Namimamo

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暗い。それなりに街灯がある住宅街と言えども、夜は暗い。

だから、夜の運転は怖い。
この辺りは入り組んだ路地が多く、ちゃんとした歩道と呼べるものも少ないのだ。

そして夜に出歩く人の多くは、何故か黒い服を着ている。
黒いダウンでウォーキングをする夫婦、塾帰りの学ランの男子学生、黒いジャージで犬の散歩をするおじいさん。
何故、何故なのだ。何故黒い服を着るのだ。
危ないじゃあないか。
彼らは暗闇に紛れ、曲がり角から、道の影から突然視界の中に現れる。
たとえ懐中電灯を持っていても、その小さな光の主張は弱く、遠くから気付くにはあまりに頼りなかった。

夜の運転は怖い。


そんなある日、いつものようにそろりそろりとアクセルを踏む私の目に見慣れないものが飛び込んできた。

黄色……いや黄緑色?
チカチカ、ピカピカ、クルクルと鮮やかな色を変えてゆくその輝き。
地面に近い場所で忙しなく動く光る物体は何者か?

少しずつ近付いて、ようやくわかった。

「犬が……光ってる……!!」

散歩中の犬が、いや犬の首輪が、パチンコのネオンのようにまばゆく光っていた。

その光は明るく眩しく、犬の首周りだけでなくリードやその飼い主の存在もきちんと照らし出してくれている。

なんという可愛さ。
なんという安全性。
なんというセンセーション。

運転手にとってこれほどありがたいものはない。
その後、光る首輪は市民権を得てどんどんと広まっていったが、私はこの時の感動をいつまでも忘れないと思う。

犬を光らせてくれる全ての人、ありがとう。
その輝きが沢山のものを救います。何より可愛いです。

2/17/2025, 11:32:07 AM