hot eyes

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6/10/2025, 9:23:20 AM

「どうして、俺達は列車の中に居るんですか?」

俺は目の前に座る車掌さんに話しかける。

深く帽子を被っていて、その表情は読み取れない。

「...どこか停まったりしないんですか?」

..._____...沈黙。

(この車掌話す気あるのか?)

話しかけたのだから返してほしいものだ。無視は良くないと思う、俺はね。

「...あのー...」

「あの人は人生を列車か何かだと思われてます。前の車両に行くほど新しくなり、後ろの車両に行くほど古くなります。最後尾の車両は世界が歪んでいるため入れません」

「...ということは、あの人って人の中に俺達が生きてるってこと?」

「どうなのでしょうか。詳細は知らされていません」

俺はふと窓の外を見る。

雨が降り始めた。


お題 「どうしてこの世界は」

6/6/2025, 6:38:25 AM

道を歩いていると、綺麗な水溜まりがあった。

水溜まりにはカーブミラーと空が映っている。

曇り空の背景にカーブミラーに映った青空が

とても綺麗だった。

お題 「水溜まりに映る空」

6/4/2025, 3:33:37 AM

「忘れないで」

そう言って手渡されたのは僕と雪(ゆき)の写った一枚の写真。

僕は雪からの贈り物を、大事に胸にしまっていた。


最後の最後まで。



「...____機体008号の停止を確認。機体017号業務を引き継ぎます」

目の前で動かなくなった機体008号、名称「吹雪(ふぶき)」。停止原因は機体の劣化と思われる。
不法投棄防止のために吹雪を担ぐ。


その時何か紙が落ちた。


色褪せた写真だった。


拾い上げてみると、そこには吹雪とその製作者と思われる人間が写っていた。


お題 「約束だよ」
出演 吹雪 雪 夜

5/17/2025, 1:55:05 AM

「葉瀬(ようせ)」
「ん、何?」
「俺はその玲人(れいと)さんって人知らないけどさ、葉瀬のこと結構好きだと思う」
「...ん?何急に」

「告白、諦めてんだろ」

雪(ゆき)のその一言でテーブルの空気がスッと止まる。周りの話し声がやけにうるさくて、自分が一人世界に取り残されたようだった。

葉瀬は口をつけかけていたビールジョッキを机の上にゴトン、と置いて目を逸らす。
「...だって、玲人のタイプは私じゃないんだよ」
「タイプとか関係無いし。俺が海斗(かいと)に告白の返事する時とおんなじこと言ってやろうか」
「いや聞きたくない」
「『好きなんでしょ?なら好きって言っちゃえばいいじゃん!』『絶対大丈夫!言え早よ!付き合え!』」
「あぁ~~聞きたくない~~~」
葉瀬は耳を塞いで机に突っ伏した。

「雪の鬼ぃ...悪魔ぁ...人でなしぃ...」
「なんとでも言えよ」
「.........だって雪と海斗は、もう海斗が雪に告白してその返事だったじゃん...」
うぅ...とお酒のせいで涙腺が緩んだせいか目に涙が浮かんでくる。
「じゃあ俺が二人のこと両想いかどうか見ようか」
「......いやそれは駄目。玲人は雪のタイプまんまじゃん。年上で危ない...危ないのかな...?とにかく駄目」
「俺、一応彼氏いるんだけど?」
「それでも来るものがあったらヤダァ!」
イヤァァ、と今度は頭を抱える。

「......もしフラれたら、私諦めきれないよ。ズルズル引きずりたくない...だからやだ」
「............葉瀬、いざとなれば手放す勇気も必要だぞ」
「それが無いから告白したくないのぉー」
「大丈夫だ。もし引きずるようならさ、もう一回告白すればいいだけだ」
「......またフラれたら?」
「その時はその時だ。とりあえず当たって砕けろ」

葉瀬はその言葉を聞いてまた唸る。

いつか彼女が、手放してしまう恐怖よりも誰にも取られたくない独占欲が勝った時、やっと気持ちを言えるのだろうと雪は気づいた。


お題 「手放す勇気」
出演 葉瀬 雪 玲人(名前のみ) 海斗(名前のみ)

5/13/2025, 9:25:55 AM

「ただいまー」
「お。......おかえりんごスタ~★」

葉瀬(ようせ)は声を聞くと玄関へと向かい、帰ってきた玲人(れいと)を出迎えた。
「これ、引き出物。飴らしいから後で食べよ」
「飴ちゃん~」
今日、玲人は学生時代の数少ない友人の結婚式に出席していた。そして引き出物は飴らしい。

玲人が服を着替えてソファに座り、葉瀬は飴を口に入れながら結婚式の話を静かに聞いていた。
「それでね!新婦さんめっちゃ綺麗だった!新郎の......あ、俺の友達な。その新郎がサプライズで手紙俺達に読んでくれてさ、感動した~」
玲人が嬉しそうに話すのを、葉瀬は時々相槌を打って聞く。

「なんか......結婚っていいなぁ、って」

玲人がポツリと呟く。葉瀬は「じゃあ結婚する?」と言い続ける。
「まぁ、その前にプロポーズだよね」
スッ、と葉瀬が玲人の手を取って目を閉じて、手の甲に軽く口づける。

唇を静かに離し、玲人の目を見る。

「ただ玲人だけを見てると誓うから、私と結婚してくれませんか」

「はい」

玲人は考えるよりも先に承諾の言葉が口から出た。一瞬、部屋に静寂が訪れる。
「......へ。え、嬉しい。え、えー!?ちょっと待って!言っちゃった!!待って綺麗な夜景とかなんか見えるとこで雰囲気作って言おうと思ってたら!!わあぁ!?」
葉瀬は顔を真っ赤にして心が追いつかないのか言葉を発してなんとか気持ちを落ち着かせようとした。

「待って待って待って、もう一回していい!?その...めっちゃカッコよく言いたい...!」
「今でも、十分カッコよかった、よ?」
「ぐっ...!そうなのか......」
「......じゃあもう一回は、俺が言っていい...?今のは俺が承諾したから、今度は葉瀬からの承諾貰いたい...」

話していく内に玲人も段々顔が赤くなっていく。
「が、頑張って今年中には言うから...!」
「ぁ、ぇ......わかっ、た...」


葉瀬はこれからいつ玲人にプロポーズされるか、ドキドキしながら過ごす日々が始まるのだった。


お題 「ただ君だけ」
出演 葉瀬 玲人

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