ヨルガオ(短編小説)

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7/20/2023, 12:27:07 PM

「あ、いたいた。やっほー」

『………』

夜、公園のベンチに座っていると17歳ぐらいの女の子が話しかけてきた。

唖然とする俺を置いて、彼女は話を続ける。

「また残業してたの?相変わらずだね」

「早く帰って寝ないと。また体調崩すよ」

全く話についていけない。

そりゃそうだ。俺は彼女の事をまったく知らない。

「そういえば、おかあ……友梨は?」

『…なんで君が友梨の名前を知ってるんだ』

友梨は同じ部署で働く俺の幼馴染だ。

「…友梨の事、好きでしょ??」

『…は、はああ!?!?』

「ふふ、やっぱり。この頃から好きだったんだね」

『…君、一体誰なんだ…?』

「…私の名前?」

「……将来、貴方が友梨と一生懸命考えてくれる素敵な名前だよ」


ー私の名前ー

7/19/2023, 10:10:21 AM

放課後

3階の窓から、私は身を乗り出す。

不安な気持ちを抑えて、運動場を見回す。

……いた。

その瞬間から、私の視線の先には彼しか居ない。

ああ。彼の視線の先に、私が居たら…

……なんて。変な妄想。

本当に片想いって厄介だ。

私と反対方向に笑顔で手を振る彼の目には

私じゃない女が居る。

叶いっこないのに、願ってしまう。

彼の視線を独り占め出来たら…。


ー視線の先にはー

7/18/2023, 10:28:18 AM

一筋のスポットライトがステージ上の女性を照らす。

女性は軽やかにステップを踏み、観客を虜にする。

彼女は選ばれた人間だ。

そして私は選ばれなかった人間。

どれだけ小道具を運んでも、どれだけ頑張っても

観客の視線は全て彼女の物になる。

だって彼女だけが主役なのだから。

彼女さえ居なければ、

この視線を私だけの物に出来たのに。

………あ。

あるじゃない。

彼女を照らす役割の私にしか出来ない、

みんなの視線を私の物にする方法が。

私は、踊る彼女の真上に行き

照らすスポットライトの鎖を切った。

けたたましい音と悲鳴が鳴り響き、

みんな、私に釘付けになった。


ー私だけー

7/17/2023, 10:35:19 AM

僕には、変な記憶がある。

それは4人家族の記憶。

僕の家族は、母さんと父さんの3人なのに。

…妹が、いた気がする。

この記憶にいる妹は、7歳ぐらい…の年だ。

凄く笑顔が綺麗な…そんな妹。

夢だったのかも知れない。

気のせいなのかも知れない。

確かめたいけど、

親達には言ってはいけない。そんな気がした。

どうしてだろう。


ー遠い日の記憶ー

7/16/2023, 1:44:51 PM

最近、夕焼けを見なくなった。

…いや。見ていないの方が正しいのかもね。

帰り道、私はずっと下を見ている。

自分の影を見るために。

この時間帯が一番大きくはっきり見えるんだ。

そんな影を見るたびに、

私は存在していると実感する。

…でも、今日だけは真っ直ぐ前を向うと思う。

………。

久しぶり見たな。夕日。

こんなにも明るかったんだ。

そんな夕日を見るたびに、

私には影が無くなったと実感する。


ー空を見上げて心に浮かんだことー

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