深い深い森の奥。
一点だけ開けたその場所で、彼らは歌う。
植物のために。
動物のために。
彼らは歌う。
他の生き物に囲まれて。
まるで優雅に、踊るように。
その歌は、森全体の季節の別れ目。
彼らが悲しい歌を歌ったら、木々は葉をふるい落とし、動物は皆、巣に潜る。
彼らが楽しい歌を歌ったら、誰もが楽しく嬉しくなってたちまち森に色がつく。
そんな生活はここ数年、終わりを迎えようとしていた。
「僕たち、もう終わりだよ」
そう言ったのは小人の白。
「そんな事言わないの、きっとパパ達が和解してくれるわ」
白の言葉にすかさず返したのは妖精のシルバーだ。
「少なくともこの国は終わりよ」
小人の黒も口を挟んだ。
「そもそも、こうなったのは全部あんたのお父さんのせいなのよ?」
シルバーが白を睨みつける。
「まぁ確かに、始まりは父さんのせいだけど、どうせ遅かれ早かれ見つかってたよ」
何があったか知りたい人のために手短に説明しよう。
森を開拓しに入ってきた人間に白の父親が見つかって捕まってしまった。
人間たちは、小人や妖精の存在と共に、その中に新しいエネルギーがあることに気がついた。
そうして今、沢山の小人や妖精が狩られている最中なのだ。
「最近、季節が止まったままの森もあるって聞いたわ」
シルバーは半ば泣きそうになりながら言った。
「このまま行ったら私達狩り尽くされちゃうに決まってる」
黒は頷きながら「大好きな四季も無くなっちゃうね」と言った。
「僕、狩られたくないよ…。生きたままバラバラにされるんでしょ?」
白の目からは、もう涙があふれ出ている。
「私の方が嫌よ!貴方達小人はいつか力尽きるけど、妖精はまわりのエネルギーを吸収して無限に回復するんだから、地獄みたい」
シルバーはそこまで言って泣き崩れた。
「かわいそうなシルバー、けれどそれは宿命ね。妖精になんて生まれてきたから」
黒はシルバーに冷たく言った。
歌
読んでくださりありがとうございます。
気が向いたら続き書きます。
始めての定期テスト、頑張ろうと思います。
やっと、やっとだ。
私は今日、地獄から解放される。
たった一人を殺しただけで約一億年も苦しめられた。
この地獄から。
今となっては全部が愛おしくさえ思える。
ああ、地獄の皆もさようなら!
名前も知らないようなやつらだったけど、お前らのおかげで孤独ではなかったよ!
あとは勝手に苦しんでくれ。
あぁ、楽しみだなぁ!
早く早く。
早く早く。
!
気付いたときには目の前にあのにっくき閻魔大王が座っていた。
「お前は今日から別の場所に行ってもらう」
「別の場所とは?」
「話を遮るな!!!」
「…ごめんなさい」
「ごほん!さて、準備をしろ」
「準備?」
「………話を遮るなと言ったよな?」
「……すみません」
「お前には別の世界に生まれ変わってもらう」
「生まれ変わる!?…ぁ」
「ん゙ん………そうだ。お前より酷いことをする親のもとに行ってもらう」
「え?天国に行けるんじゃないんですか?」
「お前の罪滅ぼしはまだ終わっていない。それと、終わったからといって天国に行けるわけではない」
「え、あんなに苦しい思いをしたのに?」
「お前は自分の罪を覚えているか?」
「人殺しでしょ?」
「…そうだ、分かっていて、本気で言っているのか?」
「一人だけだし」
「……はぁ、もういい、おい!!こいつを親の元に送れ」
「ちょっと待ってよ、そんな急に」
「最後に、こんな地獄よりも、もっとつらい思いをすると思うぞ」
「はぁ?」
昨日と違う私
読んでくださりありがとうございました。
地獄の設定とかも完全に私の設定です。
誰かが願う。
ー幸せになって欲しい
誰かが願う。
ー健康でいて欲しい。
誰かが願う。
ーもっと長生きをして欲しい。
空は拾った。
沢山の、他人のために願った願いを。
良いことを、沢山拾った。
広大な空が抱えきれないほどの願いを集めた時。
それは一斉に空に溶ける。
誰かのためになるように。
誰かが幸せになるように。
それが雨と一緒に地上に流れて、誰かの肩に当たった時。
誰かの優しい願いと共に、ちょっとだけ幸せになれるのかもしれない。
空に溶ける
かわいがっていたペットが目の前で亡くなった。
温かい感触が、脱力した体が、なんともチグハグで脳がついていけない。
まるで寝ているかのような、今にも目を覚ましそうな、それでも着々と冷たくなっていくその体をそっと抱き上げた。
柔らかい毛を頬に押し当てる。
私の体温で腐食が早まるのは知っていた。
もっと見ていたいなら、触らないほうがいいのは分かっていた。
けれど、自分の脳は自然とそれをよしとしない。
草のような、お日様のような匂いをめいいっぱい吸い込んだ。
綺麗すぎる死に顔はまるで生きているかのように錯覚させる。
呼びかけても、撫でつけても反応しないその姿で私はやっと、状況を飲み込んだ。
涙が溢れて止まらない。
まるであっけなかった。
今までの何年間が一瞬で終わってしまったことが、信じられなかった。
もう鳴かないことが寂しくて、けれども数日後には平然と普段の暮らしに戻ることに。
そんな自分が怖くてたまらなかった。
ペットは次の日に、自分の部屋の観葉植物の下に埋めた。
ケージはその日のうちに解体した。
本当に、跡形もなくなってしまった。
もしかしたら、明日平然とそこにいるんじゃないか。
そんな期待がよぎる。
数日後には、観葉植物が少し沈んでいた。
どうしても...
読んでくださりありがとうございます。
誰にも渡さないって決めていた。
触れさせないって決めていた。
そう、だってこれは大切なもの。
僕だけしか触れないもの。
誰にも絶対触らせない。
誰の目にも映らないように、引き出しの奥にしまっておこう。
王子様に連れられて、勝手にいなくならないように。
ー何してるんだ。駄目じゃないか、こんなことしたら可哀想だろ?この子だって生きてるんだ。
“僕以外”に触られた。
汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い。
…気持ち悪い。
ごめんね。
今洗ってあげるから。
…汚いなぁ。
ほんと汚い。
やっぱり自分で洗ってよ。
僕は見てるから。
僕以外の指紋がついた君なんか触りたくないんだ。
………やっぱりいいや。
別の子にする。
今まではほんとに可愛かったのに。
あーやだやだ、きったない。
どうせ洗ったって落ちないよ。
気持ち悪い。
ゾワゾワしてきた。
早く出てって。
もう1秒だって部屋にいてほしくない。
…大切?
他の人間が触れた“物”を大切なんて思えない。
手放す勇気