「なぁ、そういえばなんで委員長は僕に構ってるの?なんか接点あったっけ?」
「いや、無いよ」
山吹(やまぶき)は唐揚げを口に放り込み、何食わぬ顔で答える。
「え?じゃあなんで僕に構ってるわけ?」
「............君が、綺麗だと思ったからだよ」
山吹は口の中の唐揚げをよく噛んで飲み込んでから藍佑(あいすけ)の質問に答えた。
「絶対嘘だ」
「嘘じゃないよ」
「いや今適当に考えたでしょ。どこをどう切り取って僕が綺麗になるんだ。顔だって良いわけじゃないし」
「顔も綺麗だと思うよ」
「ゴブッ!.........委員長もしかして目悪い?」
「いや?視力はいつも2.0だよ」
「それも嘘っぽいな」
コイツふざけてるのか?と藍佑は段々疑い始める。
「そんな目で見られても事実は変わらないよ?」
「はぁ...?」
眉を潜めてご飯を食べ進める藍佑を横目に、山吹はあの日の出来事に想いを馳せる。
なんてことない秋晴れの日の午後、山吹は委員会の用事があって廊下で話をしていた。
「...であるからして...___...」
「......うん、園田さんの案でいこうか。準備なんだけど、買い出しは...」
「それなら鈴木くんが請け負ってくれるみたいだよ」
「そっか。なら大丈夫だね。それで続きなんだけど...」
「あ、ごめん。時間大丈夫かな?ちょっと見てもらっていい?私目が悪くて...」
「わかったよ。えっと時計は...」
キョロキョロと辺りを見渡すと、ちょうど廊下にあるではないか。
そして向かいから誰か歩いてくる。誰だろう?
ふわふわとした深い藍色のロングヘアー。
白く滑らかな肌。
光を反射するような青く深い瞳。
下に向けられた黒の睫毛。
「どうしたの......あっ」
ボーッと見つめる彼を不思議に思い同じ方向に視線を向けるが、園田はサッと目を反らす。
「ちょ、見ちゃダメだって...!」
園田は注意するが彼は目を反らせない。
瞳の中は青く深海のように輝いていて、キラキラと差し込む午後の光を反射する様はまるで眠る宝石のようだ。
ふるりと睫毛は、そんな深海を隠すように揺れる。
ゆらりと揺れた深海は、閉じられて見えなくなってしまった。
そして藍色の、カイヤナイトのようなふわふわとした髪が揺れて去っていった。
(...綺麗だ)
「...今目合ったよね...?どうしよう...!」
「......彼は、誰なの?」
「知らないの!?高校で結構問題になってるって言われてる人だよ。なんか噂では校舎裏でよく他校のヤンキーと喧嘩してるんだって...!」
「...名前は知ってる?」
「名前?なんだっけ......わかんないけど、近寄んない方がいいよ!今だってこっちのこと睨んでたし...どうしよう何か言われないよね...?」
山吹は慌てる園田を心配もせず、ただ彼の去った廊下をじっと見つめていた。
そして今。
目の前に座る藍佑を頬をつきながら見つめる。
「.........やっぱり綺麗だね」
藍佑は眉を潜める。
「何が」
彼は、ははっと優しそうに笑いかけて言った。
「今日も君が、綺麗だなって思ってね!」
お題 「青く深く」
出演 山吹 藍佑
Q.あなたの子供の頃の夢は?
「え、私?んー、ケーキ屋さんだったよ!私アレルギー持ちだからアレルギー無しのケーキ作って売りたいって思ってなぁ。結局ならなかったけど~」
「俺はー...服作る人になりたかったな。俺、可愛い服とか好きだったからこういう服着たいって、暇な時描いてた。今はファッション関係の仕事に就きたいとは思ってる」
「俺?......んー!なんだっけ?サッカー選手とかだったなぁ、サッカー好きだった!大きくなるにつれてしなくなったけどまた皆集めたい!よし、あの三人誘って、しよう!」
「私は、お医者さん。それは今も変わらないよ。うん、それで構わない.........本当はもう違うことしたいけど、そんなこと言ったら困らせちゃうからね」
上記を踏まえた上であなたの解答を書きなさい。
A.
