ヨルガオ(短編小説)

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「あれ」

「アジサイだ…。こんな所に咲いてたっけ…?」

あいつの家があった空き地に見慣れないアジサイが咲いていた

青く、とても鮮やかな色をしている。

「アジサイって、青色になるんだ」

そう思った瞬間、少し背中が寒くなった。

『あれ、帰ってきとったん?』

近所のおばちゃんが俺に声をかけた

「はい。仕事にキリがついたので…」

『そうかそうか』

「あの…、この家の女の子って…」

『ああ……。本当にお気の毒だね』

え…。俺は今何処にいるか聞こうとしたのに…。

お気の毒……?

「それって…どういう…」

『あんた、知らないのかい?この家の女の子、行方不明だって』

『学校の帰りだったかな…?突然帰ってこなくなってそれっきり。今もまだ見つかってないよ』

ヒュッ…と息を呑む。

行方不明が怖いからではない。

きっと俺は、

彼女の居場所を知ってしまったのかもしれない。


ーあじさいー

6/13/2023, 10:46:53 AM