こひる

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『ひなまつり』

ふっくらやわらかなウナギが乗ったちらし寿司が、たまらない。

女子が、かあちゃんしかいないうちでは、ひなまつりとは縁がなかったが、近年、三月三日は特別な日になっている。かあちゃんの子供の頃は、家に雛人形を飾り、ご馳走を食べたそうだ。あのちょっと怖い人形に病気や災いを移すためだとネットで読んだが、昔の人の考えや風習はなんだか極端だなと思う。だけど、なにかと理由をつけ、ご馳走様を食べるっていう習慣には大賛成だ。

ある時期から、三月三日になると、ウナギが乗ったちらし寿司が夕食に登場するようになった。近所のスーパーで、ひなまつりフェアと銘打ちスイーツや食材が彩り並ぶのを見て、かあちゃんなりに思うところがあったのだろう。
かあちゃんは、買ってきたウナギに直接、水道水をかけ、身に付いているタレを洗い落とす。それから、フライパンに皮を下に乗せ、お酒をかけて蒸し焼きにする。一度、タレが美味いのになぜそんなことするのかと聞いてみると、「輸入ものは匂いが独特で硬いから、こうやってやわらかくするのよ」なるほどーーとまでは思わなかったが、美味しさには変わりない。
絶妙な加減の酢飯にはたくさんの具材が混ぜ込まれ、甘い錦糸卵がたっぷり、その上には大きめにカットされた主役のウナギが鎮座する。あゝ美味い、これ好き。
かあちゃんは口いっぱいに頬張る俺を見て、ニコニコしていた。
忘れていた翌年の三月三日の食卓にちらし寿司が出てきたときは、定番化したのだなと嬉しくなった。

俺の気持ちが華やかな気持ちになる春の日。

3/3/2026, 1:19:17 PM