ストック1

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4/16/2025, 11:15:11 AM

遠くの声が聞こえる
遠く、というのは物理的な距離ではない
時間だ
未来からの声が聞こえるのだ
どうやら、もうすぐ眠っていた太古の魔物が現れ、大災害を起こすらしい
しかし、魔物のみに効く毒薬があるらしく、それを開発してギリギリ世界滅亡は免れたそうだ
俺は未来からの声を聞き、こうした、世界にとって致命的な運命を変えることを趣味としている
仕事でも使命でもなく、趣味だ
好きで運命を変えている
まず、実はかなり強力な自分の権力を使って、魔物が目覚めるまでの間に毒薬開発のための環境を整える
それに関しては楽勝だ
あとは様々な補助をしつつ、開発自体は専門家や研究者の皆様に頑張ってもらう
時間との勝負だが、未来の情報から察するに、目覚めの時よりも早く作れるだろう
世界は救われるはずだ

以前、時間監視員とかいう、どの時代の人間かはわからないが、怪しいことこの上ない連中に、歴史改変は重罪だとか警告されたことがあったが……
そいつらに俺は言ってやった
俺は現在を生きている
たまたま未来を知る術があるだけだ
今を生きる俺たちが未来をよりよくする努力をして何が悪い
別に過去を変えているわけじゃないだろう
お前たちがいつの時代の人間かは知らないが、この時代を生きているのは俺たちだ
ってな
なので、俺は魔物を葬るきっかけを作り、研究への助力も惜しまず、新たに聞こえる遠くの声に導かれ、今日も趣味で運命を変えるのだ

4/15/2025, 11:14:32 AM

「始まりの春だから、今から恋を始めるぜ」

恋は、始めるぜって言って始まるものじゃないだろう
いや、恋人探しとかはあるかもしれないけど
それにしても、好きな人がいないと成り立たないのに、今から、はないんじゃないか?

「なんか、ひと目見た瞬間ビビッと来る子がもうすぐ現れる気がするんだよなぁ」

そんな都合よく現れるか?
それに君、たしか今まで恋したことないだろ

「経験や前例なんて関係ない
運命の人に出逢えば心に電気が走る
それが恋の始まりだ
今までの俺はただ、運命の人に出逢わなかっただけなんだ
きっと間もなく俺は恋に落ちる」

それっぽいことを言ってるけど、恋に落ちた経験無いんだよね?
それに、そうそう運命を感じる相手なんて、見つからないって
そういうのはさ、全然そんなこと考えていない時にこそ発生するイベントだよ

「そんなことはない
ほら、そこの角を曲がった先でとかさ」

食パンくわえた子とぶつかるって?
そんな馬鹿な
……ん?
あれ、君、今電気走った?
マジで?

「……まさに今、俺は恋に落ちたぜ」

誰に?
……あっ
子猫が捨てられてる
ひどいことするな
……え?
まさか子猫?

「どちたんでちゅかぁ
捨てられちゃったんでちゅかぁ
家来るぅ?」

すんごい赤ちゃん言葉
あんな姿見たこと無いよ
これが恋に落ちる瞬間ってやつかぁ
恋のパワー恐るべし
なにはともあれ、君と子猫に幸あれ
お迎えするならちゃんと責任持ってね

4/14/2025, 11:09:34 AM

死ぬまでにやりたい5000のこと、はちょっと多すぎたな
まだ2325個しか達成できてないぞ
半分もいってない
未来図を広げすぎた
僕はいったい何歳まで生きられるのか
18歳から始めて、今は52歳だから、長生きできたとしても、肉体の衰えなどを考慮に入れたら、達成不可能じゃないか
そもそも、仮に今のペースを継続できたとして、僕は達成できるまで長生きしないだろうな
90歳を越えることになる
別に毎日5000のやりたいことだけ考えていたわけではない
リスト外のことだってたくさんやってきた
だから、この歳でここまで達成できたのは、よくやったほうではないかな?
しかし、展開した未来図の収拾をつけたい、というのも本音だ
どうにかいい方法はないものか
2325個達成したわけだけれども、この先、それが4000個になったところで、大して気分は変わらないだろう
最初に決めた5000個だからこそ意味がある
どうせ達成できないなら、僕は大きな賭けに出よう
今のままだと長生きも達成も絶望的なら、可能な状態に変えればいいのだ
一旦、死ぬまでにやりたいこと、は停止する
僕は5000個を達成するためだけに、ある研究を、共感する仲間を集めて極秘裏に開始した
いや、実は昔から暇つぶしに研究はひとりで行っていたのだ
しかし、ひとりではできることは限られる
なので、事実上、研究は頓挫していた
だが今、温めていた研究を一気に押し進める時が来た

