hot eyes

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4/19/2025, 3:19:30 AM

紫色の髪の男が目を開けるとそこは、何もないただ白い床と空間が広がっていた。

なんだここは?

男が辺りを見渡すと、一人の少年が立っていた。
「初めましてー何年ぶりでしょうかー」
その少年は軽くお辞儀をして近づいてきた。声の伸び方からして、面倒3割と好奇心5割と渋々2割といったところだろう。

「君は俺が小学生の時以来だから、何十年と時が経ってるのか。時間の流れって残酷だよね」

やれやれ、と肩をすくませる。
「玲人(れいと)には間違えちゃったけど、君が一番最初の創作者なんだよね。あとから気づいたよ。なんなら氷華(ひょうか)の前に君を含めて、既に四人いただなんてね...ミスだよミス」
申し訳ないねぇ、と謝ってくるがなんだかこの話は本題では無い気がする。

「...勘の良い君なら気づいてるよね。だって仕方ないだろ!?君の初期設定は紫の髪のクールな男としかなかったんだから!」

くわっ、と少年は食って掛かる。
「それに名前も洋風だったんだ。俺の話には和名が必須だからね。おっと、例外もいるがそれはそういう設定だからだよ。でも君は外国人じゃないでしょ?」

男はどこかで聞いたことのある喋り方だと気づいた。

もしかして...『    』?
「お、マジか。気づいたんだ...凄いね!流石クールな男!頭脳派って設定も追加しておこう」
『    』はここで何を?
「番人かつ代理かつ『    』をしてる。まぁ要はあの人からの通信手段ってとこだよ。今はどうでもいいけど君の和名まだ決まってないから、通り抜けは不可なんだ。すまん。今頑張って考えてるから待ってて」
和名ってどんな?
「んー、君の名前を当て字にすると月花になるからそれ関連でいくつもり。決まってないから変わるかもだけど」

そこまで言うと少年は近づいて男の肩を叩く。
「まぁ君の友達もまだだからその時は一緒に連れてくよ。なんなら馴染みのある葉瀬(ようせ)の近くに転生させてあげよう!」
なにやら一方的に話が進んでいくが、止める気力はなかった。

「今日はこのくらいにしておこうか。じゃあまたね。会える日を楽しみにしているよ、ルカ」

少年がそう言って手を振ると男の視界は段々と暗くなっていって、遂には意識そのものが閉じ込められたようだった。


お題 「物語の始まり」

4/14/2025, 9:56:39 AM

「藍佑(あいすけ)見て、サクラだよ」
行きの朝日。いつもの道で偶然会った山吹(やまぶき)と一緒に二人で登校していた。
山吹が指を指しているところに目を動かすと、桃色の花弁達がちらちらと舞っているのが見えた。
「サクラ綺麗......もう春だね」
「ふーん...」
藍佑は興味が無さそうに、ゆったりとした口調で答える。山吹は藍佑がサクラに興味を持たなくても気にせずサクラ達を見つめる。

山吹は舞うサクラに風情を感じていた。
(...あ)
舞い落ちてきたサクラの花弁が一枚、藍佑の頭の上に乗った。山吹はそれを取ろうと藍佑の頭に手を伸ばす。
「...っえ...!?」
藍佑は伸ばされていた手に気づくとビクッと肩を震わせて体を固めた。
目はきつく閉じられ、がたがたと震わせる。まるで早く終わってくれと言わんばかりに。

「.........」

山吹は軽く髪を触り、サクラをはらりと落とした。
「.........?」
「サクラついてたよ」
藍佑はそれを聞いてそろりと目を開ける。
「...どーも」
「急に触ってごめんね、びっくりしたよね」
「別に......悪気があった訳じゃないし、気にしなくていい」
藍佑はなんでもないような顔をする。
「...はぁ、そんなに心配しなくていい」
「ボク何も言ってないけどな?」
「顔が言ってる」
すん、とした顔で山吹のことを指す。
「藍佑が嫌だと思ったことは、したくないからね」
「もう気にしなくていいんだけど...」
「ボクが気にしちゃうんだよ。大事な友人だからさ」
「そう...」
藍佑は少し俯いて考える。するとポケットからスマホを取り出して時刻を見る。
「そろそろ時間まずいんじゃない?かの学級委員長が遅刻なんて面目丸潰れでしょ」
「おっと、確かにまずいね!早く行こうか!」
「うん」
山吹と藍佑は軽く走り出す。

(...僕はまだ、委員長のことを信じれてないんだな)

