山の彼方の遠くの町に
ある日旅立った君よ
秋の静かな川辺の道を
歩きながら想いにふける
セイタカアワダチソウと
ススキが綺麗で
空は朝方の雨が
嘘のようにきらめき始める
あの日もう一つの物語を
僕が選んでいたなら
僕の前の道はどこへ
続いていたのだろうか
山の彼方の遠くの町に
もうすぐ冬が来るだろう
白い世界になって
すべてをつ包んでいくのだろう
大学を卒業する年
夜のプラットフォーム
寝台列車日本海に
乗り込んだ
少しのお菓子と
お酒を少し
やがて暗くなった車内は
静まり返っていた
朝の窓の向こうに
朝焼けと幾重も
砂浜に寄せる波
そして田んぼの連なりと
池と森を繰り返し
踏切を通り過ぎ
やがて東北の小さな町についた
もう一つの物語が
そこにはあるような気がしたよ
もうずっとずっと昔の話
僕はずっと暗闇の中を歩いていた
人の笑いや怒りが不可解で
無表情だったから先生に叩かれた
宿題をしてこなくて正座させられたけれど
全く何も考えなかったし悪気も無かった
普通になることいつからかそれが目標になった
何もわからないから
いじめられることもあまりなかった
友達は僕を誘ってくれた
けれどずっとそのままではなかった
いくつもの壁が立ちはだかった
少しずつ色々なことが見え始めて
高校の時お前に友達なんかいないぞと言われた
僕は初めて泣いた
社会に出てからも何度も躓いた
そして10回以上転職したと思う
今はもう履歴なんかわからない
人並みの悩み苦労そんなものは本当の苦労ではない
本当の苦労は人にはわからない苦労だと思う
私はそんな苦労を物心ついてからしてきたから
人にわかってもらえるような苦労で泣こうとは思わない
今はずいぶん普通に働いている
営業的なこともしている
年齢がいくほど霧が晴れて今が一番幸せだ
今では老眼も出て髪も薄くなった
あっという間にここまで駆け抜けてきた
瞬きしているうちにここまで来た気分だ
どこまでも続く青い空
草原のなかで僕らは歌う
朝の点呼だ1,2,3,4
今日はいよいよ大きな海へ
遥か彼方の大陸を目指して
渡り鳥の宿命だから
さあ今一斉に翼を拡げ
舞い上がれと力の限り
黒い瞳に輝く光を
体いっぱいに浴びながら
木々が紅く染まれば
山は衣替え
着飾った君の笑顔が眩しいよ
すすき揺れる静かに
風をかんじて
空に浮かぶ白い月が綺麗だね
そうさこの町で
新しい季節を迎え
やがて雪がすべてを
包んでしまっても
僕らはきっと繋いだ手を離さないから
木々が紅く染まれば
山は衣替え
着飾った君の笑顔が眩しいよ
水色の空
やわらかな陽射し
犬の散歩
草の香り
刈られた田んぼ
早起き雀
犬の挨拶
朝のおしゃべり
始まりはいつも
こころ穏やかに
ここしばらくは
何事もなく
こんな平和な
場所にいること
それだってきっと
大切な宝物