10年後
ようやく僕たちは研究を完成させた
資金繰りと露見しないようにするのは苦労したが、報われた
さっそく、研究によって完成した薬を1錠飲む
体が熱を帯び、苦しくなってきた
息がしづらい
安全性は確認されているとはいえ、恐怖感はある
どのくらいのたうち回っていただろう?
苦しさが収まり、立ち上がって姿見を見ると、僕の体は10代後半ほどに若返っていた
さらに、実感はないが、僕は不老不死になっているはずだ
研究は成功だ
仲間たちも続けて不老不死になっていった
僕達は、公にはできない方法で新たな戸籍やその他諸々を得て、第二の人生を開始した
もはや5000という数字にこだわる必要もない
不老不死なのだから未来図は広げ放題
際限なく、やりたいことをたくさん楽しもうと、僕は心を踊らせるのだった

4/13/2025, 10:40:38 AM

さて、今回諸君に集まってもらったのはほかでもない
「ひとひら」という言葉についてだ
私はこの言葉に対して、花びらと雪ぐらいにしか、使い道を見い出せない
そこで、諸君にはそれ以外の使い道を私に提案してほしい
なにかあるか?
すぐに出なくても、しばらく考えてくれて構わない
最近はひとひらが気になって、毎日夜三時くらいまで、全く眠れないのだ
いい案を期待している

「雪から思いついたんですけど、紙吹雪とかどうですか?」

ひとひらの紙吹雪か
大量に降ったり、目まぐるしく飛んだりする紙吹雪の中の一枚に注目するというのも、なかなか面白いな
他にあるか?

「ひとひらの刻み海苔なんていうのは、ダメですかね?」

いいじゃないか!
情景はさっぱり浮かばないが、それが逆に想像力を試されているようでわくわくする!
変わり種というのも、ひとつくらいは欲しいしな
まだまだ募集するぞ

「火山灰なんて、エモくないです?」

おお、活火山という恐ろしいものから出る灰を、ひとひら、という柔らかな言葉で表現するとは、ストーリー性や神秘性を感じる素晴らしい案だ

「ひとひらの花びらときたら、ひとひらの葉っぱも外せないと思います!」

ここに来て王道だな!
確かに、花びらにばかり気を取られて、葉っぱの方に意識が向いていなかった
これは私の反省点だな
ありがとう
なにか大切なものに気づけた気がするよ

……うむ
四つの案が出たわけだが、どれも心に響くとてもいい提案だった
諸君のおかげで、新たな発見や、それによる自分の成長を感じられた
今日からは安眠できそうだ
考えれば他にも案が出るかもしれない
だが、今日はここまでにしよう
改めて、ありがとう!

「「「「お疲れ様でした!」」」」

4/12/2025, 10:43:09 AM

懐かしき日々
君と私の、故郷で過ごしたあの日々
あの頃、私の目に映る君はいつも、見慣れた風景の中で笑っていた
幸せそうに、楽しそうに
なんの不安も不満も無い、きれいな瞳で
だが、私たちは故郷を離れた
追い求めるもの、夢があったからだ
そして、見知らぬ風景の中へ飛び込んでいった
そのことに後悔はない
目まぐるしく変わっていく環境
日々起こる様々な出来事
苦労することも多かったが、得るものも多く、とても楽しかった
そんな中で、君とともに歩めることに幸せを感じていた
だから、それらは無駄ではない
意味のあることだったのだろう
けれど長い時が流れ、私も君も、この日々に疲れてしまったようだ
名残惜しさは感じるが、この風景に別れを告げ、再び静かな故郷の風景の中に身を置くことにした
帰ってきた私たちを、故郷がまた受け入れてくれるかどうか、不安はあるが、きっと大丈夫
君となら、どこだろうと幸せになれる
それに、私は君を幸せにするためなら、どんなことでもできるから
だから、帰ろう
私たちの故郷へ
あの頃の、見慣れた風景の中へ

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