僕たちは目の前の光景に、悲しみを抑えられなかった
目の前には心折れた友人がうなだれている
心の暗さを示すその目には、はっきりと涙の跡がある
赤く充血しているのだ
僕にはかける言葉も見つからない
場を沈黙が支配する
他の友人たちも、彼になんと言っていいかわからないのだ
友人は同じクラスの子を好きになり、思い切って告白
しかしフラれてしまった
いや、それで話が終わっていたのなら、よくある失恋だと、彼の心も少し大人になって切り替えられたのかもしれない
しかしそうはならなかった
恋した相手にごめんなさい、と言われたあとのことだ
相手から衝撃発言が飛び出した
実はその子は、一番の大親友だと彼が言っていたクラスメイトと付き合っていたのだ
大親友は、彼を驚かせるために黙っていたという
そして今日、打ち明けるつもりだったとか
フラれたのがショックなのではない
知らずに大親友の恋人に告白した罪悪感と、よりによって大親友が自分が好きになった相手と付き合っていること、その他様々な思いがごちゃまぜになったため、深いショックを受けたのだ
ちなみにこの場に大親友はいない
彼は大親友には自分が恋をしたことを言わなかったらしい
大親友だからこそ話すのが恥ずかしかったのと、うまくいったら驚かせようと思ったからだそうだ
悪い意味で奇跡
奇跡的なすれ違いで起きた悲劇だ
僕たちは彼から、今日告白すると聞いて内緒で見守り、成功したら頃合いを見て駆け寄り、祝福ドッキリをしようと待機していた
無駄になるどころか、非常に気まずい
しかし、悲しみをこらえて笑顔でその場をやりすごし、相手が去るまで決して涙を流さなかった彼に、僕は敬意を表する
ただ、震えの混じる深いため息をつく彼の姿は見ていられない
かと言って話すことも思いつかない僕は、とりあえず隣に座って、背中をさするのだった
彼はありがとうと言うと、再び涙を流した
気が済むまで泣くといいよ
7/26/2025, 10:37:11 AM