True Loveという字に目がいった
日本語にすると真実の愛?
真実の愛か
真実はひとつ!
って言ったりするよね
つまり真実の愛は一途なのかな?
いや待って
真実は人の数だけあるとも言うね
つまり、人によっては一途でない愛が真実の場合もある?
考えれば考えるほどわけがわからなくなってくる
真実の愛ってなんだろう
そもそも誰が言い出したのか
愛の真実性は誰がジャッジするんだろう?
他人に対してそれは真実の愛じゃない、なんてとてもじゃないけど私は言えない
判定できる人なんてこの世にいるのかな
心の底から相手のために行動するのが愛?
でも世の中にはよかれと思って相手に害を与える愛もあるけど、それは真実の愛に含まれる?
相手を幸せにできるけど、私欲がたくさん混じった愛は、真実の愛じゃない?
相手のことを心の底から考えて、一切の害を与えず、かつ幸せにできる行動を取れる人
そんな人はどれくらいいるのだろう
それが真実の愛なら、そんなもの、存在しないのかもしれない
なにが真実かは結局、愛を持つ人の気分しだいってことになるのかな?
でも事実として、誰かのために愛をもって行動できる人は、この世界にたくさんいるんじゃないかな
それが真実の愛かどうかは、幸せの前にはどうでもいいのかもしれないね
まさか、勇者とその仲間たちがここまで強かったとは
よかろう
今回は負けを認めよう
だがこれで終わりではない
またいつか、私は復活し、その時こそ魔族による人間の支配を達成してくれよう
フハハハハ!
あれからどれほどの時間が経ったのだろう
いや、今がいつだろうと関係はない
魔王として、私は再び同胞とともに人間に対し侵攻を開始する
目覚めたのは広場だった
ここは私の城ではないのか?
長い年月によって無くなってしまったか
周囲を探っていると、変わった黒い服を着た魔族たちが現れた
迎えが来たようだな
「魔王様ですね
お目覚めになるのを待っていました」
「うむ、ご苦労」
「この時代についてお話しますので、こちらへ」
私はその後、自動車とかいう馬のいない馬車に案内され、そこで大まかな状況を聞いた
正直に言うと、その話で頭が真っ白になりかけた
封印のあと、何十年かかけて人間と魔族は和解したらしい
魔王である私がいなくなったことで、魔族は人間に対し、友好関係を築く道を模索
説明する魔族たちは言いづらそうにしていたが、私が強硬的な態度を取らなければ、とっくに魔族は戦いをやめていたことだろう、とのことだ
そして和解から数百年が経ち、今に至るらしい
私は魔族のため、人間を支配せよと先代魔王から教育されてきた
それが魔族を救うと
だが、私のしてきたことは、同胞を救うどころか逆効果だったのだ
多くの魔族は対立を望んでいなかった
自動車の外の景色を見る
魔族と人間が、仲が良さそうに談笑しているのが見えた
「魔王様、あなたは数百年間封印されていました
これからあなたがこの時代で生活できるよう、私たちでサポートいたします
それと、この時代で生きていく以上、あなたは魔王という立場を捨てる必要があります
もう、そのような時代ではないので
それと、人間も、もはや敵ではありません
そのことを肝に銘じてくださいね」
「ああ、そうだな
この時代のこと、生きる術
色々と教えてくれ」
それから私は、様々なことを彼らから教わった
短期間に詰め込まれたが、魔王としての能力で、この時代の常識、知識はすぐに覚えることができたため、問題はない
時には人間とも交流をする
さすがに、敵対していた種族と友好的に接するのは、緊張したが
そんな日々の中で私は、あるものに惹かれた
私は幼い頃から、次期魔王として育てられ、周りからは常に敬われ、友人などというものはできなかった
そのため、そういった関係に憧れを持っている
この時代には学校という、同年代が集まり、勉学などに励みながら友人とともに過ごす施設があるようだ
私は13歳のときに魔王になり、封印されたのが15歳
ちょうど、この時代ではそろそろ高校生になろうかという年齢
私の世話をしてくれる魔族たちによると、あと数ヶ月で入学試験が始まるという
そして、高校へ通うことを望むのなら、入学試験に参加できるよう手を回す、と言ってくれた
試験も、私の学力なら十分受かるだろうとのこと
私は彼らに頼み、試験を受けることにした
結果は合格
晴れて私は高校へ通うことになった
魔族と人間がともに歩む時代で、私の高校生としての日々が始まる
その日々を、皆は青春、と呼ぶそうだ
人々は星を追いかけて、ひとときの夢を見る
それが星の仕事であり、夢を見せたいから星は星として輝くのだ
その姿は人々を魅了する
が、しかし
ごくまれに、星を追いかけるのに夢中になるあまり、周りの迷惑も考えないような輩が現れる
