ヨルガオ(短編小説)

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6/15/2023, 10:45:28 AM

図書館の隅にある一冊の青い本。

私はその本を毎日手に取るの。

そしてゆっくり眺めて、楽しんで

誰にも見つからない様に隠すの。

私だけの本、私だけのものだもの。

誰かに見れられたら、私は閉じ込められるかもしれないわ。

暗く、寂しい部屋に。

そんなことにならないために、慎重に隠すの。

え、そんな秘密を言ってもいいのって?

………。

ふふ…。それはあの本が貴方の本だから。

…意味がわからない?

それじゃあ6月17日に、図書館に行ってみるといいわ。

そしたら意味がわかるから。


ー好きな本ー

6/14/2023, 10:52:25 AM

「……今日、放課後空いてる?」

「君に伝えたい事があるんだ」

『……わかった』

そう返事をし、君は教室を出た。

……。

放課後、教室を覗くと君が一人いた。

伝えられる。この気持ち……。

「待たせてごめん。……えっと…」

「実は、僕…空のことがずっと好きで……」

「…えっと…だから………その……」

「ッ……!ぼ、僕と付き合ってください!!」

手を彼女に差し出し、目を瞑って下を向いた。

だが、その手に空が触れることは無かった。

『……まず、告白してくれてありがとう』

『気持ちは嬉しい。……けど』

『私、好きって事がまだよくわからなくて…』

『だから……ごめん』

断られた……ってことか?

でも、今はまだわからないだけでアタックはしてもいいってことなのか??

どっちなんだ…。

帰り道を歩きながらそんな事を考えた。


ーあいまいな空ー

6/13/2023, 10:46:53 AM

「あれ」

「アジサイだ…。こんな所に咲いてたっけ…?」

あいつの家があった空き地に見慣れないアジサイが咲いていた

青く、とても鮮やかな色をしている。

「アジサイって、青色になるんだ」

そう思った瞬間、少し背中が寒くなった。

『あれ、帰ってきとったん?』

近所のおばちゃんが俺に声をかけた

「はい。仕事にキリがついたので…」

『そうかそうか』

「あの…、この家の女の子って…」

『ああ……。本当にお気の毒だね』

え…。俺は今何処にいるか聞こうとしたのに…。

お気の毒……?

「それって…どういう…」

『あんた、知らないのかい?この家の女の子、行方不明だって』

『学校の帰りだったかな…?突然帰ってこなくなってそれっきり。今もまだ見つかってないよ』

ヒュッ…と息を呑む。

行方不明が怖いからではない。

きっと俺は、

彼女の居場所を知ってしまったのかもしれない。


ーあじさいー

6/12/2023, 10:16:54 AM

好き嫌いに差があっていいじゃない。

犬が好きな人もいるし、猫が好きな人もいる。

野菜が好きな人もいれば、嫌いな人もいる。

何もおかしな事じゃない。

何も変な事じゃない。

なのに、

なのに。

私が気持ちを伝えたら、否定する。

気持ち悪いと、否定する。

好きと嫌いに個人差がある事なんて、

みんな知ってるだろ。

じゃあなんで、

私があの子を好きになっちゃ駄目なんだ。


ー好き嫌いー

6/11/2023, 10:45:15 AM

「変わったな…ここも」

5年ぶりに、実家に帰ってきた。

実家の周辺は昔の面影など無く

新しいお店、空き地に変わっていた。

「……ここって」

ふと、ある空き地の前で、立ち止まる。

懐かしい。この道は覚えてる。よく通ったな。

「……あいつの家、無くなってるな」

中学の頃、どことなく気になっていた女の子の家。

別々の高校に進学してから、話さなくなった。

街で見かける事もあったが、なんだか気まずかった。

「………。」

今でもこの想いは変わらない。

もう一度会えたら…………。

なんて、ありっこないのに。


ー街ー

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