【透明な涙】
私は泣いていた。1人ではないとはわかってる。頼れる人たちがいることもわかってる。正直未来がとても暗いとは自分で思っていない。
なのに、私は今この瞬間孤独で暗くて寂しい。
なんでだろう、私は自分を悲劇のヒロインにでもしたいのだろうか...
明日は晴れるらしい
【あなたのもとへ】
紙飛行機みたいにこの想いも飛ばせられたらなぁと思ってた。でも想いは飛ばすんじゃなくてちゃんと渡さないとね
【そっと】
森を尋ねるとそこには小人たちがいた。5人?いや、6...7人だろうか。その小人たちは何か慌てている様子で1、2人が僕を見るなりこちらに大急ぎで向かってきた。と、思ったら何か話し始めた。
「すみません、いま姫様の葬式が始まるのでございます、」
「姫だって?」
そう言うと僕は彼女の元に全速力で走った。が、その意味は無いに等しく、そこには息絶えていた姫らしき人がいた。美しいガラスの棺桶に横たわり目を瞑っている彼女を見る。白い雪のようなきめ細かい肌を持つ女性が目の前にいた。彼女こそ世界で1番美しい姫だと見た瞬間に思った。
「口づけをしてもいいか?」
「え?」
自分でも馬鹿なことを言っているなんてわかっていた。でも、それでも彼女に、いや、彼女"だった"それに私は激しく一目惚れをしたのだとわかった。だから私は顔を近づける。少しずつ少しずつ、その美しい雪を溶かさないように...
「何してるの」
次の瞬間、触れそうな唇は彼女に届くことはなく、僕は小人にひっぱたかれた。
「死体にキスするとかありえないでしょ...」
確かにその通りだった。僕は一体何をしていたのだろうか。
「すまなかった。僕はもうお暇することにするよ。」
そう言って僕は来た方向に体を向き直した。もう彼女達のことはそっとしておいてあげようと思ったからだ。
【まだ見ぬ景色】
「ふぅ〜」
私は乾ききったシワシワの左手を同じくシワシワの右手でさする。息子はちゃんと大学に行っているだろうか。それだけが今の私の心配...
「ただいま!」
その声の方向には30代だろうか、見ようによっては40代にもみえる、元気そうな男性がいた。
「久しぶりですね」
「あのーどちら様...」
「...お久しぶりです」
その私の声に彼は何も無かったかのようにもう一度、そう返す。
「元気そうでよかった。そろそろ一緒に住んでもいいかもしれませんね。」
「どうして、私があなたと?」
「おと...お爺さんも亡くなってしまい、独りだと寂しいと思います」
「そうですか?私はいつでもあの人が私の心にいると信じていますので結構寂しくはないものですよ、あの人は息子が高校生のときに亡くなってしまって...あれ、あなたはよく知っていますね。まぁでもそれに」
私は一呼吸置いて言った。
「天の絶景の前であの人はきっと待ってくれているはずですから。」
「そうですか、でもあなたが心配なのでまた来ます。」
そう言い残して彼は色々と家のことをしてくださった。掃除だったりなんだったりと。そして、まるで昨日も来ていたかのように彼は家の構造を把握していた。
「では、また来週来ます。」
そう言い残して彼は去ってしまおうとしていた。
「ちょっと待って、」
私は思わず彼を呼び止める。
「どうしてここまで...」
「いえ、あなたは僕の大切な人ですから。」
そう言いながら彼は扉を優しく閉めて家から立ち去った。気がついたら彼が来てから3時間?ほど経っていたようだ。もう冬も中盤に差し掛かってきたので、午後の寒さはかなり身に染みた。私はまた左手を擦りながらぽつりと部屋の隅で呟いた。
「たかし、ちゃんと大学行ってるかしら...」
【あたたかいね】
こころ