は理解した。
芽吹きのときが来たらしい。

僕は嫌だな、と思った。
だって怖いんだもの。
うわさによると、外の世界はすごく広くて明るくて、危険もいっぱいなんだって。
ここは確かに暗いけど安全で、いつだって僕を包み込んでくれるのに。

だけど日が経つごとにあたたかさは増して、それにつられるように僕の体は上へ上へと伸びていった。



下手くそなうぐいすがケキョ、と鳴いたある朝。ついにその時は来た。

頭の先が何かを突き破るような感覚。そして

──まぶしい!!

衝撃とともに、僕は初めて外の世界に出た。

心地よい風が「ようこそ」と僕を撫でながら吹き抜けていく。

外の世界は明るくて、広くて。
空気が気持ちよくて、朝露が色々な場所でキラキラと光っていて、美しかった。

本当に美しかった。


気付けば二本足の大きな生き物が近くに来て、僕をじっと見て、

「ああ、もう出てきたのか。春だね」

僕のことを春と呼んだ。

3/1/2025, 3:37:42 AM

7年前の今日に、娘を産んだ。

妊娠も出産も、人より順調にいかないタイプの私には、正直苦しくて痛くて辛いばっかりの思い出だ。
あの日のお天気だとか空の色だとかも、全然覚えていない。

手術室から病室へ戻りわけがわからないまま腕に抱いた娘は、ぐんにゃりとしてほかほかと温かくしかし弱々しく、落としてしまわないか、ちゃんと息をしているのか、ただただ不安だった。


気付けばあの日の温もりが家中を走り回り、文字を読んだり、ピアノを弾いたりしている。不思議なものだ。

喉元過ぎればなんとやら、にはならないし、生まれてきてくれてありがとう、みたいな感傷にひたるタイプでもないけれど。
今からハンバーグを作って、ケーキに飾り付けをするのだ。

春の日差しが、今日を寿いでいる。

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