と藍佑は前を走る山吹の背を見て追いかけていた。

お題 「ひとひら」
出演 藍佑 山吹

4/5/2025, 8:52:41 AM

「おっ、咲いてる!いえーい」

ぴーすぴーーす、と桜にチョキを作ってるのは俺の恋人である葉瀬(ようせ)だ。今日、買い物の帰り道に近くの川沿いを通ってみると桜並木の桜がちょうど咲いて散っている頃だった。
下を見ると散り落ちた桜の花弁が張り付いていた。上を見ると、薄桃色の花弁がひらひらと舞い落ちてくる。
綺麗だな、なんてぼんやり思っていると葉瀬が話しかけてくる。

「恋愛漫画とか小説にさ、恋人達が桜見てて急に『君が......桜に拐われちゃうと思って...』って言うシーンあるよね~」
「確かにあるよね」
「ね!玲人(れいと)も拐われとく?」
「なんでそうなるんだよ。阿保か?」
「阿保じゃない!私だって体験してみたいんだよ!桜拐われを!」
「なんだその名称。それに俺は体験したいわけじゃない」
「えぇー私、玲人に『君が桜に拐われちゃうと思って...』って言いたいんだけど~」
「やっぱ阿保だ」
「阿保じゃないーーー」

むー、と葉瀬が不満そうにしていると突然、ビュォワッ!と勢いよく風が吹く。「うわ!!」と葉瀬と俺は真横からその風を食らった。
「わぁぁ!」
「わっ!」
髪は荒れて手で直そうとするも、風に弄ばれてしまう。

風が強く吹いたせいか、桜の花弁が風に舞って降ってくる。
「わ、あはは!綺麗!」
葉瀬は桜を見上げて笑う。その声が花弁に混じって少し遠く聞こえる。

葉瀬が髪を耳にかける時、桜が彼女を包み込むように降ってきた。

刹那。

「うおわっ!!ビックリした~!急に掴んだら危ないじゃん!」
「...ごめん」
俺は気づいたら葉瀬の手首を掴んでいた。

「......もしかして、私が桜に拐われちゃうーって思った...?」

ひょい、と葉瀬は俺の顔を覗き込んだ。俺は無言を貫く。
「え、本当に?」
彼女にはそれが肯定に聞こえたらしい。
「......大丈夫だよ。私はここに居るから!拐われてないでしょ?ほらぁ~見えてるでしょ~幽霊じゃないでしょ~」
ほらほら、と掴まれている腕をブンブン振る。それでも俺は離していない。
「...葉瀬さ」
「ん?何?」
「俺が手、離そうとしたらどっか行くでしょ」
俺がそう言うと、葉瀬はぱちくりとまばたきをする。
「...ぃや行かないけど?それに、行くってどこに行くんだよ。買い物したのに」
「違うわ。葉瀬、俺が手離したいって言ったら頷いて離れるよね」
「?......葉瀬ちょっとよくわかんない。ギャッ!力強!!」
少しムカついて手首を握る力をちょっと強くすると、葉瀬は驚いたのか手首をブンブン振って離れようとする。強くしたと言っても離れにくくしただけなので手首に跡はつかないだろう。

「もう......心配し過ぎよアナタ!それに私が玲人の目を盗んでどっか行くとか無いからね!?」
「......そっか」
「うん!だから離しぃや!」
「...それはやだな」
「わっつ。信頼されてない?」
「そういうことじゃなくて、その......今は、手繋ぎたいなって...」

そう言うと葉瀬は無言になるが、再び口を開く。
「なら、ちゃんと繋ぎたいから一回離して?」
俺がパッと手を離すと、葉瀬が俺の手をぎゅ、と握ってくる。
「んふ、可愛い。そろそろ帰ろ!」
そう言って葉瀬は俺の手を引いて帰路へつく。

俺も肩を並べるようにちょっと一歩踏み出して歩き出した。

お題 「桜」
出演 玲人 葉瀬

3/11/2025, 10:43:54 AM

時刻は午前8時半。そろそろ授業が始まるが、藍佑(あいすけ)は教室とは反対の方向に歩いていた。教室にいても、なんとなく居心地が悪い。今は、誰かに何かされているわけでもない。
しかし過去を思い出すと、どうしても教室に居るのが苦手だった。
ぽりぽりと首を搔きながらゆったりとした足取りで校舎裏へと歩いていこうとした。

