もんぷ

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4/15/2025, 10:16:39 AM

未来図

 無意識に描いていた未来図には当たり前のように君の姿があって、見据えていた未来ではニコニコと私が作ったパンケーキを頬張る君の姿があった。本当に当たり前だと思っていたのに、これが壊れる未来なんて予想だにしなかった。それでも、君が私のもとを離れるのなら笑って送り出さなきゃいけない。またなんてなくてもまたね、ありがとうねと笑ってみせなければならない。それが恋人としての最後の仕事。

4/13/2025, 10:36:44 AM

ひとひら

 ひとひらの桜の花びらが自分の手の甲をすっと撫でた。
「桜ももう終わるね。」
はやとの優しい声にうんと小さく返事をして上を見上げる。いつのまにか咲いて、いつのまにか散っている桜を見るのは人生で17度目のこと。最初の方の記憶なんてほとんど無いけど、とにかく桜は好きだ。
「だいちゃん進路の紙出した?」
「ううん、まだ。」
「おれも。あと二年あるし大学どこ行きたいなんて三年になってからでいいよなー。」
「わかる。ほんとそう。」
何気ない会話を口にしながら桜ばかり続く道を歩く。新学期が始まって、二人とも同じ二組で喜んだりして、同じ道を帰る。こんな日々がずっと続けば良い。幼稚園の頃から一緒でこの年までクラスも同じ。でも大学、就職…となればこれからもずっと一緒になんていられない。大人になんてなりたくない。この大好きな親友と過ごす青春を終わらせたくない。

4/12/2025, 2:03:32 PM

風景

 久しぶりに訪れた美術館、なんてことはない風景画に足を止めた。家のテレビと同じぐらいの大きさのキャンバスに描かれた田園風景。綺麗すぎない風景は本当に写実的でどこか懐かしさを覚える。作者の名前は見たことも無かったし、今まで見てきた中に同じ名前は無かったのでまだ駆け出しの人なのだろうか。期間限定の特別展示だった展示目当てに来て、目的も済ませたので普通の展示を見ているがどうにも自分は美術に疎いらしい。ただ抽象的で雑な筆運びの作品ばかりに見えていまいち楽しめなかった。ただこの絵はすごく好きだ。さっきから他の人はこの絵を数秒見ては通り過ぎていき、よくわからない絵をほうほうと楽しそうに見ている。そういった通らしい感性は持っていないが、良いと思えるものがあって良かった。それだけでチケットの料金のもとはとれた気がする。

4/12/2025, 4:54:43 AM

君と僕

 二人だけの世界なら良いのにと何度願ったことだろうか。君は僕しか選べないし、僕以外を見ることも知ることもできない。僕はこの二人きりじゃない世界でも君じゃなきゃダメなのに、君はこの世界だと僕以外に目移りしすぎる。許せない。だから、君が僕だけを見てくれるように、今日も鬱陶しいほど君だけを見ている。

4/10/2025, 1:39:23 PM

夢へ!

 夢を見ている時間が日に日に長くなり、ついに目を覚ましている時間を超えた。夢は良い。いつも自分が中心で、現実なんかでは到底味わうことができない不思議な体験ができる。どうしても自分が納得いかない展開に陥った時は目を覚ましてしまえば強制的にその出来事を無かったことにできる。でもなんの面白味もない現実に戻るよりかは後味の悪い展開で抗おうとしているほうがまだマシだ。それに、寝る時間が増えるにつれてなんとなくコントロールの仕方というか夢を自分好みに動かす方法を理解できてきたからより居心地の良い夢を見るようになってきた。現実ではありえない大金で豪遊したり、誰もが認めるスーパースターになって街でもみくちゃにされたり、叶わなかったあの人に想いを伝えて成就させたり…今日は何を見るのだろう。どんな夢を堪能しようか。叶うのならずっと素敵な夢を見て、目を覚ますのをやめれますように。いざ、今日の夢へ!………なんて考えていたのに今日は夢を見なかった。ただ、心なしかすっきりとした目覚めだ。目を覚まして強制的にシャットアウトしたいような出来事ばかりのこの現実も抗おうと努力してみれば少しはコントロールできるだろうか。これも一種の夢だと気楽にやれば良さに気づけるかもしれない。十何時間ぶりに大きく伸びをしてベッドから降りた。

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