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君と見た景色はどこまでも色鮮やかで、暖かくて、ほんの一瞬期待してしまった。

このままずっと俺の傍にいてくれると。

その暖かい温もりを逃がしたくなくて必死になればなるほど、 君は遠ざかり、少し手を離せば君は頬を膨らませ怒り、でも、それでも、俺のそばにいてくれた君は俺の愛する人で、かけがいのない人で、俺と君は住む世界が違うくて。


部屋にスーツを脱ぎ捨て、硬いベッドに寝転んだ。

何日も寝ていなかった疲弊しきった目には隈があり、充電は既になくて、充電器に指し、電源がつくと大量の通知音に、彼は溜息をつきながら電源切った。

部屋から差し込む暖かい月の光は彼にとってはただの邪魔の存在でカーテンを勢いよくしめ、何度目か分からない溜息をつきそっと手を伸ばした。

そこにはコーヒーの缶があり、震える手でそれを空け一気に飲みきれば立ち上がり、ガラッと窓を開けた。

あの日見た夜景は何一つ変わっていなくて。
変わってしまったのは俺だけだった。



カリ、カリ、とドアを引っ掻く音が聞こえ、最初は無視していたが無性に気になりドアをそっと開けた。

そこには、あの人が気に入っていたイヤリングと同じ目の色をしていた猫がいた。


猫は何も言わずに部屋へ押し入れば、窓の前で立ち止まり、俺をじっと見つめた。



『まだ、わたしはあなたのそばにいるよ。』





3/21/2025, 2:51:35 PM