紺色

Open App

誰にも渡さないって決めていた。

触れさせないって決めていた。

そう、だってこれは大切なもの。

僕だけしか触れないもの。

誰にも絶対触らせない。

誰の目にも映らないように、引き出しの奥にしまっておこう。

王子様に連れられて、勝手にいなくならないように。


ー何してるんだ。駄目じゃないか、こんなことしたら可哀想だろ?この子だって生きてるんだ。


“僕以外”に触られた。

汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い汚い。

…気持ち悪い。

ごめんね。

今洗ってあげるから。

…汚いなぁ。

ほんと汚い。

やっぱり自分で洗ってよ。

僕は見てるから。

僕以外の指紋がついた君なんか触りたくないんだ。



………やっぱりいいや。

別の子にする。

今まではほんとに可愛かったのに。

あーやだやだ、きったない。

どうせ洗ったって落ちないよ。

気持ち悪い。

ゾワゾワしてきた。

早く出てって。

もう1秒だって部屋にいてほしくない。



…大切?

他の人間が触れた“物”を大切なんて思えない。


                              手放す勇気

5/17/2025, 3:29:11 AM