水槽に溺れる
「ねえ、」
なにしてるの、薄く開いた唇がそう言った。
なんでもないよ、と答えた視線の先で髪が揺れる。
小さな顔を縁取る黒。
綺麗に整えられた白の制服。
そこにいるだけで発光するようなきみ。
伸ばされた腕が白く浮かび上がる。
その手に触れることさえ、戸惑うほど鮮明に。
そっと伸ばした指を絡めて、
心臓の音を聞いて欲しかった。
「すきだよ」
その声が震えてたのはなんでかな。
もう答えなんか聞けるはずもないけれど。
溢れるほどの光の中で
きみだけがぼくを愛さなかった。
【一筋の光】
11/5/2023, 3:04:57 PM