Namimamo

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2/19/2025, 11:59:02 AM

あなたは誰


あなたの属する集団や組織の中に、身元のよくわからない人物が紛れていることはないだろうか。

いやいやそれはないでしょ、って?私もそう思う。普通に考えたら、ない。

しかし私の人生の中で、自分の属した集団によくわからない人物がいたことが少なくとも2回はある。


1回目は高校の部活動。

気付いたら、入部当初はいなかったよくわからない大人二人に指導されていた。
全体指揮を取るスズキさん(仮)と、個々の指導に付く竹ちゃん(仮)は明らかに教員ではなく、コーチとして雇われたわけでもない謎の存在ながらも私たちの日常に根を張っていった。

知り得た情報を繋ぎ合わせると、ただでさえ弱小の部活にド素人の教員が顧問になってしまい、それを見かねた出入り業者(スズキさん)が口を出すようになり、知り合いだったOB(竹ちゃん・当時フリーター)も呼び寄せた、というようなことだったらしい。

そんなことある??

しかし、とりあえず害はなさそうだったのと、若さゆえの適応力により、私たちは謎の大人に指導されることに特に反発はせずに日々を過ごした。


2回目は、大学時代のやはり部活動。

色々な学部から集まった沢山の仲間の中に「川さん(仮)」と呼ばれる人物がいた。
「川さんって何学部なんですか?」と先輩に聞くと、「ああ、あいつこの大学じゃないんだよ。というか大学生でもないらしい」と言う。
学外の人間がいる理由を尋ねても「さあ?山田が連れてきたんだったかな?もう5年くらいいるっぽい」と言った具合だ。
まあ都会の大学では大学を超えてサークル活動をするらしいし、地方大でもたまにはそういうことがあるのかな。
私はそれ以上の疑問を持つこともなく、川さんともすぐに馴染んだ。


結局彼らが何だったのか、はっきりはわからない。
今になってみれば、内部に入り込んで宗教や危ないバイトに勧誘する輩である可能性なども考えられるが、若さゆえのものか時代のせいか、あなたは誰?と聞くことは最後までしなかった。
おおらかだったとも言えるし、危機感がなかったとも言える。

アリの巣にはアリではない虫が結構な数紛れ込んでいる、そんな話を思い出す。
それと同じように、集団にはよくわからない個体を受け入れてしまう性質があることを実感した。


あなたの属する組織に身元のよくわからない人物が紛れていることはないだろうか。
いやいやそれはないでしょって?
その人物は、あなたのすぐ側にいるのかもしれませんよ────ねえ、あなたは誰?

(ここで世にも奇妙な物語のBGMが流れる)

2/18/2025, 11:27:11 AM

手紙の行方

最近の方はきっと知らないでしょう。
その昔、学校の中では定期的に「不幸の手紙」なるものが蔓延したものでした。

「この手紙を受け取った人は、同じ内容の手紙を1週間以内に10人に送らないと不幸になります」

と言った文面のそれは、今見てみれば大層くだらないシロモノですが、子どもの恐怖心や虚栄心、ちょっとした悪戯心や自己愛精神、集団心理などを巧みに突いたもので、中々放置は出来ない仕組みになっておりました。
これを最初に思いついた人は、悔しいですが優れたアイデアマンだと認めざるを得ないでしょう。

私がこの類の手紙を受け取った後にどうしたかはよく覚えていません。しかしこの不幸の手紙は思わぬ形で再び私たちの手元へと飛び込んでくるのです。

こちらもお若い方はご存知ないでしょう。
チェーンメールというやつです。そう不幸の手紙のメール版です。
宛名を書かなければ誰から来たのかわからない手紙と違い、メールは送り主が丸わかりなのでそこまで拡散しないだろう、と思うでしょう?結構みんな拡散したのです。人はそういう生き物なのです。


さて時は流れて令和の現在。通信手段はメールからLINE、もしくはSNSへとめまぐるしく変化を遂げてきましたが、あの不幸の手紙はどうなったのでしょうか?
少なくとも私が見聞きすることはなくなりした。
私自身が随分と大人になったこともあり、さすがにその類の情報を嬉々として回す友人はおりませんから、一見消滅したかのように見えています。

しかし私が見えない場所にあるだけで、きっとあの文化は生き続けているのではないかと思うのです。文化……いえ、長い長い昭和から平成にかけて受け継がれてきた歴史がありますから、それはもはや呪いと呼ばれることもあるのかも。

