ひとひら
ひとひらの桜の花びらが自分の手の甲をすっと撫でた。
「桜ももう終わるね。」
はやとの優しい声にうんと小さく返事をして上を見上げる。いつのまにか咲いて、いつのまにか散っている桜を見るのは人生で17度目のこと。最初の方の記憶なんてほとんど無いけど、とにかく桜は好きだ。
「だいちゃん進路の紙出した?」
「ううん、まだ。」
「おれも。あと二年あるし大学どこ行きたいなんて三年になってからでいいよなー。」
「わかる。ほんとそう。」
何気ない会話を口にしながら桜ばかり続く道を歩く。新学期が始まって、二人とも同じ二組で喜んだりして、同じ道を帰る。こんな日々がずっと続けば良い。幼稚園の頃から一緒でこの年までクラスも同じ。でも大学、就職…となればこれからもずっと一緒になんていられない。大人になんてなりたくない。この大好きな親友と過ごす青春を終わらせたくない。
4/13/2025, 10:36:44 AM