最近、タイミングのいいことが多すぎる
乗り遅れたはずの電車が、遅延で私が着いた途端に来たり
たまたま見つけた商品が、欲しいけどちょっと高いなと思ってたら翌日、セールになったり
他にも、たまたま出かける予定を取りやめた日に荷物が配達されたり
色々とタイミングのいいことが重なっている
こうもタイミングがいいと少し不安になるのが、私のネガティブなところで
なにか悪いことの前触れだったりしないか、ちょっと心配ではある
「あ、違いますよ
あなたの貯まりに貯まった運が消費されてるだけです」
いきなり目の前に幸運の女神が現れてビックリした
いつものことながら、突然現れるのはやめてほしい
久しぶりな気がするけど、前に会ったのは、倍率の高いイベントの抽選に当たった時だったかな?
なぜかこの女神は度々私の前に現れる
暇なのかな
「暇じゃないですよ
役目が面倒になったので、息抜きにサボ……休暇を取ったんです」
言い直した部分は聞かなかったことにしよう
役目が面倒というのも、まあ聞かなかったことにするか
「前も説明したとおり、運の良さは大きい運、普通の運、小さい運の3つからなっていて、運の器に貯まっていきます
大きい運ほど体積が大きく、貯まりづらく、必要量も多い
小さい運ほど体積が小さく、貯まりやすいんですよ
必要量も少ないです」
それは前に聞いた
だから大きく運のいい出来事は、起こりづらく、しかもちょっとしたことで器からこぼれていくから、余計に運が貯まっていかない、と
「で、あなたはここのところ、小さい運がやたら貯まっていたんです
大きい運も普通の運も貯まらず
そして消費もされなかったので、今、器に貯まりきった小さい運の良さが一気に発散されている状態です」
どうせなら大きい運が貯まってほしかったな
私、あなたの暇つぶしの相手をしてあげてるじゃん
ちょっとさあ、いい感じに運のボーナスをくれないかな?
「あー、無理ですね
それやると色々と違法になるので」
神の行いにも合法違法があるのかあ
じゃあしょうがない
「あ、もうすぐ運が底をつくので、しばらく運のいいことは起こらないはずです」
それは残念
まあ、また運が貯まるのを待つよ
「それと、そろそろ小さい運の悪さが最大まで貯まるので、ちょっとした不運が連続して発生すると思います
気をつけてくださいね」
やっぱりタイミングの良さは悪いことの前触れじゃん!
「前触れじゃないですよ?
運の良さと運の悪さは別枠なので」
運の消費の順番が逆だったら良かったのに……
なんか、今までの運の良さが台無しになった気分だよ
憂鬱だな
虹のはじまりを探して、虹を失う
私の故郷にあることわざだ
意味としては、物や能力など、相手が持たないものを求めすぎた結果、相手に愛想を尽かされる、ということ
存在しない虹のはじまり……つまり根本のある場所を探しているうちに、肝心の虹が消えてしまう、という状況で例えたのだ
言いたいことはわかる
しかし、私はこのことわざが虹で例えたことが気に食わない
虹なんていうロマンティックな存在
そのはじまりを探すなんていう夢のある話を、迷惑な行動に当てはめている
きれいな虹をこんなことの例えにしたら台無しだろう
作った人間はよく考えてほしい
自分では傑作だと感じたものと思われる
しかし、センスがないと言わざるを得ない
なぜわざわざ夢のあるものに対して、嫌な現実で水を差すのか
私はこのことわざを作った者にこそ、なんらかの皮肉ったことわざが必要なのではないかと思わずにはいられない
なぜ私がここまで過剰にこのことわざをこき下ろすのか
簡単だ
私は虹が好きで、見えた虹の根本を探しに、自転車を走らせた経験があるからだ
このことわざを聞くたび、私は自分の虹に対する幻想的な感情と、あの日の夢中で自転車をこいだ思い出を否定された気分になる
ともかく、いつかこのことわざが忘れ去られ、この世から消滅する日が来ることを願うばかりだ
本当に、虹のはじまりを探して夢を追った全ての人々に謝ってほしい
ここは都会のオアシス
私は暑さの激しい、ビルの立ち並ぶ都会の中でとても心地よく過ごしている
屋外にありながらここはとても快適で、涼しい
そう、オアシスだ
都会の真ん中に、突如木が生え、大きな池が出てきたのだ
ここだけなぜか気温が低く、池の水はとてもきれいで健康上飲んでも問題はない
さらにここの水は信じられないくらい美味くて、それ目当てで飲みに来る人もいるくらいだ
私もすっかり、このオアシスへ通うことが日課のようになってしまった
なぜ、こんなところにオアシスができたのかはわからない
が、そんなことは心の底からどうでもいいことだ
ここは快適で、水が美味くて、心身を癒やすことができる
それだけわかっていれば十分だ
さて、しっかり休めたし、名残惜しいがそろそろここを出よう
また暑い都会に戻るのは残念だが、いつまでもここにいるわけにはいかない
おや?
