図書館の隅にある一冊の青い本。
私はその本を毎日手に取るの。
そしてゆっくり眺めて、楽しんで
誰にも見つからない様に隠すの。
私だけの本、私だけのものだもの。
誰かに見れられたら、私は閉じ込められるかもしれないわ。
暗く、寂しい部屋に。
そんなことにならないために、慎重に隠すの。
え、そんな秘密を言ってもいいのって?
………。
ふふ…。それはあの本が貴方の本だから。
…意味がわからない?
それじゃあ6月17日に、図書館に行ってみるといいわ。
そしたら意味がわかるから。
ー好きな本ー
「……今日、放課後空いてる?」
「君に伝えたい事があるんだ」
『……わかった』
そう返事をし、君は教室を出た。
……。
放課後、教室を覗くと君が一人いた。
伝えられる。この気持ち……。
「待たせてごめん。……えっと…」
「実は、僕…空のことがずっと好きで……」
「…えっと…だから………その……」
「ッ……!ぼ、僕と付き合ってください!!」
手を彼女に差し出し、目を瞑って下を向いた。
だが、その手に空が触れることは無かった。
『……まず、告白してくれてありがとう』
『気持ちは嬉しい。……けど』
『私、好きって事がまだよくわからなくて…』
『だから……ごめん』
断られた……ってことか?
でも、今はまだわからないだけでアタックはしてもいいってことなのか??
どっちなんだ…。
帰り道を歩きながらそんな事を考えた。
ーあいまいな空ー
「あれ」
「アジサイだ…。こんな所に咲いてたっけ…?」
あいつの家があった空き地に見慣れないアジサイが咲いていた
青く、とても鮮やかな色をしている。
「アジサイって、青色になるんだ」
そう思った瞬間、少し背中が寒くなった。
『あれ、帰ってきとったん?』
近所のおばちゃんが俺に声をかけた
「はい。仕事にキリがついたので…」
『そうかそうか』
「あの…、この家の女の子って…」
『ああ……。本当にお気の毒だね』
え…。俺は今何処にいるか聞こうとしたのに…。
お気の毒……?
「それって…どういう…」
『あんた、知らないのかい?この家の女の子、行方不明だって』
『学校の帰りだったかな…?突然帰ってこなくなってそれっきり。今もまだ見つかってないよ』
ヒュッ…と息を呑む。
行方不明が怖いからではない。
きっと俺は、
彼女の居場所を知ってしまったのかもしれない。
ーあじさいー
好き嫌いに差があっていいじゃない。
犬が好きな人もいるし、猫が好きな人もいる。
野菜が好きな人もいれば、嫌いな人もいる。
何もおかしな事じゃない。
何も変な事じゃない。
なのに、
なのに。
私が気持ちを伝えたら、否定する。
気持ち悪いと、否定する。
好きと嫌いに個人差がある事なんて、
みんな知ってるだろ。
じゃあなんで、
私があの子を好きになっちゃ駄目なんだ。
ー好き嫌いー
「変わったな…ここも」
5年ぶりに、実家に帰ってきた。
実家の周辺は昔の面影など無く
新しいお店、空き地に変わっていた。
「……ここって」
ふと、ある空き地の前で、立ち止まる。
懐かしい。この道は覚えてる。よく通ったな。
「……あいつの家、無くなってるな」
中学の頃、どことなく気になっていた女の子の家。
別々の高校に進学してから、話さなくなった。
街で見かける事もあったが、なんだか気まずかった。
「………。」
今でもこの想いは変わらない。
もう一度会えたら…………。
なんて、ありっこないのに。
ー街ー