ある日花束が言いました。
永遠、私は貴方が羨ましい。貴方は沢山の名前を持っている。
永久、とこしえ、久遠、永劫、恒久、悠久、不朽、永世……どれもとても美しく気高い響きの、人を惹きつけてやまない言葉たち。
それに比べて私を表す言葉は一つだけ。
花束。ただ一つのそれだけ。
私は貴方が羨ましい。
永遠は答えて言いました。
花束、僕こそ君が羨ましい。
僕の呼び名が定まらないのは、僕の持つ意味が捉えどころのない、形のない物だから。
人によって、場所によってその意義も使い方も変わってしまうからこそ、皆それぞれに様々な名で僕を呼ぶ。
それに比べて君はいつだって確固たる意味と存在を持っている。花を束ねた物である君はいつの時代の誰が見たって美しい。
僕は君が羨ましい。
花束は笑って言いました。
どうやら私達、お互いに無い物ねだりをしているね。
永遠も笑って言いました。
そう、もしかして僕たちは互いを補い合えるのかもしれないね。
そうして永遠と花束は歩み寄り、ひとつの言葉になりました。
永遠の花束。
「やさしくしないで」
なんて言わないでよね
実際に厳しくしたら泣く癖に
諫言を受け入れる覚悟もない癖に
「ダメな僕を叱って」
なんて言わないでよね
本当に叱ったら顔をしかめる癖に
ダメな自分に酔ってるだけな癖に
「ずっと側にいて」
なんて言わないでよね
現実にそうなったらうざがる癖に
雰囲気に溺れて言ってみただけの癖に
「君を守ってみせる」
なんて言わないでよね
何から守るのかも挙げられない癖に
リアルに敵が襲って来たら逃げ出す癖に
mixiをご存知ですか?
ええ、最近始まった新しいmixi2ではなく、もう10年以上前の、足あと機能などが付いた元祖mixiの方でございます。
私が女学生だった時代に始まったそのソォシャルネットワァクサービスは一世を風靡して、私も例に漏れずリア友たちと『マイミク』なる愉快な関係を結び、日々の出来事などを綴り、いいねやコメントを貰っては喜んでおりました。
なにぶん若かりし時代に書いた日記です。エゴや自己顕示欲にまみれた青臭い文章が多かったことでしょう。
若者らしく頭でっかちな恋愛に悩んだ末に、名前を伏せた誰かへの想いなども書き散らした覚えがございます。
今自らの投稿を読んだものなら、私は顔から火をゴジラの如く噴き出すに違いありません。
そんなmixiも時代と共に新しいSNSに押され、段々謎の機能がごちゃごちゃと増えていきました。随分と使いづらくなり、友人たちの投稿も減ってゆくものですから、私もいつしか放置するようになりました。
そして現在に至ります。
そう、私はmixiのアカウントをまだ削除はしていないのです。
更に使っていたメェルアドレスやパスワァドなども記憶の遥か彼方へと置いてきぼりにしてしまい、ログインする術はございません。
あの過去の日記群は、特に彼の人を想って書いたあの投稿は依然としてインタァネットの雲の中にぷかぷかと浮かんだままで、然し見つけることは難しく、まるで隠された手紙のようです。
嗚呼どうか私のマイミクだった皆様におかれましては既にアカウントを削除しておりますように。
万が一見てしまった場合は、何らかの拍子に速やかにその記憶が削除されるに至っておりますように。
そう願ってやまないのです。
「バイバイ!」
「バイバーイ!」
「バイバーーーイ!!」
分かれ道
何度も振り返っては姿が見えなくなるまで互いに手を振り続けた
明日も明後日も会えるのに
今日の別れが惜しかった幼き日々
「バイバイ」
「うん、また会おうね!」
「絶対にね!」
別れ際
それぞれ迫りくる未来に精一杯で
中々会えなくなることはわかっていた
それでも絶対と強く言えるくらいには
若かりし日
「バイバイ」
「元気でね」
「うん、会えて良かった」
去り際に
これで最後かもしれない
そんな予感を持ちながらも
そんなことは言わない
気付かないフリをするくらいには
大人になったあの日
「ありがとう」
「…………」
「ありがとうね」
送り際に
物言わぬ人へかけた言葉
二度と会えないことはわかっていても
バイバイとは言えない
言いたくなかった
大人になって随分経ったというのに
どうするべきかわからなかったあの時
旅の途中に
食べたくなるのは君のシチュー
そう僕は君に夢中
しょっちゅう会いたいのに君は喪中
眼中にないと言われ苦衷
四六時中熱中 嗚呼自己中
宮中に路駐した僕を君は天誅
意中の君の心は遥か宇宙
僕は君をwant you
But I can't get you
そんな渦中
僕に寄り添ってくれたのは昆虫
甲虫の体はまるで甲冑
寒中の山中 成虫に命中
地中に集中 幼虫を必中
白昼の職務中 益虫を外注
人生あっという間に五里霧中
四六時中 懐中に焼酎
アル中の病中
君を思い出す心中
やはり僕はwant you
But I can't get you