あおい

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11/9/2023, 12:48:35 PM


【無題】


密やかに秘めやかに、誰にも見られないように。
この気持ちをしまって鍵をかけて。
代わりはいくらでもいるのだと嘯いて笑う。
そんな日々はあっけなく崩れ去った。

「ごめん、」
ぽつりと落とされた言葉にふと我にかえる。
見られたくなかった、と思った。
きみの代わりに他人に欲を向ける自分を。

バタンと閉ざされた扉の音が反響して消える。
追いかけることもできないまま
伸ばした手を握りしめた。

腕の中で声を振るわすきみじゃない誰かは
くすくすと共犯者の顔で笑う。

(怒って欲しかった、なんて馬鹿みたいだ)


ーーーーーーーーー


2人きりの部屋で聞こえるのは息を吐く音だけ。
ふたりぼっちには慣れていたはずなのに。
今日は呼吸するのすら躊躇うようで。

「なにあれ」
「、え」
「昨日の」

ぽつりと落とされた声に、
その目に射抜かれて、
嘘をつくには時間が足りなかった。

「好きなんじゃなかったの、」
いつもより早口に告げられた言葉と合わない視線。

ずるい人だ、と
頭の片隅で誰かが乾いた笑いを漏らした。

「そんなこと、言ったっけ」

好きじゃない、好きじゃない。
そんな軽い言葉でこの気持ちを表せるなら
とうの昔にふたりは幸せになれたはずなのだから。

「違うならいいけど。でも、」

ああいうことしてほしくないな、
なんてきみが言うから。
どうして、なんで、教えてよってねだれたらいいのに。
わかった、と。いい子のふりをする。

この関係はいつまで経っても平行線。
脳裏に映るのはいつまでも、あの日のまま。


【脳裏】

11/8/2023, 11:10:30 AM


恋が淵

この胸に巣食う情愛をどう伝えればいいのでしょう。
この眼に映る切なさをどう切り取ればいいのでしょう。
この口に灯した言葉はどうしても消えてしまうのです。

突いた指先に、
緩く弧を描く柔らかな首筋、
見上げられたその瞳は私の心の臓を射抜いてしまう。

守りましょうあなたがそう言うのなら。
叶えましょうあなたがそれを望むのなら。
この身などとうにあなたのものなのだから。

ただ一つだけ、
わたしの望みを聞いてくださるのなら。
願わくば、願わくば
そばにいて微笑んではくれませんか。

その柔い頬に口付けることなど望みません。
その暖かな眼差しを向けられようなど思わないのです。

わたしが囁くのは意味のない言の葉だけ。
少しの色を乗せた心のうちを
あなたが知ることはないでしょう。
それでいいのです。それでよかったのです。
ただそばにある事だけが私のすべて。


【意味のないこと】

11/7/2023, 1:13:54 PM


初恋心中


恋をしました、切ない恋です。
恋をしました、叶わない恋です。
恋をしました、触れられない恋でした。

憧れは永遠に叶わないものと、ある人はいいました。
それでも一目逢えるだけでよかったのです。
微笑する姿を見れたらそれだけで幸せでした。

覗き込むあなたは美しく、綺麗で、儚い。

閉じ込めておきたいくらいの瞬間が今もまた
生まれては消えていく。
焚かれた光に切り取られた永遠が
わたしを生かすのです。

今日も、明日も、明後日もずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと、、、、あいしているのです。

おねがい、わたしをみてあいしてくださいおねがいします、でないとわたしはきっときがくるってしまうにちがいないのです、

「あなたが、」

頭の中で鈍い音がします。重い重い鐘のような音です。
目の前が真っ暗で何も見えないのです。
あんなに目に焼き付けたあなたの顔も見えないのです。

どうしてでしょうか、
ここは真っ暗でなにも、
見えないのです。


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「...、恋とは呼べない代物を耳障りのいい言葉でコーティングして人に押し付ける気持ちはどんなものだろうね?醜くて反吐が出ると思わないか、押し付けられた方の気持ちを全く考えていやしない」
「恋とは身勝手な自己愛ですよ、恋に焦がれた乙女ほど傍若無人な人間はいません。それこそこの方のように、ね」
「憧れは憧れのままで、美しいものは美しく誰も害そうとしなければ世の中はもう少しマシになると思うんだが。そうは思わないかい」
「全世界の人間がそうなってしまったら、世の中つまらなくなりますよ。それこそ娯楽が減ってしまうかも」
「干渉しようとする気持ちが発展だと?」
「他者への興味関心という点だけでいえばそうかもしれませんね、」
「...暴論だ」
「局地的な個人の感想だと思っていただいて結構です。それで、どうするんですか」
「どうもしないが、あれはあれで終わってる。もう何もできないさ」
「一瞬見ただけで終わるなんでぼろい商売ですね、尊敬します」
「そんなやつについてきてるきみも大概物好きだと思うが、」
「私は好きなので」
「ーーーーー、が。か」
「ええ、ーーーーーですから」
「.....物好きだな」

〇〇年ー月ー日 某マンションの中にてこれを記す。



【あなたとわたし】

11/6/2023, 1:40:51 PM

幸福世界

「ごめんなさい」
丸いビー玉のような瞳から雫が落ちて頬を伝う。
まるで泣いてるようだときみが笑った。

僕だけを写したガラス玉が音を立てて砕けて、
宝物は粉々になって散ってしまった。

2度と手に入らない宝物は誰のためにあったのだろう。

「許してなんて言わないよ、」
雨は今日も降り続けたまま、
きみを覆い隠して連れ去ってしまう。


【柔らかい雨】

11/5/2023, 3:04:57 PM

水槽に溺れる


「ねえ、」

なにしてるの、薄く開いた唇がそう言った。
なんでもないよ、と答えた視線の先で髪が揺れる。

小さな顔を縁取る黒。
綺麗に整えられた白の制服。
そこにいるだけで発光するようなきみ。

伸ばされた腕が白く浮かび上がる。
その手に触れることさえ、戸惑うほど鮮明に。

そっと伸ばした指を絡めて、
心臓の音を聞いて欲しかった。

「すきだよ」

その声が震えてたのはなんでかな。
もう答えなんか聞けるはずもないけれど。

溢れるほどの光の中で
きみだけがぼくを愛さなかった。


【一筋の光】

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