『寂しさ』
僕の中には何も無くて、空っぽで、そしてお母さんがくれた宝物。これの中身は見たらダメだよ、と渡された、綺麗な箱。
開けたくて、開けたくて、でも、開けるのが怖くて
でも、僕は、見てしまった。
箱には、何も無くて、僕と同じで、空っぽだった。
悲しくて、大好きなお母さんに騙されたと思って、僕はずっと泣いていた。
でも、何となく、僕の心は軽くなった。
----------------
寂しいって気持ちは、どこか懐かしい、とか、そういう温かいものがあってこそなるものだと思うのです。 by E
『冬は一緒に』
寒い冬の日の朝だった。
まだ陽は眠りについており、辺りは薄暗かった。
つんと肌を割くような冷たさは幾年経っても慣れない。
降る雪を見ているとどこか虚しいこの感情はなんなのだろう。
キャンバスの白紙のような真っ白さは、なんだかいたたまれなくさせ、私の心を締め付ける。
小さな芽も起きる気配が全くなく、寒さのせいか、その場にうずくまり、身震いした。
『おねぇちゃん、雪!雪だよ!!』
かつていた、小さな手のあの子は私の元を離れ、今や花になっている。
私に春が来ることは二度となくて、あの子が冬に戻ってくる事も二度となくて
冬は一緒に、私と詩を嘆く
『とりとめもない話』
「ねー、あのさ、聞いてるー?」
その人は手に持っていたネイルキットを横目にじとりと俺の顔を見た。
はぁ、とため息を付くとネイルキットを下ろし、机に顎を乗せ、上目遣いで俺を見ていた。
「あんたさー、早く学校、来てよ、
あんたいないと授業つまんないんだけど」
そんなわけない。
こいつには沢山の友達がいて、先生にも慕われて、つまらないなんてことはないだろう
横に置いてあるフルーツの山のひとつを手に取ると、彼女は手馴れた手つきで皮をむいた。
「……今度、マック行こって、言ってたじゃん、もう、期間限定の、終わっちゃったし……嘘つき……早く目を覚ませよ、このバカ」
無機質な電子音と酸素を運ぶ音だけが、彼女の耳に届いていた。
『風邪』
俺は、皆から嫌われる存在だった。
何が、ダメなのか自分でも分からなかった。
いや、本当は、分かっていた。
思ってもないことを、口走ってしまう。
その上、何人の人も傷つけた
そして、何人の人も巻き込んでしまった
もう、俺の周りには黒く染った奴らしかいない。
どれだけ足掻いても、取り繕っても、真っ黒に染まってしまう。
まるで、伝染していくように。
『雪を待つ』
ふと遠くの山々を見れば紅葉から雪山へと移り変わり、
冷たい風が私の頬を撫でた。
この季節になれば心做しか胸がぽっかりと、何か空いた空虚な気持ちになる。
そんな空白を真っ白な雪は埋めてくれる。
私をも覆い隠さんとする雪は秋を隠し、春を待つ。
そんな雪を、ずっと待っている。
そして、いつか私に春の日差しが来ることを願って──