母の声を最後に聞いたのはいつだったか。
病院のベッドに横たわっている母の手を握りながらそんな事を考える。
母が倒れたのは1年以上前の事だ。
倒れてから一ヶ月くらいは普通に話していた。
一ヶ月経つと次第に呂律がまわらなくなって母は喋ることをやめた。
母が話さなくなったのは私のせいでもあるだろう。
なんて言っているかわからない。
話を聞くのが面倒くさい。
まるで高齢者を相手にしているようで苛ついて苛ついてしょうが無かった。
そんな態度が表れていたのだろうか。
母は眉をひそめ、黙り込んだ。
倒れた直後は心配で毎日病院に通っていたのに、今では週に一回程度になった。
とにかく面倒くさかった。
あの母のなんとも言えない、何も考えていないような、悲しんでいるような、そんな目を見たくなかった。
家でくつろいでいると電話がかかってきた。
母からだった。
どういう事だろう。
とにかく私は急いで電話に出た。
「もしもし?」
「もう、だいりょうぶだひゃら」
大丈夫だから?
「なにが?」
途端に電話が切れた。
意味がわからなかった。
なんとなく気持ち悪くて病院に向かった。
病院のベッドにはちゃんと母が寝ていた。
何だったのだろう。
母の顔を覗き込んだ。
しわくちゃで、元気だった頃の見る影もない。
母は眠っていた。
安らかに。
そう、まるで…。
気づいたとたん私は急いでナースコールを押した。
遠くの声
わざわざ読んでくださりありがとうございます。
最初電話の話書こうかと思ったんですが、会話が多くなりどっちが話しているのか分かりづらく、書き直しました。
※蝶の事はあまり詳しくないので間違ってるかもしれません。
風がふいて花が揺れている。花の匂いはそこら中に満ちていた。あぁ、なんて幻想的。まるで夢のよう。私は今本当に生きているのかしら。試しに自分の頬を軽く引っ張った。引っ張ったところは少し痛い。大丈夫。ちゃんと生きてる。でも、ここが天国なら良かったのに。
ちょうどいい日差しにちょうどいい風。少し寝てしまおうか。身体を倒して草の上に寝転がった。なんて気持ちいいんだろう。少しうとうとしていると、この場にはあまりに場違いな一匹の蝶を見つけた。
翅の模様はとても綺麗なのにその翅が一枚しか付いていないのだ。何ということだろう。蝶は重い自分の体を一枚の翅で一生懸命支えながら飛んでいた。少しふらつき地面につきそうになりながら一心不乱に花に向かって飛んでいた。ボロボロになった片方の翅を見てあまりの痛々しさに目を背けた。
蝶とは反対向きに寝転がり目を閉じる。それから少しするとあっと言う間に夢の中へ落ちていった。
嫌と言うほど甘い匂いで目が覚めた。一体どれくらい寝ていたのだろう。身体が痛くて喉がからからだった。しかしまだ日は落ちていない。はたして私はその次の日になるまで寝ていたのだろうか。まぁ、何も言うまい。なぜなら私は自由だから。
そう言えばあの蝶はどうなったんだろう。あたりを見渡せどそれらしき姿は一向に見つからない。どこか遠くに飛んでいったか、はたまたどこかで力尽きたか。どちらにせよ私には関係のないことだ。
それでも、気になることには気になる。時間は沢山あるのだ。こんな暇つぶしも悪くない。試しに私は一番近くの地面から用心深く草をかき分け蝶をさがした。
何時間か経った頃。とうとう私は蝶を見つけ出した。蝶は草の上にひっそりと落ちていた。もはやそれは生き物では無い。あんなに美しかったもう一枚の翅すらも見るも無惨にボロボロになっていた。きっと何かから逃げてきたに違いない。小さな体はズタズタだった。
私はそっと、その蝶を穴の中に埋めた。それからふと、この蝶が最後に見た、最後に思ったことは何だったのか考え始めた。
ひとひら
読んでくださりありがとうございます。
書き方変えてみました。
読みにくかったですか?(次は今までどおりに書きます)
あと、最後あっさりしすぎましたか?
