ストック1

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まさか、勇者とその仲間たちがここまで強かったとは
よかろう
今回は負けを認めよう
だがこれで終わりではない
またいつか、私は復活し、その時こそ魔族による人間の支配を達成してくれよう
フハハハハ!


あれからどれほどの時間が経ったのだろう
いや、今がいつだろうと関係はない
魔王として、私は再び同胞とともに人間に対し侵攻を開始する

目覚めたのは広場だった
ここは私の城ではないのか?
長い年月によって無くなってしまったか
周囲を探っていると、変わった黒い服を着た魔族たちが現れた
迎えが来たようだな

「魔王様ですね
お目覚めになるのを待っていました」

「うむ、ご苦労」

「この時代についてお話しますので、こちらへ」

私はその後、自動車とかいう馬のいない馬車に案内され、そこで大まかな状況を聞いた
正直に言うと、その話で頭が真っ白になりかけた
封印のあと、何十年かかけて人間と魔族は和解したらしい
魔王である私がいなくなったことで、魔族は人間に対し、友好関係を築く道を模索
説明する魔族たちは言いづらそうにしていたが、私が強硬的な態度を取らなければ、とっくに魔族は戦いをやめていたことだろう、とのことだ
そして和解から数百年が経ち、今に至るらしい
私は魔族のため、人間を支配せよと先代魔王から教育されてきた
それが魔族を救うと
だが、私のしてきたことは、同胞を救うどころか逆効果だったのだ
多くの魔族は対立を望んでいなかった
自動車の外の景色を見る
魔族と人間が、仲が良さそうに談笑しているのが見えた

「魔王様、あなたは数百年間封印されていました
これからあなたがこの時代で生活できるよう、私たちでサポートいたします
それと、この時代で生きていく以上、あなたは魔王という立場を捨てる必要があります
もう、そのような時代ではないので
それと、人間も、もはや敵ではありません
そのことを肝に銘じてくださいね」

「ああ、そうだな
この時代のこと、生きる術
色々と教えてくれ」

それから私は、様々なことを彼らから教わった
短期間に詰め込まれたが、魔王としての能力で、この時代の常識、知識はすぐに覚えることができたため、問題はない
時には人間とも交流をする
さすがに、敵対していた種族と友好的に接するのは、緊張したが
そんな日々の中で私は、あるものに惹かれた
私は幼い頃から、次期魔王として育てられ、周りからは常に敬われ、友人などというものはできなかった
そのため、そういった関係に憧れを持っている
この時代には学校という、同年代が集まり、勉学などに励みながら友人とともに過ごす施設があるようだ
私は13歳のときに魔王になり、封印されたのが15歳
ちょうど、この時代ではそろそろ高校生になろうかという年齢
私の世話をしてくれる魔族たちによると、あと数ヶ月で入学試験が始まるという
そして、高校へ通うことを望むのなら、入学試験に参加できるよう手を回す、と言ってくれた
試験も、私の学力なら十分受かるだろうとのこと
私は彼らに頼み、試験を受けることにした


結果は合格
晴れて私は高校へ通うことになった
魔族と人間がともに歩む時代で、私の高校生としての日々が始まる
その日々を、皆は青春、と呼ぶそうだ

7/22/2025, 11:23:41 AM