【手のひらの宇宙】
右手のクレヨンを指で回そうとして、その長さが故に一瞬で諦める。そのクレヨンをクレヨンケースに戻すと同時に、手に付いたその黄やら赤やらの色を馴染ませるとまた視線を手から絵に戻す。なんという出来だろう。これまでの作品の中では1番では無いだろうか。そう思い、私はこれまでの作品を見る為に紙をめくる。少しずつ、それでも確実に成長している自分の画力を見ると、とても嬉しい。別に私は画家志望という訳では無い。でも、それでも自由に絵を描く楽しさだけは忘れないと思った。一旦さっき描いていた絵をまた目の前に表すと、私は最後の仕上げに取り掛かる。この月にはもっと陰影を付け、逆に太陽には灼熱の暑さを表すかの如く色を重ねる。良いじゃないか、すごく。
(これは完成と言っても...)
そう思いにふけっていると、下からなにやら物音が聞こえてきた。きっと母親だろう。先程ご飯を作っていたのを見た。そちらも完成したのだろうか。だったら頂こうかな、そう言いながら私はゆっくりと立ち上がった。
「なおちゃーん、ご飯できたよ!」
「はーーーい!」
1/18/2025, 11:03:41 AM