久しぶりに書いたので、でも、前に書いたやつよりかは良いと思います。
それから、晴れて中学生になりました。
私は貴方に好意を抱いています。
私が貴方にこうして想いを告げるのも本来あってはいけない事なのかもしれない。
けど、私はどうしてもこの想いを隠していることに耐えられなかった。
大人しく身を引くことができなかった。
さぞかし迷惑でしょう。
ごめんなさい。
…明日、貴方が結婚する事を知りました。
王子と結婚するんでしょう?
なんで、教えてくれなかったんですか?
怒ってます。
かりにも私達は幼馴染なんですよ?
……私は別に王子と結婚することにたいして腹を立てているわけではありません。
貴方が私にお祝いさせる気がなかったことにたいして腹を立てているんです。
どうせ私がこうやって話をしなければ貴方は私に結婚する事を教えてくれなかった。
あの、一応もう一度謝っておきます。
ごめんなさい。
いまから言うことは忘れてください。
ん、ん゙ん゙ん。
私は!
あんな王子より何億倍も貴方のことを愛してます!!!
好きです!
大好きです!
好きだよ
読んでくださりありがとうございます。
これ、一応男として書きました。
ある時、一人の人間(博士)がロボットを作った。
そのあまりの出来栄えに本当に人間なんじゃないかと非難されることさえあった。
適当な時に涙を流し、笑い、怒り。
博士は世界中から称賛された。
そのロボットはどんなに高いところから落ちても壊れることはなく、水に浸かっても錆びることはなかった。
肌の感触も人間そのもので、博士は沢山の人間から作り方を教えるよう迫られた。
博士は固く口を閉ざし、ついには最期の時までその口から何かが語られることはなかった。
ロボットは涙を流した。
だが、ロボットの流した涙にはなんの思いもはいってはいなかった。
ただ目から液体を流したに過ぎなかったのだ。
ロボットは一人になった。
ロボットには何もなくなった。
何をするでもなく沢山の月日を座って過ごした。
一体どれほど時間が経ったのだろう。
誰かがロボットを見つけた。
あっという間に連れ去られ分解された。
ロボットは涙を流した。
だが、気持ちが悪いと途中で首も切断された。
その瞬間ロボットは活動を停止した。
ロボットの頬に涙が伝う。
まるで何かのワンシーンのようにゆっくりと。
ロボットの流した最後の涙には、はっきりとロボットを分解した人間の姿が映っていた。
涙
読んでくださりありがとうございます。
とくに書くこともないので何も書きません。
※フィクションです。
久しぶりに会ったおばあちゃんは私の事を忘れていた。
笑顔で話しかけた私に困惑した表情をつくり、丁寧な敬語で私が誰だか聞いてきた。
お母さんの事も覚えていないらしく、おばあちゃんは終始敬語だった。
泣きそうになったけど我慢した。
だって格好悪かったから。
家に帰って、お母さんの顔をみたら急に涙があふれてきた。
「おばあちゃん、忘れちゃったの?」
そう聞いた私にお母さんはただ涙を流した。
それから、私はこうも聞いた。
「お母さんも、忘れちゃうの?」
言葉に出したとたん、また涙があふれ出したのを覚えてる。
怖くて、不安でそれから私はふとした時に涙を流した。
お母さんと笑い合った日。
お母さんに叱られた日。
なんてこと無い些細な会話を。
それでもこんなに楽しい会話を大切な思い出を忘れられることが怖くて。
おばあちゃんみたいに、よそよそしくなっちゃうのが怖くて。
忘れてほしくなくて。
それから少しするとおばあちゃんは天国に帰っていった。
私はまた泣いた。
すごく大きな声で泣いた。
お母さんも、私も、それからお父さんも、友達もみんな天国に行くことを知ってしまったから。
怖かった。
忘れられることの何倍も恐ろしかった。
あれから沢山の時間が流れた。
いつの間にか就職できていて、結婚もしていて、子供もいて。
いつの間にか私が小さかった頃のお母さんの姿を思い出せなくなっていた。
どんな会話をしたかも、何があったかも。
それを自覚したときまた怖くなった。
楽しい思い出があるからこんな思いになるのだろうか。
忘れたくないと思うのだろうか。
泣きたくなるくらいつらい思いをしてまで楽しい思い出を増やすのは正しいのだろうか。
どうせ忘れてしまうのに。
記憶
読んでくださりありがとうございました。
同じことばかり繰り返していて読みにくかったですかね?