【羅針盤】
私はどこに向かっているのだ...
行くあてもなくただ彷徨う
そんな私に付いてくるのはこの小さい船とそれを揺らすだけの荒波とあとは多少の後悔だろうか
少し船酔いにも慣れてきたが、やはり慣れないことはしない方がいいらしい
冒険家になるなどという大口というかもう幻想に近いものを育ての親に吐き捨てた結果、
私は今この短い航路でさえも不安すぎてしょうがない
でも、なんだか行ける気さえしてしまうのはきっと、
私が無知で目的地が定まりきらず回り続ける羅針盤だからだろう
【ただひとりの君へ】
君は今どこにいるのか
私は教えて貰えていない
きっと優しい君のことだから
内緒にしてくれているんだよね
でも、心配したのは私の勝手だから
今から君のもとへと向かうけど
それも私の勝手だから
もし私に会えなくても
ガッカリしないでね
私は行くよ
ただひとりの君のもとへ
【手のひらの宇宙】
右手のクレヨンを指で回そうとして、その長さが故に一瞬で諦める。そのクレヨンをクレヨンケースに戻すと同時に、手に付いたその黄やら赤やらの色を馴染ませるとまた視線を手から絵に戻す。なんという出来だろう。これまでの作品の中では1番では無いだろうか。そう思い、私はこれまでの作品を見る為に紙をめくる。少しずつ、それでも確実に成長している自分の画力を見ると、とても嬉しい。別に私は画家志望という訳では無い。でも、それでも自由に絵を描く楽しさだけは忘れないと思った。一旦さっき描いていた絵をまた目の前に表すと、私は最後の仕上げに取り掛かる。この月にはもっと陰影を付け、逆に太陽には灼熱の暑さを表すかの如く色を重ねる。良いじゃないか、すごく。
(これは完成と言っても...)
そう思いにふけっていると、下からなにやら物音が聞こえてきた。きっと母親だろう。先程ご飯を作っていたのを見た。そちらも完成したのだろうか。だったら頂こうかな、そう言いながら私はゆっくりと立ち上がった。
「なおちゃーん、ご飯できたよ!」
「はーーーい!」
【透明な涙】
私は泣いていた。1人ではないとはわかってる。頼れる人たちがいることもわかってる。正直未来がとても暗いとは自分で思っていない。
なのに、私は今この瞬間孤独で暗くて寂しい。
なんでだろう、私は自分を悲劇のヒロインにでもしたいのだろうか...
明日は晴れるらしい
【あなたのもとへ】
紙飛行機みたいにこの想いも飛ばせられたらなぁと思ってた。でも想いは飛ばすんじゃなくてちゃんと渡さないとね