「おや?どこへ行くんだい?教室はあっちだよ!」

ゆっくりと視界を動かすと目の前には、自分より少し背が高く、腰に手を当て通せんぼのように立つ髪の短い男子が居た。
「今から授業だろう?一緒に教室へ行こう!」
キラキラと目を輝かせて藍佑の目の前に近づいてくる。
「...僕、体調悪いから保健室行こうと思って」
「それは大変だ!ボクも一緒についていくよ!」
「あ、いや一人で行けるから」
「油断禁物というだろう!途中で倒れたら誰にも助けてもらえないぞ!」
「大丈夫だから...僕行くね」
藍佑はすっ、と右に避ける。すると、彼も右に避ける。
今度は左に避ける。すると、彼も左に避けた。
藍佑は彼の顔を見る。
「すまないね!偶然君と同じ方向に避けてしまう!」
悪気があるのか無いのかなんてすぐにわかる。

(コイツ、わざとだな)
「...退いてよ。僕通れないんだけど」
「すまない!ボクも避けたいのだが同じ方向になってしまってね!」
「はぁ......そこ動かないでね」
藍佑はそう言って横に避けようとすると、彼は、すっと前にやってきた。
「...そこ動くなって...」

「本当に退いてほしいなら、押し退けてでも行けばいいんじゃないかな?」

藍佑が怒りに任せて言葉を放とうとした時、彼は涼しくそう言った。
先程声をかけられた時と変わらない、その目で。
「......そんなことしたら、怪我するよね。わかるでしょ」
「退いてほしいんだよね?」
何故そうしない?と彼は少しだけ、詰め寄るように言った。
「...だからって押すのは...」
「君には出来ないんだよね」

だって、君は優しい人だから。

「君は優しいから見ず知らずでも、ボクに怪我をさせたくないんだろう?優しいね。君は人の痛みがわかるんだ」
藍佑は音が止まったかのようだった。面食らったってこういうことを言うんだと、そんなことを思ってしまった。
「でも大丈夫、安心してくれ!ボクは押されても動かない!試しに押してみてくれ」

藍佑は急に世界に戻された。押す?

「...押す...?」
「そう!」
おいでと言わんばかりに腰に手を当てて立つ。

恐る恐る肩の辺りを押してみるがびくともしない。両肩を押しても動かない。肩を入れて踏ん張ってみたが動かない。
体全体で押しても一歩も動いてくれなかった。
「...っえ、岩?」
「ははは!ボクはバスケ部に属していてね、体幹を鍛えているんだ!凄いだろう?」

胸に手を当ててドヤ顔をしている彼をちょっとだけムカつく顔だなと思ってしまった。しかし同時に、こんな岩みたいなやつもいるんだなと少し面白いと感じてしまった自分もいた。

「さて!これだけボクを押す力があるなら元気だよね!」

パチン、と両手を合わせ、藍佑を見つめる。しまった、と気づいた時にはもう遅く彼の手は藍佑の手をガッチリと掴んでいた。
「教室に戻ろう!これから君と隣で授業を受けられるなんて嬉しいよ!」
「は、隣?え、ちょ、離せって.........力強ッ...!?わ、は、離せってぇぇ...!!」
藍佑は脱出を試みるが彼の力は強く、ずるずると引きずられていく。

「これからよろしくね、藍佑!ボクの名前は山吹(やまぶき)!学級委員長だよ!」
「そんなの知らなくていいよおぉぉ」

しばらくすると学校内で、問題児が学級委員長に片手で引きずられていった話が広まっていった。

お題 「星」
出演 藍佑 山吹

1/19/2025, 9:45:23 AM

吹雪と夜には分かり合えないことがある。

夜は一人、外へ出て大木に腰掛け、吹雪(ふぶき)が以前所持していた円盤に描かれた星空をくるくると回す。
調べたところ、これは星座早見盤というものらしい。指定された日時に見ることの出来る星座や星の位置を確認するための図らしい。今は地球からうみへび座やおとめ座が見えると記されている。

吹雪はこれを、熱心に眺めていた。

夜(よる)は地球から見える星座を見て、何になるのだと聞いたことがある。
吹雪はそんな夜に、自分は有意義よりも娯楽を取る派なんだ、と伝えた。

結局、夜は最後まで意味がわからなかった。
夜にとってはここから見える星を記した方が面白いはずだと思っていたから。

「............」

吹雪は夜の娯楽を分かっていなかったわけではない。しかし、これを娯楽だと言った。きっと吹雪にしかわからない娯楽なのだろう。

吹雪に聞こうにも、もう聞くことができない。

切れた電線は繋がらない。

吹雪と夜はまだ分かり合えないのだ。


お題 「手のひら宇宙」
出演 夜 吹雪

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