お題 「子供の頃の夢」
出演 葉瀬 雪 海斗 優雨
「...んー、たぶんこっちだ!」
「あっつ......おい本当に近道なのか?5分で着くって言ってただろ。もう15分くらい歩いてんぞ」
「俺の記憶ではすぐ着いたはずなんだけどなぁ、ミスってたらめんごー(・ω<) テヘペロ」
「許すわけないだろ、こんな暑い中歩いて」
真人(まひと)はパタパタと服の間に空気を入れる。いつも歩かない道というのと他人に案内されているせいで不安でしかない。
草木が生い茂る道を彼の後ろを歩いて進む。
「あっ、出口!」
そう言って彼が指を指した先は、確かに道が出来ていた。
「やっとか...」
「よっしゃよっしゃ!これで帰れる~」
そう言って林を抜けた先には。
「.........は?」
どこかも分からない田んぼが広がっていた。
「...おい陽太(ひなた)」
「真人クン!めんごー!☆」
「めんごー!☆じゃねぇよ!!どこだここ!!」
「陽太クン分かんないナァ(・ω<) 」
「お前が連れてきたんだろ!マジでどうやって帰るんだよ......」
「来た道帰ればラクショウ!✌」
「お前のその冒険者みたいな思考を今すぐ捨てろ」
「ええ~そんなコト言わないでよぅ🥺まぁ歩いてたら家帰れるっしょ!」
「こういうのはまず現在地を確認して...っておい行くな!!」
陽太は真人の制止も聞かずに元いた林に足を踏み入れた。真人も慌てて陽太を追いかける。
しばらくして、二人はなんとか家の近くまでこれたとさ。
お題 「記憶の地図」
出演 真人 陽太
うまくいかない日は誰にでもあると思っている。
牛乳を買い忘れたり、傘を持ってないのに雨が降ったり、なんでもないところでつまづいて転んだり。
今日はきっとそんな日だったのだろうと。
だから。
「藍佑(あいすけ)のマグカップ割っちゃったんだ...」
手が滑るなんて普段しないことをしてしまうんだよ。
「え、大丈夫?怪我してない?」
「大丈夫だけれど......ごめんね。折角ルームシェアする記念に買ったやつなのに...」
足元には大小様々に散った破片があった。
「あー...まぁ、そういうこともあるよね。新聞と軍手持ってくるよ」
そう言って彼は後ろを向く。
ペアとまでは言い難いが色違いの二つの物が壊れるといい気がしない。しかも相手の物だと尚更。
「............」
割れた藍佑の青いマグカップを見て、ボクもいつかこんな風に壊してしまう時が来るのだろうかと柄にもなく考えてしまった。
何か間違えた時、今まで積み重ねてきたものが急に無くなった時、こうやって彼はボクの手によって割れてしまうのかと。
そんな風に考えてしまうのは、ボクが彼に友人以上の感情を抱いてしまっているからで__...
「山吹(やまぶき)」
ふと我に返って顔をあげるとそこには、色違いのボクの黄色いマグカップを持った藍佑がいた。
「...藍佑?」
藍佑はそれを手から離す。
次の瞬間、部屋にガチャンッ、と割れた音が響いた。
藍佑はボクのマグカップを、その割れたマグカップの上に落としたのだ。
驚いて下を見ると、ボクのマグカップも藍佑のマグカップ同様割れていた。
「ほら、これでおあいこ」
藍佑は何気ない顔でそう言うと割れた二つのマグカップを片付け始めた。
「後で新しいの買いに行こ」
そう言う藍佑の表情は、マグカップに注がれていて読めなかった。
ボクも、どういう事を思っていいのか分からなかった。
しかしわざとマグカップを割ったのには流石に、危ないよと伝えた。
お題 「マグカップ」
出演 山吹 藍佑
「どうして、俺達は列車の中に居るんですか?」
俺は目の前に座る車掌さんに話しかける。
深く帽子を被っていて、その表情は読み取れない。
「...どこか停まったりしないんですか?」
..._____...沈黙。
(この車掌話す気あるのか?)
話しかけたのだから返してほしいものだ。無視は良くないと思う、俺はね。
「...あのー...」
「あの人は人生を列車か何かだと思われてます。前の車両に行くほど新しくなり、後ろの車両に行くほど古くなります。最後尾の車両は世界が歪んでいるため入れません」
「...ということは、あの人って人の中に俺達が生きてるってこと?」
「どうなのでしょうか。詳細は知らされていません」
俺はふと窓の外を見る。
雨が降り始めた。
お題 「どうしてこの世界は」