ー新年ー
『新年、明けましておめでとう。』
この言葉の温かさを、今、改めて感じている。
大切な家族を失うことなく、新たな一年を迎えられたからこそ、伝えられる言葉だということ。
こんなに素晴らしいことはない。
歳を重ねるほど失うことも増えてくる。
その実感があるからこそ、この言葉の重みを感じる。
私は、このありふれた日常が、涙が出るほどに幸せだ。
どうかこの有り難みを忘れずに、今年も生きていきたい。
ーイブの夜ー
わたしは白い息を纏いながら、冷たい空気を縫って歩いた。
空を見上げると、星々が輝き、なぜか彼の存在をふと思い出し、涙が滲みだす。
それはなぜかというと、先日、彼には大切な人がいることを知らされたから。
私の愛は行き場がなく、持て余してしまった。
一度は彼を嫌おうとして、この恋心をなかった感情として消し去ろうとした。
それでも、私の心が収まることがなかった。
だからどうせなら、この想いはそのままで、ありのままでいさせてあげようと思うんだ。
意中の相手に伝わらない愛ですら、愛に間違いはない。
愛を温められる器量が私にはある印じゃないか。
伝わらない愛すら、それでいいんだと、自分の中の愛を赦そうと思った。
そんな愛を大切にするのは、自分を愛することであり、誰かと愛しあうための第一歩だと自分の胸に言い聞かせる。
そして私は、今日も冷たいコンクリートを踏み締めて、足早に帰路に向かった。
大空
晴れた日の朝、木々が眩しく揺れた。
雲ひとつない空を見るとあの冬を思い出す。
熱を失してゆく躰。
この世界を離れて飛び立つ姿。
今も忘れずにいる。
私の奥深くに、ずっといる。
晴れ渡る空は美しいのに、悲しい。
この手放せない思いが、今も心を震わす。
ずっと、ずっと。
今も私はあなたに夢中だ。
とりとめもない話
私はなぜ生きてるんだろう。
なぜ、こんなにも生にしがみついて生きているんだろう。
物心ついた時からそう思っていた。
何かを守ったりすることが生きる意味だと思った時期もあるけど、物質的なものは全て壊れて、新しいものが生まれていく様を見つめていた。
悦びに満ち溢れたり、絶望をしたり、それを繰り返し生きている。
今日も生きる意味を探してるけれど、それを探すことが生きる意味なんだろうか。
泣きながら、笑いながら、何かを感じることそのものこそが、生きる意味なんだろうか。
そんなとりとめもない話を誰かにすることはきっと無い。
けれど、せめてここに書き記すくらいは許されてもいいだろう。
雪を待つ
降り積もる雪と一緒に舞う君。
君の髪とまつ毛に雪が積もって、いつもより眩しく見えた。
互いにふっと笑いながら、手を取った。
降り積もる雪は、この大切な愛すらそっと匿ってくれているようだ。
雪を溶かすほどの熱を胸に秘めたまま、二人は雪に包まれながら遊んでいた。
私たちは、溶け合い交わっては、春にそっと流されてゆく。
そしてまた冬を待つ。
いつまで繰り返せるだろうか。
降り積もる雪のように、心に募ってゆく。