『遠くの空へ』
君が為誰が為
ふと呟いた私の言葉に彼は気づくわけなく、私は電波に音を乗せる。
はぁ、と何度目か分からないため息をつき、もう二度と会うことのない彼に最後のキスを贈る。
曇り空は涙を零し、雷雨は頬を割く。
彼のことを愛していたかといえば、愛していない。
ただ答えはなく、運命といえば綺麗事のように聞こえて、偶然といえば私は耳を塞ぐ。
絵空事のような出来事に浮かれていただけだ。
雲ひとつない澄んだ青空はどこか冷たかった。
彼と目が合うわけでもないのに私は、ただ、その空をぼんやりと眺めた。
『言葉にできない』
貴方と過ごした時は貴方にとって一瞬で
貴方は僕を置いて、前へ進む
僕のことを忘れ、僕の知らない人と歌を歌い、
やがて僕は過去の人になる。
嘘まみれで醜くて滑稽な僕を溶かしてくれたのは間違いなく貴方で
でも醜い僕がこの気持ちを言葉にしてしまえば
この気持ちさえも嘘になるような気がして
だからまた、僕は嘘を重ねる。
『これからも、ずっと』
私のそばにいてほしい
私の隣で笑っていてほしい
ずっと、ずっと、私と一緒にいてほしい
何十年先も、何百年先も、来世も、
たとえ貴方が 、宇宙の藻屑になったとしても
どこかに消えてしまっていたとしても
ねぇ、だから、泣かないで。
『沈む夕日』
彼女が頬を染めていたのは、夕日のせいだろうか。
触れればほどけてしまいそうな彼女の温度
彼女は花を零すように咲う。
その手に触れて、
名前もつかない衝動が胸の奥で輪郭をなぞる。
抱きしめてしまえばきっと壊れてしまう。
私は手に触れたまま離さないふりをした。
沈んでいく光の中で
言葉にならなかったものだけが木霊した。
『君の目を見つめると』
溢れ出すこの想いは零れ落ち
滲んだ青空はどこまでも澄んでいて
もう、どこにも、君の姿は見つからない。
手を伸ばせば触れれる距離なのに
君は自分で立ち上がる。
彷徨う手は空を切り、君にどれだけ近づいても
君をどれだけ見つめても
君の目に映る僕は、少し歪んでいた。
君の世界に僕は、ただ1人の“僕”でしかなくて。
だから、せめて、この想いだけは、君の知らない場所に置いていく。