みんながいい夢を見ようと、協力してくれているのにもかかわらず、無自覚に悪夢を作り出すのだ
俺はそういった連中に警告をし、場合によってはつまみ出す仕事をしている
普段は星に夢を見に来た人々の誘導や、その人たちが安全に夢を見られるよう、様々なサポートをしているのだが、それで済む日ばかりではない
この仕事をしていれば、ふざけた奴にはいつか必ず出くわす
はじめのうちは手こずりながら、先輩に助けられつつ、対処していた俺だった
しかし、今では仲間からかなり高く評価される立場となった
ありがたいことではある一方、俺の仕事への意識に変わりはない
さて、長く続けていると、ヤバそうなやつというのはだいたいわかる
もちろん、実際は別にヤバくなかったり、ノーマークだったやつがやらかすこともあるから、一筋縄では行かない
百発百中なんて不可能だ
それでも、経験を重ねていけば自ずと人を見る目は鍛えられる
俺の的中率も、段々と高まっていった
だが当然、すべてを予測することはできないので、常に何事にも対処できるよう、全力の警戒を怠らない
それもこれも、星や他の人々が安心して気持ちよく輝いて、もしくは夢を見てもらうためだ
俺はこの仕事が好きだ
裏方として、夢を支えるこの仕事は性に合っている
星の輝きと、星を追いかける人々の夢を人知れず守るこの仕事は、俺の誇りとしてこの胸に刻まれているのだ
過去はすでに終わった
今からどう頑張っても変えようがない
タイムマシンでもあれば話は別だが、そんな便利なものはないので、過去を変えるなんて考えるだけ無駄だ
過去の後悔を次に繋げるのならいいが、過去に今を縛られすぎれば、未来を見失う
ならば、未来を切り開くために今を生きる方がいい
悩みも苦しみも、未来のための糧にしてやろう
過去の出来事も、未来のために利用するのだ
なんて、前向きに捉えられれば楽なのだが、人間は、どう抗っても過去に縛られてしまう、ということも多い
未来を見据え、今を生きるためには、やはり自分だけではダメだ
誰かの助けがいる
それは家族かもしれないし、友人かもしれない
あるいは仕事仲間、先生、それらに限らない様々な誰か
そんな助けてくれる相手を見つけられれば、感じられれば、だいぶ心は楽になるのではないか
そして、その誰かが今を生きられなくなっていたら、その時に力になれれば、相手のためだけではない
自分自身を救うことにもなるかもしれない
未来はひとりで切り開くものではないのだろう
きっと、誰かの助けを借り、誰かに力を貸しながら、今を生きた先に切り開けるのだと、そう思う
美味しい食べ物を食べると、脳で快楽物質が生成され、快感を覚える
この快感が強いことを、我々は「飛ぶ」と呼んでいる
どこかで聞いたことがある表現かもしれないが、我々は独自にこの言葉を考えたので、断じてそれとは関係ない
ないと言ったらない
それはともかく、美食家という言葉がある
美味しいものを求め、味の良し悪しがわかる人たちのことだ
彼らの舌は肥えており、ちょっとやそっとでは飛ばないだろう
そんな手強い舌を満足させる料理人が、高く評価されるのだ
だが、残念ながら我々は美味しいものを食べても飛ぶことはない
いや、飛ぶことができないのだ
舌が肥えているのではない
美味しさは充分感じている
普通の人は飛ぶであろうことはよくわかる
しかし、快楽物質はあまり出ない
我々は美食家ではない
言うなれば醜食家
不味いものを食べて初めて快感を得て飛ぶことができる、周りから見ればなんとも不幸な存在が我々だ
間違えてほしくないのは、不味いものを美味しく感じているわけではない
不味いものは不味い
吐きそうになったこともある
だが、その不味さが快感なのだ
不味い料理が一番快楽物質が出る
不味い料理が一番飛べる
こんな感覚、信じられないだろう
だが、例えとしてわかりやすいだろうものがある
辛味だ
苦手な人にとっては地獄だが、好きな人はとことん好きなはず
あんな舌に辛味という名の痛みが走っているのに、快楽物質が出ているために快感を感じて、好んで痛みに溺れるのだ
これがアリなら我々もアリだ
快楽のためなら、サルミアッキだって食す
ショートケーキに豚骨スープだってかける
不味いものを食べる時はいつも、飛べ飛べ飛べ!と念じながら食べ、そして飛ぶと天にも昇る気分になる
醜食家は滅多にいないため、理解が進んでおらず、公言すれば変な目で見られるだろう
だが私は声を大にして言いたい
我々は珍しいだけで、異常者ではない
好んで辛いものによる痛みを感じに行く辛党と、やっていることは基本的に何も違わないのだ
全ての醜食家たちよ
我々のこの快楽は、恥ずべきことではない
周りに流されず、これからも不味い食べ物を食べ、その不味さの中の快楽によって飛べ