現在においての不幸の手紙はどのような文面、どのような形になったのか、少し気になるような、わざわざ知るまでもないような。
その程度の、それでも確実に存在した、怪しげな手紙の行方。
もし見かけた方がいらっしゃったら、ご一報いただきたいものです。

2/17/2025, 11:32:07 AM

暗い。それなりに街灯がある住宅街と言えども、夜は暗い。

だから、夜の運転は怖い。
この辺りは入り組んだ路地が多く、ちゃんとした歩道と呼べるものも少ないのだ。

そして夜に出歩く人の多くは、何故か黒い服を着ている。
黒いダウンでウォーキングをする夫婦、塾帰りの学ランの男子学生、黒いジャージで犬の散歩をするおじいさん。
何故、何故なのだ。何故黒い服を着るのだ。
危ないじゃあないか。
彼らは暗闇に紛れ、曲がり角から、道の影から突然視界の中に現れる。
たとえ懐中電灯を持っていても、その小さな光の主張は弱く、遠くから気付くにはあまりに頼りなかった。

夜の運転は怖い。


そんなある日、いつものようにそろりそろりとアクセルを踏む私の目に見慣れないものが飛び込んできた。

黄色……いや黄緑色?
チカチカ、ピカピカ、クルクルと鮮やかな色を変えてゆくその輝き。
地面に近い場所で忙しなく動く光る物体は何者か?

少しずつ近付いて、ようやくわかった。

「犬が……光ってる……!!」

散歩中の犬が、いや犬の首輪が、パチンコのネオンのようにまばゆく光っていた。

その光は明るく眩しく、犬の首周りだけでなくリードやその飼い主の存在もきちんと照らし出してくれている。

なんという可愛さ。
なんという安全性。
なんというセンセーション。

運転手にとってこれほどありがたいものはない。
その後、光る首輪は市民権を得てどんどんと広まっていったが、私はこの時の感動をいつまでも忘れないと思う。

犬を光らせてくれる全ての人、ありがとう。
その輝きが沢山のものを救います。何より可愛いです。

2/16/2025, 10:49:25 AM

この瞬間
時間よ止まれと
ただ願う
明日の締め切り
白い下書き


しくじった
時間よ止まれの
魔法陣
うっかり時間が
倍速になり


駄目だった
時間よ止まれの
願い事
そのおかげで今
貴方といられる


嘘でしょう
時間よ止まれが
叶ったの
ジェットコースターの
一番真上で

2/15/2025, 11:02:52 AM

昔ツイッターに載せた文章をお題に合わせて少し変えての投稿です。いにしえのティーンズハート文体、お気に入り!

────────────────

君の声がする……あたしを呼ぶ声が……

何故?どうしてそんなにあたしを呼ぶの?

ああ、でもごめんね、あたし今すごく眠いんだぁ。だからもう一眠りしてからにし…て……

「……マ!ねぇ!ママってば!!!」

「んもぅ!なにようるさいなぁ!」

──んん???

自分の声に驚いて目が覚めた。
あれ?あたし、寝てた──?

目の前には不思議そうな顔をした長女がいる。
ええと、今は何時?スマホスマホ……あった。見慣れた液晶画面には17時と表示されている。
そうか、あたし、仕事から帰ってきて疲れて寝ちゃったんだ。

あたし、これでも三人の子持ちママ。大学時代に好きになった人と晴れて結ばれてゴールイン。めでたしめでたし──とは行かないのが人生なんだなぁ。その先にあったのは妊娠出産、育児に家事に仕事に、イマドキの女性は大忙しなのだ。
床で寝ちゃう日だってある……よね?
でも起き抜けに叫んじゃったのはマズかった。一応人の親なんだもの。失敗失敗☆

気を取り直してあたしは「ママ」の顔を作り直して長女に向き合った。

「ごめんね長女、ママ寝ぼけてたみたい。どうしたの?」
「ねえママ、なんか熱い気がする」

──ドキリ☆

心臓が跳ね上がる。
まさか、ね。ついこの間まで次女がインフルエンザだったけど、頑張って家庭内感染防げたねって喜んでたところだもの。
それにこの子、長女は生まれこそ小さかったものの今やすっかり丈夫になって、いわゆる健康優良児ってヤツ?

「そう?顔色はいつも通りだけど。でも一応計ってみようか」

あたしは冷静さを装いながら長女に体温計を差し出した。

まさか長女が39度も熱があるだなんて、その時のあたしは想像もしてなかったんだ────


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