立ち上がれないぞ
なんだか頭もフワフワしてきたような
うん?
いや待て、オアシスってなんだっけ?
なんだか目の前が歪んで……
「ここは?」
「ああ、よかった
意識がはっきりしてきましたね
ご自分の名前、わかりますか?」
私は促されるまま名前を言った
その後、様々なことを聞かれたり、促されたりして、ようやく状況がわかった
ここは病院だ
そうだ、私は暑さで倒れて、そのあと夢か幻覚か、都会のオアシスでくつろいだ気になっていたのだったな
どうやら熱中症にかかったらしい
そういえば水分をあまりとっていなかった
下手をすれば命を落としかねない危険な状況だ
これからはもっと気をつけねば
しかし、都会のオアシスか
あんなオアシスが都会の真ん中にあったら、この暑い夏も頑張れそうなのに
熱中症の中で見た、儚い幻だったな
僕たちは目の前の光景に、悲しみを抑えられなかった
目の前には心折れた友人がうなだれている
心の暗さを示すその目には、はっきりと涙の跡がある
赤く充血しているのだ
僕にはかける言葉も見つからない
場を沈黙が支配する
他の友人たちも、彼になんと言っていいかわからないのだ
友人は同じクラスの子を好きになり、思い切って告白
しかしフラれてしまった
いや、それで話が終わっていたのなら、よくある失恋だと、彼の心も少し大人になって切り替えられたのかもしれない
しかしそうはならなかった
恋した相手にごめんなさい、と言われたあとのことだ
相手から衝撃発言が飛び出した
実はその子は、一番の大親友だと彼が言っていたクラスメイトと付き合っていたのだ
大親友は、彼を驚かせるために黙っていたという
そして今日、打ち明けるつもりだったとか
フラれたのがショックなのではない
知らずに大親友の恋人に告白した罪悪感と、よりによって大親友が自分が好きになった相手と付き合っていること、その他様々な思いがごちゃまぜになったため、深いショックを受けたのだ
ちなみにこの場に大親友はいない
彼は大親友には自分が恋をしたことを言わなかったらしい
大親友だからこそ話すのが恥ずかしかったのと、うまくいったら驚かせようと思ったからだそうだ
悪い意味で奇跡
奇跡的なすれ違いで起きた悲劇だ
僕たちは彼から、今日告白すると聞いて内緒で見守り、成功したら頃合いを見て駆け寄り、祝福ドッキリをしようと待機していた
無駄になるどころか、非常に気まずい
しかし、悲しみをこらえて笑顔でその場をやりすごし、相手が去るまで決して涙を流さなかった彼に、僕は敬意を表する
ただ、震えの混じる深いため息をつく彼の姿は見ていられない
かと言って話すことも思いつかない僕は、とりあえず隣に座って、背中をさするのだった
彼はありがとうと言うと、再び涙を流した
気が済むまで泣くといいよ
私はね、夏の間はできる限り涼しく過ごしたいのだよ
私の外見を見てくれ
グレーの整った髪に、ダンディな髭
いかにもきっちりした紳士的な服装で街を歩いていそうだろう?
だがね、私は暑さに弱い
この酷暑の中、そんな服装で歩いたら死んでしまう
にもかかわらず
にもかかわらず、だ
周囲は私の半袖のアロハシャツに半ズボンスタイルを似合わないだの、イメージと違うだの、好き放題言ってくる
びしっと決めてほしいなどと、よくこの暑さの中で言えたものだ
そもそも、私はラフな格好が大好きなのだ
髭を生やしたのも、愉快なおじさんを演出したかっただけだというのに
下手に髪や髭の形が整ってしまうから、紳士風になってしまった
私は冬でも本当は半袖で過ごしたい、半袖愛好家なんだぞ
冬でも暑がりの私は、よほど低い気温にならなければ、半袖がいいんだ
まあ変な目で見られるから、冬の間は長袖のちゃんとした服装で過ごしているが
本当に、私の理想とする自分と周りが求める姿が違うのも面倒だな
周囲を気にせず自分の好きなようにすればいい、とは言うが、どうせなら周りにも認められたい
私は半袖アロハシャツが似合い、それに加えて面白い人間だと思われたいのだ
いや、私自身、自分の理想である愉快で面白いおじさんになりきれているかというと、ユーモアの足りなさは感じている
だからといって、落ち着きあるおじさんのつもりもない
なぜ周りは私に落ち着いた紳士のようなイメージを持つのか
私はもっと努力するべきなのかもしれないな
私の理想とする自分に近づくため、もう少し面白さを追求してみよう
私の好きな半袖アロハシャツが似合うと言われる男になるために、私の中の愉快さを磨くしかない