『桜散る』
川の流れる音にそっと耳をすませば、少し遠くの公園から子どもの笑い声が聞こえてきた。
素足になり川に足を入れれば、少しひんやりとした水が心地よかった。
ふと見上げれば、散り残った桜がやわらかな緑に溶け込んでいた。
ヒラヒラと舞い散る桜の花びらを思わず掴んだが、息を吹きかけた途端あっけなく手を離れていった。
川へ落ちたそれは、もう二度と戻ってこないように、ゆっくりと流れていき、とうとう見えなくなった。
綺麗だと思ったときには、もう届かなかった。
『桜散る』
川の流れる音にそっと耳をすませば、少し遠くの公園から子どもの笑い声が聞こえてきた。
素足になり川に足を入れれば、少しひんやりとした水が心地よかった。
ふと見上げれば、散り残った桜がやわらかな緑に溶け込んでいた。
ヒラヒラと舞い散る桜の花びらを思わず掴んだが、息を吹きかけた途端あっけなく手を離れていった。
川へ落ちたそれは、もう二度と戻ってこないように、ゆっくりと流れていき、とうとう見えなくなった。
綺麗だと思ったときには、もう手の届かない場所にあった。
『夢見る心』
どんなに醜く汚れてしまった心でも、夢を見ていいと彼は言った。
夢は見るのは自由だ。
あの日、涙が止まらない私を抱擁してくれた。
その瞬間、何かが暖かく解ける音がした。
明日、カフェに行きたい。
“うん、行こう。“
明日、桜を見に行きたい。
“うん、きっと綺麗だ。“
愛してる。
“……うん。僕も。”
ありがとう。
私はなんだかものすごく眠くなってきてしまった。
最期に見た彼は、とても苦しそうに笑っていた。
いい夢が、見れる気がした。
視界が真っ暗になり、しばらくすると無機質な電子音が病室に響いた。
『届かぬ想い』
忘れよう。
そう思って何日が経ったのだろう。
私の想いは彼に踏み躙られ、二度と彼には心を開かないと決めたと言うのに、それでも私はまだ彼の体温を求めている。
これが恋だと言うのなら、なんて醜いのだろう。
これが愛だと言うのなら、なんて滑稽なのだろう。
ただの執着だと分かっていながら、私は何度目か分からないため息をつく。
『快晴』
「今日の天気は晴れのち曇りです。
また、今晩以降は台風の影響により···」
車のらじおを切り、咥えていたきゃんでぃを歯で噛み砕いた。
まるで、ただ真っ青なキャンパスが塗りつぶされたほどのいい天気だと言うのに、台風がくるなんて考えられない。
会社の同期はすんすんと鼻を嗅ぎ澄ませば、雨の匂いが近付いてますね……なんて言っているが、私にはよく分からない世界だ。
「先輩、今日早上がりしてもいいですか。」
「あぁ。
そういえばお前、電車出勤だよな。
電車は止まらないのか?」
「多分俺の予想じゃそこまで酷い台風じゃないっすよ。」
そうだといいのだが。
私は、ですくとっぷに向かい通常業務を始めた。
少しずつ濁る曇り空に心做しか画面も見にくくなっているように感じた。
後輩はおやつ時頃に帰宅した。
私はそのまま定時まで残りずっと通称ぱそこんと睨めっこをしていた。
先日の出張先のレポートもまとめないといけないというのに、時間だけは刹那に過ぎていった。
「あー、こりゃだめだな」
地下から聞こえてくる雨水の音に、あすふぁるとを叩かんばかりに割れる音が響いていた。
確かに辛うじて電車は動いているようだが……60分遅れだと遅くまで残っていた人は嘆いていた。
車に乗り、再びらじおを流せば各地の台風の様子を流しているようであった。
車の左手側にある小さな引き戸を開け、私はいくつもあるいちご味のきゃんでぃを口に放り込めば、いつもならありえないくらいの爆音で音楽を流した。
きゃんでぃを砕く音も、地面に叩きつけられるほどの雨音も、静かに全てかき消えた。