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ーイブの夜ー

わたしは白い息を纏いながら、冷たい空気を縫って歩いた。
空を見上げると、星々が輝き、なぜか彼の存在をふと思い出し、涙が滲みだす。
それはなぜかというと、先日、彼には大切な人がいることを知らされたから。
私の愛は行き場がなく、持て余してしまった。
一度は彼を嫌おうとして、この恋心をなかった感情として消し去ろうとした。
それでも、私の心が収まることがなかった。
だからどうせなら、この想いはそのままで、ありのままでいさせてあげようと思うんだ。

意中の相手に伝わらない愛ですら、愛に間違いはない。
愛を温められる器量が私にはある印じゃないか。
伝わらない愛すら、それでいいんだと、自分の中の愛を赦そうと思った。
そんな愛を大切にするのは、自分を愛することであり、誰かと愛しあうための第一歩だと自分の胸に言い聞かせる。

そして私は、今日も冷たいコンクリートを踏み締めて、足早に帰路に向かった。

12/24/2024, 3:04:20 PM