こひる

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2/13/2026, 1:17:48 PM

『待ってて』

毎日、何を作り、何を食べるか。その苦悩は夢にまで現れる。

朝4時30分、不慣れな手つきで、砂糖多めの卵焼きと冷凍シャケをフライパンで焼く。本当にバタバタと調理するから、シャケと卵焼きの両方が黒く焦げている。弁当箱に早めに詰めておいた白米の上に焦げ面を下にして乗せ、少しでも見栄えよくなればと、シャケの角度を微調整する。高校生には野菜を食べさせないといけないと頭に強くあるため、安く買える小松菜で定番のお浸しを作るが、息子にはいつも「ほうれん草の方が好きなんだけど」と不評だ。うちはうちだからと力なく答える。

なんとか出来上がった決して見た目の良くない弁当に、ふりかけと個包装のドーナツを添え、「弁当忘れるなよ。今日も頑張っていこう。」と、いい親だと思われたい気持ちを込め、威勢よく声をかける。

俺も息子も朝ごはんは食べない。
俺は、朝ごはんを食べると、仕事中に頭と胃が重く感じる。息子は、朝食べると吐き気がするそうだ。
この生活習慣は正さないといけないとは思いつつ、お互い様であり、注意できる者が誰も居ない。

職場での昼休憩、俺は自家用車で弁当を食べる。人に気を遣いながら過ごすなんて、何の休みにもならないし、何よりこの弁当を見られたくない気持ちがある。昨年離婚したばかりで、高校生の息子と2人暮らしを始めた四十男は、職場の人たちの好奇の目に晒されている。弁当について評価なんぞされては堪らない。

就業時刻まで残り15分を切っている。最近の癖で、この時間になると、夕食の献立を考え始める。

高校三年生の3学期、専門学校が早々に決まっている息子は俺より早く自宅に帰ってきている。最近は洗濯や洗い物を積極的に済ませてくれているから助かるが、料理には消極的だ。

タイムカードを押し、職場の人に無意識に挨拶をしながら、夕飯になにを作るか考える。

カバンの中から車のキーがなかなか見つからず、手を突っ込みゴソゴソとかき混ぜながら、夕飯になにを作るか考える。

スーパーで、買い物かごに卵、小松菜を入れながら、夕飯になにを作るか考える。
考えて、考えて、考え抜く、、、

閃いた!
急いで息子に電話し、「今晩はカツカレーにするから、待ってて。」と威勢よく告げる!

頭はスッキリだ。

2/12/2026, 12:20:28 PM

『伝えたい』

まるで違う人格に入れ替えられたようだ。

母さんは今日も一点を見つめている。したいことは一切ないそうだ。
「元気?」
「うん。」
「どこか痛い?」
「いや、、、」
「時間あるけど、行きたいところはない?」
「ないかな。。」
「何か困っていることない?」
「ないよ。」
「今日は天気がいいね。昔、母さんは自転車でどこまでも行ってたよね。」
「・・・」

母は元気な人だった。いつもニコニコしていたし、大きな声で話す。新聞配達をしていたし、家族に隠れて可愛い物を集める趣味があった。よく食べ、よく寝る。片手で卵を割ろうとして失敗するし、スパゲッティをフォークとスプーンで不器用に食べる。

母はいつも何かを心配していた。
母はいつも何かを気にしていた。

「あんたなら、分かってくれるかな。あのね、、、」
俺は母の話を止めた。めんどくさいことを聞きたくなかった。どうせ、また父さんの愚痴だろう、近所付き合いがうまくいっていないのだろう、、、

あれから、5年。
少なくても、週一回は様子を見に行き、月一回の通院には必ず付き添う。主治医から「どうですか、眠れていますか?」と聞かれ、母さんはどちらとも取れる曖昧な返答をする。薬を減らすことはできない。

「母さん、俺、結婚することにしたんだ。」
「そう、、、」

あの頃の俺に伝えたい。
「この、親不孝者がっ!!」

2/11/2026, 12:33:29 PM

『この場所』

1人、YouTubeで学生時代、10代の頃好きだった音楽を聴く。
切ないな、、、この頃、思っていた感情や希望はどこに、蒸発して消えたのだろう。歳をとるというのは、こういうことなのだろうか。
今、居るこの場所は、もともと縁もゆかりもなかった場所だ。結婚して、結婚相手の職場が近かっただけの場所。
なぜ、ここに居る?
いや、別に否定する程ではない。ちゃんと意味があって、ここに居る。
なぜ、寂しい?
いや、相手は忙しいのだ、俺の感情で人は動かない。
なぜ、歳をとる?
いや、それは自然のことだ。でも、あの頃の自分は、自分自身が特別な存在であることに疑いもなく、歳なんてとらないと思っていた。

今日も朝起きて、朝食食べずに出勤し、仕事が終わるのを、仕事に集中せず、時計に集中して過ごす。退社後は寄り道せず、真っ直ぐ家に帰る。

21時30分を超える頃、妻に「早く寝て」と言われ、寝室に向かう。

明日も頑張ろう。ここは、幸せでなくても最善の場所だ。