ストック1

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美味しい食べ物を食べると、脳で快楽物質が生成され、快感を覚える
この快感が強いことを、我々は「飛ぶ」と呼んでいる
どこかで聞いたことがある表現かもしれないが、我々は独自にこの言葉を考えたので、断じてそれとは関係ない
ないと言ったらない
それはともかく、美食家という言葉がある
美味しいものを求め、味の良し悪しがわかる人たちのことだ
彼らの舌は肥えており、ちょっとやそっとでは飛ばないだろう
そんな手強い舌を満足させる料理人が、高く評価されるのだ
だが、残念ながら我々は美味しいものを食べても飛ぶことはない
いや、飛ぶことができないのだ
舌が肥えているのではない
美味しさは充分感じている
普通の人は飛ぶであろうことはよくわかる
しかし、快楽物質はあまり出ない
我々は美食家ではない
言うなれば醜食家
不味いものを食べて初めて快感を得て飛ぶことができる、周りから見ればなんとも不幸な存在が我々だ
間違えてほしくないのは、不味いものを美味しく感じているわけではない
不味いものは不味い
吐きそうになったこともある
だが、その不味さが快感なのだ
不味い料理が一番快楽物質が出る
不味い料理が一番飛べる
こんな感覚、信じられないだろう
だが、例えとしてわかりやすいだろうものがある
辛味だ
苦手な人にとっては地獄だが、好きな人はとことん好きなはず
あんな舌に辛味という名の痛みが走っているのに、快楽物質が出ているために快感を感じて、好んで痛みに溺れるのだ
これがアリなら我々もアリだ
快楽のためなら、サルミアッキだって食す
ショートケーキに豚骨スープだってかける
不味いものを食べる時はいつも、飛べ飛べ飛べ!と念じながら食べ、そして飛ぶと天にも昇る気分になる
醜食家は滅多にいないため、理解が進んでおらず、公言すれば変な目で見られるだろう
だが私は声を大にして言いたい
我々は珍しいだけで、異常者ではない
好んで辛いものによる痛みを感じに行く辛党と、やっていることは基本的に何も違わないのだ
全ての醜食家たちよ
我々のこの快楽は、恥ずべきことではない
周りに流されず、これからも不味い食べ物を食べ、その不味さの中の快楽によって飛べ

7/19/2025, 10:52:19 AM