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12/8/2025, 3:40:13 PM

『雪原の先へ』

白い吐息に荒い呼吸。
視界は曇り、吹雪で前がよく見えない。
もう感触の無い手に、凍った瞳
この雪原を超えた向こうには何があるのだろう。

手をどれだけ伸ばしても届かず、足は雪に埋もれていき、次第に1歩も動けなくなった。
溢れる涙は雪原に解け、私はとうとう願いを叶えることができなかった。

11/30/2025, 11:34:55 AM

『君と紡ぐ物語』


「貴方の名前は?」

世界中の人が私を嫌いになって
世界中の人が私を忘れて
そして
私はようやく───


11/30/2025, 1:31:45 AM

『失われた響き』


ふと、目にに入った公園
草が伸び切り、もう長い間整備されていないようだった。

私は錆び付いたブランコに腰掛け、キィと揺らし、当時の記憶を思い出していた。


「今日帰ったらゲームしようぜー!」
「おう!ルーム作ったらさっさと連絡しろよ!」

聞こえてきた小学生の会話。
あぁ、そういえば、ゲームも昔はローカル通信が主流だった。

何もかもこの端末で完了してしまう時代。
もし、この端末がこの世から消えたら──ふふ、この文も誰にも届かないね。

11/27/2025, 1:52:15 PM

『心の深呼吸』


猫の毛づくろいをするのを眺め、送信ボタンを押す手を止めた。


私は画面を閉じ、ベッドに仰向けになって倒れた。
自然とあふれてくる涙に、1階から聞こえてくるテレビの声

どの世界にも私はいなくって
誰にも必要とされなくって
生きている価値なんかない

ずっとこう思いこんでいた。


切り離していたのは、自分だった。
彼、彼女たちは私に手を差し伸べてくれた。
だが、自ら壁を作り、踏み込まなかったのだ。
踏み込めなかったのだ。

“ブーブブ”

通知音がなり、慌ててスマホを見る


“ありがとう”のかわいらしいスタンプが送られてきており、私は再び涙が止まらなかった。


そっと通知をoffにし、静かに目を瞑った。

11/27/2025, 5:33:20 AM

『時を繋ぐ糸』

昨日は祖母の命日だった。

私のおばあちゃんは祖父の遺影の前でよく編み物をしていた。
子供の頃はおばあちゃんと祖父がちゃぶ台を囲みみかんの皮を1枚1枚ゆっくりと剥き、他愛のない会話をしていた。

いつも無口で何を考えているのか分からない祖父だったが、祖母の前では優しく笑い、今思えばすごく恥ずかしがり屋さんだったのだろう。

ほほほ、とほんのりと頬を赤らめて祖父の話をするおばあちゃんはいつも嬉しそうだった。

ずっと昔から何かを編んでおり、何を編んでるの?と聞いてもおばあちゃんは貴方が20歳になったら教えてあげます。としか言ってくれなかった。

もどかしくて、早く大人になりたい!と、母の化粧道具を勝手に使ったり、父が好きなお酒を飲んでみたりと、ものすごく怒られたが、母も優しく頭を撫でてくれ、父も、最後は笑っていた。

そんな小学時代を過ごし、中学、高校、とあっという間に時間は過ぎ去った。

恋をしたり、喧嘩をしたり、泣いたり怒ったり、でも、最後は笑っていた。

祖母は相変わらずずっと何かを編んでいた。
でも、最近は寝てる事の方が多くなった。
母は、「お母さん」と悲しそうにおばあちゃんの手を握った。

祖母は最期に、お誕生日おめでとう、当日に言えなくてごめんなさいね。と言ったらしい。
目を赤く腫らした母が言っていた。

そして、母の手には祖母がずっと編んでいた純白のヴェールが握られていた。



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